「黒い家」(監督/森田芳光 主演/内野聖陽 大竹しのぶ)

 原作のファンだったので、ちょっと不安でした。合格点をあげてもいいでしょう(偉そうだな俺)。原作を読んでない人はかなり怖い筈。物凄い原作に忠実ですわ。しかも映像化するにあたってのアレンジも説得力がある(どこがってのは見て確かめて!)。何と言うか、分かり易いです。監督の言葉を借りれば「ポップ」な感じ。監督の才人ぶりをひしひしと感じる。保険金殺人の恐怖! 「シックス・センス」は面白かったけど、思ってたのと違ったって言う人はどうぞ。

 (ここでもう一人の人格、ホラー好きのK’登場)・・・Kの奴、ずいぶん甘っちょろい事言ってるけど、俺に言わせりゃ、わかってないぜ、森田さんってとこだな。この映画の大竹しのぶ、確かにこの映画を引っ張ってたし、この人じゃないとこの役は演じられないかな、とは思うぜ。西村雅彦だって悪かない。しかし悪かないって事は、物足りないっちゅうこっちゃ。なんちゅうか、おかしな人をおかしく演じても、普通じゃんと思っちゃう訳よ。なんつったらいいかな。例えば「リング」の貞子役の人、無名の人が演じている訳よ。めっちゃ怖いやん。大竹しのぶは結構、素の部分もちょっとキてるなって部分もあるからその部分はいいけど、頭の良さもちょっとだけ感じてしまうわな(頭で演じてる部分がちょっとあるよな)。ていうか、監督の計算してる部分が全部透けて見える(特に演出)。こうすればおかしく見えるだろうってのが、そのまま見えちゃう。主人公のフィアンセ役の田中美里の半魚人顔の方がナチュラルに怖いよ! クライマックスの消火器!タイミングが変! スモーク効果はいいアイデアだけど、死体に吹きかけてどうする! 攻撃を避けようとして思わず……ってのが、自然なタイミングちゃうん? 黒い家の外観がほとんど出てこない。誰もが考える事だろうけど、無気味な黒い家の外観で一発で怖がらせられるんちゃうん? 思い出したけど、黒沢清監督の「降霊 ウ・シ・ロ・ヲ・ミ・ル・ナ」(テレビ用映画)の怖いシーン。死んだ少女が家の外の林の中に立ってるってシーンがあるんやわ。何が怖いって、真っ黒い少女のシルエットが立ってるんだけど、そのシーン、本当に全身真っ黒に塗ったような少女がじっと立ってるんだわ。怖すぎるわ! あと、黒沢清も大きな影響を受けたって言っている「本当にあった怖い話(ビデオオリジナル)」(鶴田法男監督)で、病院で宙に浮いている生首とか、「何もしてないんだけど怖い」、そういうシーンを演出してくれって感じかな。あと、黒い家に乗り込む場面は尺の関係とは言え、唐突やろ。説明不足は否めないんちゃうん? 帰りのエレベーターで他の客も「何で急にあそこで……」て言ってたわ。ま、「ホーンティング」の五十倍は面白いけども、もう一歩やったな。でも平均点はクリアしてたから許したろう。フフフ・・・

 (ここでK戻ってくる)、K’(ケイダッシュ)はホラーに求める基準が高すぎるからなあ。取り敢えず☆☆☆。 Kでした。それでは。
('99・11月劇場公開)

'99・11月 メール・掲示板機能付きFAX「mojico」掲示板にて初出
'00・12/7 加筆修正

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