お別れ・・・

 今日は2008年11月22日、パパとママの33回目の結婚記念日です。
僕の名前はビンゴ。 オスのトイ・マンチェスター・テリアです。
血統書にのっているちゃんとした名前は "CHARIOWALD OF SUPER NOVA" なんだけど、何だかぜんぜんピンときません。
僕のお兄ちゃんたちの名前はシーザーだったり、アレキサンダーだったり、二人とも王様の名前がついているのに、僕だけがなぜかビンゴ。
ママの話では、お兄ちゃんたちがとってもいい犬だったので、僕も"当たり!"であるようと、パパがビンゴと名づけたのだそうです。


僕はいま天国の入口にある虹の橋にいます。
最近僕は足腰が弱くなってしまって、歩くことはもちろん、立つことも難しくなってしまっていました。 今夜もいつものようにママのベッドで
寝ていたら、いつの間にかここに来ていました。 さいしょ僕はどこにいるのかわかりませんでした。
不思議な気持ちであたりを見回していると、後ろから「ワッ!」と大きな犬に乗りかかられました。 「誰?」って後ろを振り返ってみると、
なんとそれは僕の大、大、大好きなアーちゃんこと、アレックス兄ちゃんでした。 アーちゃんとはずっと会っていなかったので、「どうしてアー
ちゃんが?」って聞くと、「ビンゴ、お前は死んだんだよ」ってアーちゃんが教えてくれました。
「ほら、下を見てごらん。 ママのベッドで眠っているお前が見えるだろ? そしてママとパパが悲しそうにお前を見ているだろ? あそこが
地上で、今までお前がいたところなんだけど、もうお前はあそこで眠りから覚めることはないんだよ。 それが死んだってことなのさ」
「じゃぁ、もうパパやママには会えないの?」 「うん。 今までと同じようには会えないね。 お前はいつでもパパやママやにぃにやねぇねの
そばに行けるけど、みんなにはお前の姿は見えないんだよ」 「ジュンやプップやパティやトニーとは?」 「あいつらにも見えないけれど、
俺たちがそばに行くと何かを感じるらしい。 きっとジュンなんか、お前がそばに行くとゾクゾクっとして鳥肌が立つと思うよ」 「ふぅ〜ん、
そうなんだ。 でもジュンは噛んだりしない?」 「もうあいつはお前に意地悪することはできないのさ」 「それって最高じゃん! じゃぁ、
これからはときどきゾクゾクさせて脅かしてやろうっと!」
僕は、自分が死んだと聞いて最初は悲しくなりましたが、アーちゃんが、いつでもママたちに会えると教えてくれたので安心してちょっと
嬉しくなりました。


「ビンゴ!」 「あっ、シーちゃんだ!」 いつの間にか、そばにシーザー兄ちゃんが立っていました。 「アレックスが、お前が死んだって教えてくれた
かい?」 「うん。 最初はびっくりしたけど、アーちゃんやシーちゃんと一緒なら平気だよ」 「お前、自分が変ったって気づいたかい? 背中も
ピンと伸びてるし、サッサと歩いてるし、さっきなんか足を高々と上げてションベンしてたろ?」 「あっ、本当だ! どこも痛くも何ともないや!」
「ためしに走ってみてごらん」 僕は思い切って走り出してみました。 そうしたら、昔みたいにビュンビュン風を切って走れるではありませんか!
うしろからはシーちゃんとアーちゃんが追いかけてきますが、僕の方が断然速くてみるみるひき離してしまいました。 Uターンしてシーちゃんや
アーちゃんのところに戻ると、アーちゃんが言いました。 「お前は速いなぁ。 ぜんぜん追いつかないよ。 な、元気になったってわかったろ?」と
シーちゃん。 「こんなに元気に走れるビンゴをパパやママに見せたいね」とアーちゃん。 不思議なことに、シーちゃんもアーちゃんも、僕が
はじめてシーちゃんやアーちゃんに会った頃みたいに、とても若々しくて、元気そうなのです。


「ビンゴ、体が元どおりになってよかったわね」 いつの間にか、アーちゃんの奥さんのラッキーさんがそばに来ていました。 ラッキーさんは足に
腫瘍ができて手術で切った筈なのに、その足も元どおり! 昔みたいに美しい姿にもどっています。
「さ、ビンゴ。 みんなで虹の橋を案内してあげるわね」 モンローウォークのラッキーさんを先頭に、僕たちは虹の橋の散策を始めました。


虹の橋は週末にみんなで遊んだ多摩川の河原よりずぅっと広くて、犬だけじゃなくいろいろな動物たちが楽しそうに遊んでいます。 遥かな
丘につづく緑の草原やきれいな渓流、ポカポカと心地よい日ざし。 シーちゃんたちが川に入って泳ぎ出しました。 僕は泳ぎが苦手なので
岸辺でみていると、「さぁビンゴ、お前も泳いでごらんよ」とシーちゃんに呼ばれました。 僕はおそるおそる水に入ってみました。
足首、膝、もも、おなか…、やがて僕は水に浮いていました。 手足を動かすとすいすい泳げます。 すぐにシーちゃんたちが泳いでいる
ところに泳ぎつきました。 「ビンゴ、水って気持ちいいでしょ?」とラッキーさんが話しかけてくれました。「うん、とても気持ちいいし、ぜんぜん
怖くないよ」 川上に向かって立ち泳ぎをしているラッキーさんは、流されもせず、同じ場所でゆったりと泳ぎを楽しんでいるように見えます。
僕はすぐにカッ飛び泳ぎをマスターして、陸上と同じように縦横無尽に泳ぎまくります。


水からあがると、次は雲の高原の展望台に行きました。 「ここからは地上の景色が手に取るように見えるんだよ」とシーちゃんが教えてくれ
ました。「見たいところを頭の中に思い浮かべるとそこに行けるのさ」とアーちゃん。
僕はさっそくおうちの居間を思い浮かべました。 すると僕はあっという間におうちの居間にきていました。 ジュンが仰向けで寝ているので、
耳に息を吹きかけてやったら、ブルブルっと震えて不思議そうにあたりを見まわしましたが、まただらしない格好で寝てしまいました。
ぷーとパティとトニーはいつものように丸まって寝ています。 こいつらを脅かすのは可哀想なので何もせずに2階の寝室に行ってみました。
夜中の3時過ぎなのにママとパパは起きていて、僕の思い出話をしています。 シーちゃんやアーちゃんとちがって、僕はママが欲しがって
飼った犬なので、特にママが可愛がってくれました。 寝るときもいつもママと一緒。 他の兄弟たちは寝室に入ることさえできないのに、
僕だけの特権なのです。
ときどきパパのベッドにも入りますが、やっぱりママのそばの方が断然好きです。 もっともシーちゃんが寝たきりになってからは寝室の床に
ベッドを作ってもらって寝ていましたが、僕だけはママのベッドで寝ることができるのです。


それにしてもママベッドに横たわっている僕の痩せてしまったこと。 僕は元気になった今の姿がママやパパに見えたらいいなと思いました。
シーちゃんやアーちゃんが言ったとおり、僕はいつでもママやパパに会えることがわかって安心しました。 厚木のにぃにの家や、ロンドンの
ねぇねの家にも行ってみようと思っています。 ママ、パパ、にぃに、ねぇね。 僕はみんなが大好きです。
僕はずっとみんなのそばに居るからね。
シーちゃんやアーちゃんたちと虹の橋で楽しく遊んでいるから、心配しないでジュンやぷーやパティやトニーたちを可愛がってあげてください。 それでは・・・。