羽虫 Date: 04/04/07 (Wed)
空の左右には大きな雲の固まりが架かり、それぞれの輪郭が光っていた。雲間が次第に狭まり変化する様をパイ近郊、滝壷の岩上から半日眺めていた。なんだか眠い。ラフ族の村の小道で(水かけ祭りまでまだ5日ある。気が早い)ガキにバケツの水をかけられた。
村の出口でまたそのガキに再開する。距離20。目が合って微笑む。バイクを旋回する。同時にガキがバケツを手に走り寄って来る。。夜カレー、兎に角ハマる味。頭上の緑の蛍光燈に天文学的数の羽虫が集っている。隣席では白人美人に男が集っている。
メーソーホン Date: 04/04/08
日の出前朝5時半起き。6時、源泉から流れる小川を石で塞き止め湯だまりを作る。源泉に近いほど熱い。以前湯に浸かったのは何時だったか?
先日ネットニュースで知った、亡くなった「チョウさん」を思い、黙祷。13時パイ発、17時過ぎメーホーソン着。山道の為蛇行がキツイ。首にコイルを巻き付けた有名な少数民族。俗称、首長族の村訪問が街の目玉。ビルマ風仏閣あり、湖あり、温泉あり。
首長族 Date: 04/04/09
モーターバイクで1時間、20KM。非舗装を3KMほど。早速、カレン族の1、通称「首長族」の村に向かった。入村料が250B(缶ジュースが13B)。コイルの為か声が低い女性達。美人が多い。商店が並ぶ村内。貴金属と手編みの布、そしてコイル。以前、首の真鍮コイルは特別に選ばれた女性だけが巻くものだったらしいのだが、コイルなし女性の営む商店の売り上げがコイルを巻いた女性の店より愕然と低い事が主な理由で今はほぼ全ての成人女性の首にコイルが巻かれている。首が長く見える理由は、骨が伸びるわけではなくコイルの重さで鎖骨が下がるかららしい。自身の筋力で首を支えない為、コイルなしでは首が垂れ呼吸も出来ないらしい。(推定ばかりで恐縮ですが)コイルはヒザ下にもキツク巻かれ走る事も出来ない。コイルを巻いた子は他の子供達の鬼ごっこの輪に参加せず遠巻きに眺めていた。コイルを巻く理由は1に美意識だろうが、他に男の妻に対する独占欲とも聞いた。コイルを巻くと首を回して横が向けない為、正面の自分ばかりを見る事になり浮気をしないと言うのだけど、、男尊女卑の産物だとすれば尚世知辛い。実際に女性が出来る仕事は限られ、その犠牲は観光客の払う入村料で補う。受け付けの青年がそれでも収入が少ない自身の境遇を嘆いていた。1日300Bが彼の給料で月$230。2万5千円。頼みの入村料もタイ政府に税金としてかなり徴集されるらしく、心身共に拘束される日々。まさに首が回らない人々。帰り焼き畑の為、山1つが燃えていた。









スコールの後 Date: 04/04/10
青い魚の群れ。木漏れ日が当たる水面が鱗で青く光る。連泊で借りているバイクで赤カレン族の村を目指すが見つからずミャンマーとの国境に突き当たる。山道を上り続けると何時の間に肌寒い。手が悴む。そこに昼下がりのスコールが追い討ち。山中の広葉樹の下で雨あがりを待つ不安。途中のモン族の村では小さな老人が米の籾殻を積み上げ中央を窪ませ火を焚いていた。老人の傍らで濡れた服を乾かした。薪の火が消えるとそのまだ赤い炭を殻山の側面に突っ込んだ。すると、火は出ないが籾殻全体に熱をモチ自らの熱で全体が燻られるらしい、生活の知恵。美人の店番。15Bの麺。ココナッツの殻をかじる子供。雨上がりの夕日。厚い雲と南国の太陽が奥行きを創る。灰から青、紫から赤、黄から白。雲の切れ目から幾筋もの光が山肌に落ちて濡れた木々を照らす。羽でも降ってくるように思えた。
チェンマイ Date: 04/04/11 (Sun)
昼過ぎのバスに乗り、蛇行する山道を7時間。チェンマイ着。今日は水かけ祭3日前。走行中のバス内で突然水をかぶり目が覚めた。事態が把握できずに寝起きざま混乱した。その先々でも街道に人々が並びそれぞれがバケツに溜めた水をバスの開いた窓に次々と放り込んでいた。隣の女性は自分のIDや財布をビニール袋に入れてる。着替えを持参していて車内で替える人までいる。なのに、バスのドアが閉まらないようロープで固定してあった。20時着。ターペーゲートに向う。宿を捜す裏道の正面、建物の隙間に花火が上がっていた。探せど部屋がなく仕方なくダブルルームに1人。電気を消すと壁が無数に光っていた。穴が開いていて隣部屋の明かりが漏れてくる。当然、覗くと女のデカいケツがあった。混乱したのは今日2度目。
ソンクラン Date: 04/04/12
借りた自転車で古城の城壁沿いを濡れ進んだ。堀の鮒臭い緑の水を汲みかけ相う1日。見渡す限り全ての人が濡れている。大音量のスピーカー、出店の列、焼けた肉の匂い、安いビール。

