シネマ大全 さ行・ス

 砂と霧の家 2003年 アメリカ

夫と離婚して、父親の残してくれた家で荒れた生活をしているキャシー(ジェニファー・コネリー)。彼女の家は税務署の手違いによって押収対象になり、強制的に立ち退きをさせられる。弁護士によると、単純な行政のミスだからすぐに家は取り戻せるという話だったが、既に家は競売にかけられ、イランの元大佐で、妻と子供と共にアメリカへ亡命してきたベラーニ(ベン・キングズリー)の手に渡っていた。家を取り戻そうとするキャシーと、すべての財産をその家につぎ込んだベラーニ、互いのちょっとした行き違いや思い込みで、事態は意外な方向へ進んでいく…。


これが監督デビューとなるバディム・パールマンは、1961年、旧ソ連(現ウクライナ)のキエフ生まれ。9歳で父を亡くし、母と共に難民としてヨーロッパへ渡り、ローマではカナダ行きの渡航ビザを待ちながら、屑拾いなどをして収入を得る生活を体験したという苦労人。
このパールマン監督へのインタビューが、私のHPに掲載されています。

暗くて、救いのない映画だ。“せっかくお金を払うんだから、後味の悪い映画は、どうもね”という向きもあるだろう。しかし、我らは例えば「ライファーズ」や「ミスティック・リバー」「デッドマン・ウォーキング」の様な作品にも、何かの光を見出すべきなのだ。

暗くても“心にズシン!”と来る気持ち良さ、人間の根源的な何かに触れる快感があるだろう。問題は、ごく普通の観客に、どういう風にこういう作品の良さを伝えるかだ。
映画というものは、楽しい楽しいディズニー・ランドではないのだ。
じゃあ、何なのか?

というと“もう、何でもアリのワンダー・ランド”というのが正解。
宇宙であり、太古の昔であり、子宮の中であり、蚊のまつ毛の先っぽ、なのである。

2004.10.14)