私が観た映画 年間ベスト10 1993年〜1995年


1993年

レザボア・ドッグス
冒頭、“出勤前”の強盗達がレストランで、マドンナの曲の歌詞をめぐってケンカするシーンが結末を暗示していて、秀逸。肝心の宝石強盗のシーンの省略は制作費の関係だろうが、かえって効果的で上手い。

ジュラシック・パーク
かつて、成人したダミアンを演じたサム・ニールは、映画全体のムードを支配する面構え。初めて恐竜を見た時のローラ・ダーンの表情が良い。恐竜が出て来るシーンが合計7分間だけというのも驚きだ。

僕を愛した二つの祖国
原題は、「ヨーロッパ、ヨーロッパ」。戦争=大人たちの勝手な事情で、翻弄され、楽しいはずのかけがえのない少年時代を一瞬たりとも安心して過ごす事が出来ない子供の不幸。邦題は、強烈な皮肉だ。

ミスター・サタデー・ナイト
ユダヤ人コメディアンの弟とマネージャー兼付き人として裏方に徹する兄の物語。こういう芸人一代記は、落ち目になってからが断然面白い。ビリー・クリスタルが製作・脚本・監督・主演を担当した。

恋はデ・ジャ・ヴ
やり直したい事は多い。が、このビル・マーレイの様に同じ毎日が繰り返されたら、一体どうなるのだろうか?悔いのない人生はない。しかし、慰めのない人生もないのだ。終わり良ければ、全て良し!

ボーイズ・ライフ
1957年のアメリカ。逞しく生き抜く母親=エレン・バーキンと息子=レオナルド・ディカプリオ。暴力的な継父=ロバート・デ・ニーロとのハーモニーが絶妙。「アリスの恋」を思い出させる佳作だ。

秋菊の物語
中国北部の農村に住む妊婦が、夫にケガを負わせた村長を訴えるため、奔走する姿を描く。彼女の望みは、“村長に一言、謝って欲しい”だけなのだ。貧しくとも誇り持って意志を貫く、その姿に打たれる。

デーヴ
大統領とウリ二つの男が、心ならずも、大統領の影武者を演じ続ける羽目になってしまう。夫人が彼が偽者だと見破る理由に思わずニヤリとしてしまった。ケヴィン・クラインの飄々とした存在感にも脱帽。

僕らはみんな生きている
東南アジアのクーデターに巻き込まれた日本人商社マンたち。助かりたい一心で、地元民に“こんにちは〜!”と明るく感じ良く話し掛ける山崎努が最高に可笑しい。滝田洋二郎&一色伸幸コンビの結実。

10

お引越し
離婚を前提に別居に入った両親を持つ少女の心の葛藤と成長。三角形の妙なテーブル、“何で生んだん!”とガラス窓を素手で破る天才子役・田畑智子。ラストの“おめでとうございます!”も色鮮やかだ。


1994年

パルプ・フィクション
殺し屋たちのマヌケさ。3つの物語が交錯する、語り口の見事さ。時間の芸術である映画の特性を自由自在に生かして、更に観客と共に遊んでしまう演出の達者さ。ヴァイオレンス+ホモネタ=コメディ。

シンドラーのリスト
当初、シンドラーがユダヤ人を雇ったのは、安く労働力を得られるからだった。彼はナチスの党員で、金と女が大好きな俗物なのだ。その“普通の男”が段々と目覚めて崇高になって行く過程が心を打つ。

愛が微笑む時
この世に思いを残して死んだ人間は天国へ召されるまで猶予が与えられるが、期限が来た…。4人の幽霊が、生前果たせなかった夢に青年の肉体を借りて再挑戦する。試写室で声をあげて泣いてしまった。

スネーク・アイズ
映画の撮影現場は、鉄火場だ。虚構と現実の間を行き来する俳優たち。夫が妻に無理に関係を迫る場面で、本当に相手を犯してしまうシーンの悲しさ。“迫真の演技”という言葉が吹っ飛ぶ瞬間を目撃した。

カリートの道
冒頭、モノクロ画面のモノローグ。重傷を負ってストレッチャーで運ばれるアル・パチーノ。“どうって事ない。こんな事は前にもあった。今度も必ず助かる”。デ・パルマならではの独特のタッチが光る。

