果てなき空の下で
| 「にい、さま…?」 地の海の中に、よく知った顔が在る。 呼んでもゆすっても、返事はない。 まるで人形のように生気を失っている。 「ほら、ガキ。こんな風にゃなりたくねぇだろ?」 視界が涙に濡れて、相手の認識は出来ない。 「…どうした?その腰に下げてるたいそうな剣で、対抗してみたらどうだ…?」 少女の手は、空しく宙を掻くだけ。手を腰の剣に当てるつもりは、ない。 「…ふん。この村に伝説の剣士の末裔が居るって聞いたが…大した事はなかったようだな」 男は、少女の首から手を離した。 「お前一人生かしたところで、怖くなんかねぇからな…。生かしておいてやるぜ。 男はにやりと嫌な笑みを浮かべ、少女に背を向けた。 「に、いさまぁ…」 少女の肩が、がくがくと震える。 ―――次の瞬間、少女は本能のままに、剣を鞘から抜いた―――。 |
◆◇◆ |
「なあ、聞いたか?ガラン。あの村の噂」 「…噂?」 ―――とある町。 「いや、知らないけど…」 少年は朝から町中に流れているという噂について、ゆっくりと話し始めた。 「あの森に、村があるのは知ってるだろ?あそこの村の住人が、皆殺しにされたんだとよ」 …つい最近から、町の周りでは、このような噂が耐えない。 「まあ確かに。でもな、大変なのはここからだぞ。 ガランは、ひっそりと眉をしかめた。 「俺は疑ってないけど…、皆がお前を疑ってる。 少年は、周りの視線を気にして、早々に立ち去った。 …まったく、どこの誰だか知らないけど…いい迷惑…。 ガランは、奥歯をかみ締めて、家路に向かった。 「だれか…いるのっ?」 …まるで、返事をするように草むらががさがさと、立てる音をました。 「わあっ…ヒト、だぁ…」 少女は、やっとの事で草むらから這い出し、ガランの前にちょこんと座り込んだ。 「あ、貴方は…??」 ガランが聞くと、少女は ほえ? といった顔でガランを見上げた。 「あ、…ああ。オイラはクレアっていいますぅ…」 少女はにっこりと笑って頭を下げた。 「じゃあ、クレア…どこから来たの?」 クレアは、足を押えてうめいた。 「ほえ…?」 ガランは、呆然と立ち尽くすクレアを引っ張って、家へ向かった。 |
◆◇◆ |
…町の一角にある小屋。そこがガランの家だった。 ガランは、救急箱から湿布を取り出したり消毒液を取り出したり…。さかさかとクレアを手当てした。 「あのぅ…貴方は?」 クレアは、じっとガランの顔を見つめた。 「…?どうかした??」 クレアは、少し首をかしげた。 「なんかね…ガランさま、オイラのにいさまに似てる…」 クレアは、昔を懐かしむように、目を輝かせて「兄」について語った。 「…お兄さんは、今何を?」 でも、と、クレアは笑顔で顔を上げた。 「ガランさまに会えたから、オイラ…寂しくないよ」 ガランは、何となく嬉しくなった。 「あっ…じゃあ、『がーさま』って呼ばせてもらっても…イイ?」 ガランは、頭の中で何かひらめくものを感じた。 「がーさま…?」 一瞬クレアは驚いたが、すぐに笑顔で頷いた。 「うんっ!がーさまになら、どこへでもついてくよ!!」 二人は、必要最低限のものを、バックに詰め始めた―――。 |