喧騒 Date: 04/04/13
ソンクランも飽きてきたが、バックを持っての移動が極端に辛いのでチェンマイに居座る。朝方、穴が理由ではないが宿を変えた。シャーワーとトイレ付きのシングル。東北の城壁角では絶え間なく喧嘩が起きる。欧米人とタイ人、若いタイ人とタイ人、タイ人の3対1。1人が相手に近づくなり肘撃ち。他の2人が脇から肝臓を蹴り上げている。ムエタイ恐るべし。ヤラレ側はただ丸くなり掘りに飛び込んで逃げた。
キルティング Date: 04/04/14 (Wed)
チェンマイからは中国、昆明や景洪までの直行便があるようだ。代理店を回り情報収集。バンコクまでは110 Rapid。2等寝台下段席、491B、14時間半。今朝まで明日はバンコクへ向かうつもりだったが、昼のノリで昆明まで飛ぶ事に決めた。中国の太平洋沿いを北上し台湾を経由して沖縄なんて良い。不要になったフリースとラオスで買った水中ゴーグルを捨てるのも忍びなく、物々交換出来ればと思いナイトマーケットへ向かったが相手にされず、何か恥かしく思いはじめた矢先マーケット最北の角、アカ族の店番女性と目が合った。これ、$20位で買った日本製(ユニクロ)だけどバックが満タンだから何か嵩張らない物と交換出来ない?を酷く分割して何とか伝えた。フリースに興味はないと口では言うがステッチを裏返したり丈を見たりしてよく観察しているその目が真剣。そこに水中ゴーグルを出すと良い反応。やっぱり漁に使うのか?かぶったり友人を呼び集めたりしている。アンティークと言えなくもない薄汚れたキルティングと刺繍の(赤ん坊をおぶる)生地を貰い満足。
終演 Date: 04/04/15
ソンクラン最終日、バケツを買って前線に赴く。昆明行きのフライトは週2回、木、日。チェンマイには日本人経営の食堂が私の知る限り4、5つある。夜、その内1件で漫画を読みながら日本食。はしゃぎ過ぎたか軽い頭痛の為早く寝る。
平日 Date: 04/04/16
朝方5時、喉が渇き目が覚めてコンビニへ。代理店を回り昆明までの航空券を取得。5680B。ソンクランが終わり商店が開き街の様相もだいぶ違っている。夕、人工のロッククライミング場へ行き軽く登頂したが、感動を内にしまうだけ。夜、アカ族を真似た布を編んだ腕輪を自作。
タイスキ Date: 04/04/17
朝、宿の従業員が叫んでいた。彼女がタイ語で喚く度、欧米人の男が「I know.Im sorry」と繰り返す。理由は分らないが彼が何も分かってない事は分かる。6日間、ペダルを逆に回すとチェーンが外れる自転車を借り続けている。下がスエードのアウトドアのバックのフェイクが中華街の市場で300B、オフィシャルが20%OFFで1440B。本物のメイドインUSAを購入。今回最大の買物。デパートの食堂は10中6、7が日本食だった。明らかに流行ってる。最終日、贅沢にタイスキを食べたかったが財布にはなぜかUS$3分のBしかない。23時ターペーゲート周辺には売春婦が並ぶが、見たところ殆ど男。
再、昆明 Date: 04/04/18 (Sun)
再、中国昆明着。昨日買って新しい電池を入れた目覚しが午前4時で止まっている。1週間近く滞在すると宿や道々に馴染みが出来る。人々に馴染むと名残がある。どの国でも最後の車窓は良く記憶に残る。それを好む。機内左隣席のタイ人女性がはしゃぐ間80分で昆明着。今年2度目入境ビザなし。イミグレでも英語が通じない国、中国。面倒だから入れといった対応の窓口。相変わらず昆湖賽館の受付の対応は最悪。しかし広いドミに独りだと気分がいい。テレビや家具の位置を自分の為に変える。テレビは映らなかったが、、新しい高層ビルとゲットーが混在する窓の下、バラックを歩く人々はセーターの上にジャケットを羽織っていた。サンダルとTシャツで歩く久しぶりの中国。強い匂いが在る。なんか懐かしい。

石林 Date: 04/04/19
人の気配がして早く起きた。60代後半の彼は麗江で畑を耕している見事な老後。全5人からなる麗江日本人会の会長らしい。老人らしく中国の治安に嘆き、しきりに注意を勧告してくる老婆心。朝から必要以上によくしゃべる。駅前で人数を募っていたツアーに便乗しライトバンで石林(シーリン)に向かった。道中、運転手は寝る私を何かと揺れ起しアレを見てみろといった顔で外を指差す。有難迷惑。昼飯の為入った食堂ではまたメニューが分からず適当に頼むと大皿に載り砂糖が塗された大量の生トマトと白飯が出た。唸り、写真を撮った後、飯を返し砂糖を削ぎ落とし食す。石林はまさに石の林。晴れた空、良く手入れされた芝生と湖。期待していない分悪くない。広州までのチケットを取得。明日、硬席寝台、下段352元、25時間半の移動、今回最長。







白布 Date: 04/04/20
車内食を買い込み、朝早く駅に向かった。駅前広場に一点、明らかな違和感があった。警察が2、3と白い布で顔を覆われた人の体が横たわっている。脈をとらなくても、一見でその人が既に物になっている事が判る空気。人々は一瞥し無関心に通り過ぎる。その列に流れた。座席対面の少女は溜息を吐き英語の勉強をし、5分すると漫画をそのノートに書き出す始末のくり返し。公安は相変わらず人々のバックをヒックリ返し中身を地面にバラまく。自分の番ではパスポートを見せた。大声で話し掛けてくる公安のおかげで人集りになったがそれすら慣れていて愛想笑いも出ない。退屈な長い一日の陽が暮れてもまだ後15時間の移動。
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