シネマ大全 さ行・セ

 蝉しぐれ 2005年 日本

舞台は、東北の小藩・海坂藩。下級武士である養父の元で成長する牧文四郎。
父は藩の派閥抗争に巻き込まれ、冤罪によって切腹を命じられる。その後、謀反を起こした父の子として数々の試練が待ち受けるが、幼なじみ達の助けと、剣の鍛錬によって日々を質素に、そして懸命に母と共に生きる。
ある日、筆頭家老から牧家の名誉回復を言い渡される。
しかし、これには深い陰謀が隠されていた。文四郎は、藩主側室となり派閥抗争に巻き込まれた初恋の人・ふくを命懸けで助け出す事になるのだが…。


藤沢周平の原作というと、山田洋次監督の「たそがれ清兵衛」と「隠し剣・鬼の爪」を思い出すが、その2本と同じ流れにある作品。“清貧”や“愚直”が“矜持”という言葉と等価だった“遥か昔の日本”で起こった物語。

山田作品と違うのは、台詞が“山形弁”でない事でがんす。
淡々と、しかし確実に物語は進む。放っておくと、“組織”や“ズルイ奴ら”は、知らない内に、“下々”のつつましい生活まで、脅かしてしまう。
あな、恐ろしや…。

せめて、心の奥底に“隠し剣”や“鬼の爪”を持っていよう。ラストの切なく静かな終わり方。
人生、なかなか思い通りには行かないね。 私の頬を、静かに涙が流れて来た。

2005.7.29)