私が観た映画 年間ベスト10 1999年〜2001年


1999年

アイズ・ワイド・シャット
セットで作ったニューヨーク。その近郊にあんな城がある訳がない。そう、これは妄想についての映画なのだ。最後まで観客に謎を投げかけた巨匠・キューブリック監督の遺作。

ラン・ローラ・ラン
黒澤明監督「羅生門」の数多いリメイク作品の一つ。恋人の為、ひたすら走るローラは、その髪の色の奇抜さと共に多くの観客の心を掴んだ。次は、もっとマシな男を掴んでネ。

シックス・センス
ホラーとラブ・ストーリーの融合。死んで行く者の、彼岸から此岸への心残り、辛さ。あのラスト、迂闊な私は最後まで気が付かなかった。N・シャラマン監督の力量に脱帽。

ファザーレス〜父なき時代
戦後、父親と言うものがなくなってしまった不思議大国・ニッポンにおける、あまりウェットでない“父親探し”の旅。淡々としたタッチ、かえって主人公の生きる強さを感じる。

恋におちたシェイクスピア
女が、恋するがゆえに男を演じる“お約束”。その“あり得なさ”も、グィネス・パルトロウのキュートさの前には、ひとたまりもない。微笑ましく可愛く、皆が幸せになれる一本。

地雷を踏んだらサヨウナラ
ベトナム戦争の頃、カンボジアに入った若き写真家・一ノ瀬泰造=浅野忠信の人間的魅力。現地の子供たちの美しい笑顔。そして、戦争という名の巨大な暴力の恐ろしさ…。

スターウォーズ〜エピソード1
まさか、あのダース・ベイダーの子供時代を見られるとは…。“新しき神話”としての物語の構成力、映画的興奮&見せ場の作り方。G・ルーカス監督の才能が、光り輝いている。

オープン・ユア・アイズ
現実と夢。あの世とこの世。その境目は、一体何処? 観終わった後、深い眠りからぼんやり目覚めた子供みたいに困った困った。誰も解けない謎を秘めた、色濃きスペイン映画。

ライフ・イズ・ビューティフル
絶望的な状況の中でも常に希望を失わないR・ベニーニ。このイタリア的楽天は、戦争への痛烈な皮肉と見る事も出来る。試写室で隣り合わせた戸田奈津子さんも泣いていた。

10

セントラルステイション
父を捜す子供を連れ行く旅の途中、トラックの運転手に微かな“恋”をして、トイレで久しぶりに借り物の口紅を引く初老の女の悲しさ。現実は厳しい。が、全てをなくしても、まだ未来が残っている。


2000年

アンジェラの灰
このアイルランドの貧しい一家に、北野武著「菊次郎とさき」と同じ、世界共通の切なさを感じる。不遇と淡々と闘う母・アンジェラを演じるエミリー・ワトソンが素晴らしい。

マルコビッチの穴
俳優・ジョン・マルコヴィッチの頭の中に15分間だけ入れる穴を見つけ、それを商売にする人形使い師。この発想が凄い。私はチョコレート工場よりも、こちらに入ってみたい。

あの子を探して
小学校の代用教員になった14歳の女の子が、迷子になった腕白坊主の生徒を都会で必死で探す姿は、多くの日本人が忘れ去ったに違いない“他人への思いやり”を教えてくれた。

アンドリューNDR114
人間になる事を夢見るロボットの姿を描く、この映画全体が手塚治虫へのオマージュの様だった。でもさぁ、アンドリュー君。人間って、君が思っている程、立派じゃあないよ。

エクソシスト ディレクターズ・カット版
だいたい、何十年も経ってから、“完全版”とかが出て来るのは好きじゃないけど、これと「地獄の黙示録」だけは、別格。映画自体が、一級の美術品であり、巨大なショーだった。

独立少年合唱団
先生(香川照之)に“何か喋ってみろ”と言われ、北島三郎の「兄弟仁義」を歌いだす少年(伊藤淳史)。この無口な子供のこれまでが見える、可笑しくも悲しいシーンが最高だ。

オール・アバウト・マイ・マザー
様々な人生を生きる女達を描いているが、ペドロ・アルモドバル監督の語り口は、結構荒い。でも、それが女達のたくましさとミックスされて、最後まで引っ張られてしまった。

ブレアウィッチ・プロジェクト
たった一回しか通用しない禁じ手を使った低予算の異色ホラー。映画館で“画面で酔う事がありますので…”とアナウンスがあったが、こちとらそんなにヤワじゃないって(汗)。

ハリケーン
無実で収監された元ボクサーの痛みがじわじわと伝わって来る佳作。今は懐かしい“民主党的アメリカの良心”を感じる。D・ワシントンはこの映画でオスカーを獲るべきだった。

10

バーティカル・リミット
人生をマラソンに例える事があるが、登山での本当の修羅場は、その人の一生や人間関係が凝縮される瞬間に違いない。全篇、スリルに満ちていながら、奥にあるものはかなり深い娯楽作品。


2001年

千と千尋の神隠し
神々の世界のイメージの豊かさ。宮沢賢治や寺山修司に助けられながらも、「もののけ姫」の様に無理していない所がいい。人は皆、自分でも気付いていない力を持っているんだ。

リトル・ダンサー
バレエ・ダンサー志願の少年と貧しい炭鉱労働者の父。この話は、何処か能天気なアメリカでは成立しない気がする。ユーモアと切なさ。そして、豪華で感動的なラスト。いいネ!

ザ・セル
異常殺人犯の脳内世界に入り込む意欲作。監督はインド人であり、脳内に出て来るイメージの東洋フレイバーが新鮮だ。何より、よくあるキリスト教的な善悪と無縁なのがいい。

ギター弾きの恋
「道」や「カメレオン・マン」を下敷きに、ジャズ全盛期のアメリカを舞台にしたラブ・ストーリー。ウディ・アレン監督は、架空の人物が実在した様に見せるのが本当に上手い。

こころの湯
親子、兄弟、夫婦、失われていく思い出、故郷…。全てのカットが一枚の絵の様だ。「ギルバート・グレイプ」より近くに感じるのは、ここがアジアだから。父親役の朱旭も、名演。

しあわせ
絶望の淵に突き落とされた女性が再生して行く旅の過程で、私もまた癒されていた。クロード・ルルーシュ監督が作る万華鏡の中、不幸が重なって幸せが出来る不思議を味わった。

ブリジット・ジョーンズの日記
30代の全ての独身女性は、この映画を観るべし。ダイエットも結構だが、ヒュー・グラントには、気を付けな。男どもは全て、レニー・ゼルウィガーに恋してしまうに違いない。

J.S.A
南北朝鮮の国境警備隊。冒頭で、“おい、影がはみ出ているぞ。気をつけろ”と言うソン・ガンホ。その不敵な笑顔はしかし、ただの生身の人間だ。いつの時代にも、土地に柵するバカがいる。

ハンニバル
レクター博士の美意識と趣味が伝わるラブ・ストーリー。しかし、私は今後、どの様な人物が圧力をかけ何億円払うと言われても絶対に、アンソニー・ホプキンスと二人きりになる事はないだろう。

10 キス・オブ・ザ・ドラゴン
パリへやって来たジェット・リーを次々と襲う敵。針を使ったアクションが知的で切れ味鋭い。孤立無援の男と女、渇いたタッチ。シンプルだが、映画全体のムードがとても良い。