ミナ
二人の少女、画家とジャーナリストという職業と性格を対比させながら、70年代から90年代の時代、世相を描く。ラスト、テレビの画面の中で歌っているダリダ。暗示的で、やり切れなく悲しい結末。

蜘蛛女
目的のためなら手段を選ばぬ残忍な女・モナ。車の後部座席で、両足を使い男を絡め取るその姿は、蜘蛛女そのもの。おお、コワ…。レクター博士の弟子かいな?男は全て大馬鹿者だとはっきり解る一本。

ピアノ・レッスン
ジェーン・カンピオン監督は、まず19世紀半ばのニュージーランドの浜辺に一台のグランド・ピアノが置かれている情景を想像してこの物語を作って行ったという。ピアノは何のメタファであったのか?

青いパパイヤの香り
平和な時代のサイゴンの一家に下働きの使用人として雇われた10歳の少女・ムイ。この子の素朴な魅力を捉えるカメラが果てしなく美しい。全てパリ郊外のセットで撮影したというから、凄い&ずるい。

10

ギルバート・グレイプ
デップとディカプリオの、鯨のように太ってしまった母を演じている女優が本当に異常に太っていて、しかし非常に芝居が上手いのに驚いた。ディカプリオも入魂の演技。またこういう役に挑戦すべきだ。


1995年
ショーシャンクの空に
無実で刑務所に入ったその日から、所内での待遇の改善、裁判で無罪を勝ち取る道、そして最後のオプション=脱獄の準備を始めていた主人公の強かさ、前向きさに感服。ラストの青い海は、生きる希望。
ナチュラル・ボーン・キラーズ
ジュリエット・ルイスの育った異常な家庭を、笑い声を後から被せるコメディ・ドラマ仕立てで描くシーンが凄い。殺人や暴力を娯楽として消費して来た現代アメリカ社会&メディアに対する強烈な批判作。
ラテンアメリカ・光と影の詩
低迷するアルゼンチン。ペルーにいるという父の元へ地図も持たずに自転車のみで1人旅立つ孤独な青年マティゴ。途中、何ヶ国も横断する中、出逢う色々な人、色々な出来事…。夢見るような映像の連続。

ブロードウェイと銃弾
ウディ・アレンが1920年代のブロードウェイ演劇界を描く。芸術肌の劇作家=ジョン・キューザック、プロデューサー=ジャック・ウォーデン、大女優=ダイアン・ウィーストら、俳優陣も輝いている。

黙秘
20年の歳月を経て暴かれる重層的サスペンス。日食の日の古井戸での殺人、船の上で酒飲みの横暴な男が自分の娘に性的いたずらを強要するシーンがエグい。巨匠、テイラー・ハックフォード監督作品。

ザ・ペーパー
NYのタブロイド紙新聞社に勤める記者たちの激しい一日を、ユーモラスなタッチで追いかける群像劇。ビリー・ワイルダーの「フロント・ページ」を思い出させる力作だ。各シーンの“切れ味”も鋭い。

恋する惑星
ウォン・カーウァイ監督の映像マジック・ショー。その独自の語り口と映像感覚は、他の追随を許さない圧倒的なパワーがある。麻薬・拳銃・命のやり取りの世界と純情・金城武のアンバランスが楽しい。

マディソン郡の橋
たった4日間の恋に、永遠を見い出した中年の男と女。“50代と60代で一体どうするんだ?”と思ったけれど、ラストは泣けた。ハリー刑事だったC・イーストウッドは、遂に別のピストルを出した。
フォー・ルームス
大晦日の夜、一軒のホテルを舞台に4つの部屋で繰り広げられる騒動を描いた4話オムニバス。妖艶な女性客=マドンナ、ラテン系のヤクザ=アントニオ・バンデラスらが役を楽しんでいるのが嬉しい。
10

フォレスト・ガンプ
ケネディ大統領とフォレストが、デジタル合成で“夢の共演”を果たす面白さ。ラストは、もっと広がりが欲しかった。「パンチライン」ではカップルだったT・ハンクスとS・フィールドが、母子役とは!