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あらいクリニック糖尿病患者会
“ひまわり”
10月29日(土) 勉強会「食欲と肥満と糖尿病」

ひまわり勉強会
〜食欲と肥満と糖尿病〜

 全国糖尿病週間に先立ち、私たち“ひまわり”では10月29日(土)の昼に勉強会を行いました。秋深まり、食べ物がおいしくなる季節です。日頃の食事療法も季節の味覚と折り合いをつけるのは難しいことです。
そこで、今回は糖尿病療養に役立つ食欲や肥満のメカニズムについて私、院長が講演しました。
 
肥満はエネルギーの摂取=食事とエネルギーの消費=基礎代謝+運動のバランスで決まります。つまりエネルギー摂取が消費を上回れば過剰なエネルギーは中性脂肪として貯えられ、肥満が起こります。肥満を解消するためにはエネルギー消費が摂取を上回る必要があります。
つまり食べる量を減らすか、運動量を増やすことです。
 
では脂肪組織は悪者なのでしょうか?必ずしもそうではありません。男性では体重の15-20%、女性では20-25%が脂肪組織です。脂肪組織はエネルギーを貯えるという役割の他に、非ふるえ性熱産生やホルモン、サイトカインの合成と分泌など、重要な役割があります。さらに脂肪細胞には中性脂肪をためる白い脂肪である白色脂肪細胞と、非ふるえ性熱産生をする茶色の脂肪である褐色脂肪細胞があります。白色脂肪細胞は丸くて中性脂肪を貯えた脂肪細胞で、大きくなるとエネルギーを十分に貯えた信号を脳に伝えるレプチンというホルモンや、インスリンの働きを妨害する腫瘍壊死因子などを産生します。
このため多くなりすぎるとインスリンの働きを妨害してインスリン抵抗性をおこし、糖尿病、高血圧や動脈硬化などの原因となります。褐色脂肪細胞は菱形のような形でおもに熱を産生します。冬眠する動物では冬眠からせめて体温を元に戻す作用があります。ヒトでは新生児期には固まりとして背中や肩、腋にありますが、大人では白色脂肪に混じって存在していると言われています。この褐色脂肪細胞が沢山あれば熱を産生するのでエネルギー消費が増えるわけです。
脂肪組織はけっして悪者ではないのです。多すぎると悪さが出るのです。

 
次に、食欲について考えて見ましょう。食欲はおなかで感じるのでしょうか?それとも脳で感じるものでしょうか? 病気で胃を取ってしまったヒトでも食欲はありますね。
つまり、主には脳で感じるのです。もちろん、食べ物によって胃が伸展されてもその刺激は脳にいきますが、主にはブドウ糖が脳の視床下部にある満腹中枢の神経を活性化させて満腹を感じます。またブドウ糖の濃度が低下すると視床下部の摂食中枢が刺激されて摂食行動が起こるのです。この脳内での満腹中枢や摂食中枢ではブドウ糖の他に様々なホルモンや神経伝達物質という化学物質が神経細胞から分泌され、次々に信号を脳内に伝えていくのです。食物が腸に入って腸が動くと、腸からもホルモンが出され、脳内に満腹を伝えます。満腹の信号は食事毎などの短期的にはブドウ糖やインスリンが、また体重の増加など長期的なエネルギー貯蓄の信号は、白色脂肪細胞から分泌されるレプチンが脳に伝えているのです。インスリンはエネルギーを貯えるホルモンですから、もう、エネルギーはいらないという信号、つまり食欲をとめる作用があります。
よく、インスリン注射をすると食欲が増えるので太る、という方がいますが、それはインスリンの脳への直接の作用ではなく、低血糖を介した作用なのです。つまり、インスリンを打っても、低血糖をおこさない適切な量であれば決して食欲が増えたりする心配はありません。
食欲が必要以上に多すぎるとたくさん食べる、食べ過ぎると余ったエネルギーを脂肪として貯える、脂肪が多すぎるとインスリンの働きを妨害して「インスリン抵抗性」が起こる、そうすると糖尿病や高血圧、動脈硬化が起こり、ひいては脳卒中や心筋梗塞など死に至る状態がおこってしまう、という図式がいけないのです。
そのインスリン抵抗性を改善するには白色脂肪組織を減らす、そのためには運動などでエネルギーの消費を増やすか、食事量を減らしてエネルギーの消費が摂取を上回るようにすることです。
ダイエットに王道はありません!地道に食事療法と運動療法を続けることが全てなのです。
 
参加した皆さんからは多くの質問や自分の体験談が語られました。それほど、食欲や肥満は興味がある話題ですが、実行は難しく、皆さんのご苦労が忍ばれました。難しい話題でしたが、食欲や肥満のメカニズムがおわかりになったでしょうか?
 皆さん、食欲の秋に負けず、頑張りましょう。スポーツの秋でもありますよ。
院長 記

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