シネマ大全 さ行・ソ

 ゾディアック 

2007年 アメリカ


サンフランシスコ一帯に“ゾディアック”と名乗る連続殺人鬼が現れた。管轄区内の4人の捜査官たちが殺人犯の捜査に奔走する一方で、まるで警察をあざ笑うかのように、不可解な暗号と手紙を残していくゾディアック。やがて4人の男たちは、謎めいた手がかりばかりが残されるゾディアック事件に取り憑かれて行く…。


アメリカ史上最も謎に包まれた未解決事件に、「セブン」「ファイト・クラブ」のデビッド・フィンチャー監督が挑む衝撃作だ。実話なので書くが、この事件は未解決のままで、“ゾディアック”は、まだ逮捕されていない。この犯人“ゾディアック”が、後の架空の人物“ハンニバル・レクター博士”の登場に影響を与えているのは確実だが、面白いのは、マイケル・マン監督の「刑事グラハム/凍りついた欲望」で、初代レクター博士を演じたブライアン・コックスが、“筆跡鑑定の権威”役で出演している事。

他に、人気テレビドラマ「ER」シリーズで長らく“グリーン先生”を演じていたアンソニー・エドワーズが、カツラをつけて刑事役で出ているが、これといった見せ場がないのが残念だ。
1969年から、DNA鑑定が発達した2002年まで、犯人探しの努力は淡々と続くが、恐ろしいのは、“あれから、もう200人以上が殺人事件で死んでいる。事件はもう過去になりつつある”という台詞。


犯人は、もう死んでいるかもしれない。しかし、“オレを映画化して欲しい”と言っていた“ゾディアック”が、もし生きていたら、この映画を観るかもしれない。
おお、コワ…。                                                      
デビッド・フィンチャー監督が、やはり未解決の連続殺人事件を扱った韓国映画「殺人の追憶」を観ている可能性は、非常に高い。


地味だが誠実な人柄の主人公と同じく、この映画自体も誠実にストーリーを展開させ、ラスト近くで思わぬ進展があり、かなりドキドキさせてくれる。
しかし、2時間37分は、チト長い気がする。もっとストーリーを刈り込んで、映画版「24」的スピードを手に入れるべきだった。

監督もきっと、犯人“ゾディアック”や、異常なまでの執念で事件を追及する主人公のイラストレーターと同じく、ちょっと“取り憑かれて”しまったに違いない。

(2007.5.23)