ケイ国王の映画感想文21 VOL.29

誘拐犯

「誘拐犯」(監督/クリストファー・マックァリー 出演/ベニチオ・デル・トロ ライアン・フィリップ ジュリエット・ルイス)

あらすじ〜食いつめた2人のアウトロー、ロングボー(ベニチオ・デル・トロ)とパーカー(ライアン・フィリップ)。2人は、ひょんなきっかけから大富豪のチダック(スコット・ウィルソン)が、ロビン(ジュリエット・ルイス)という代理母を雇って自分の子を妊娠させたという事を知る。胎児の身代金目当てにロビンの誘拐計画を実行する2人。
 2人の護衛、ジェファーズ(テイ・ディッグズ)とオベックス(ニッキー・カット)の猛追を振り切り、ロングボーとパーカーは、ロビンの誘拐に成功するが、そこで意外な事実が明らかになる。実はチダックは石油王であるだけでなく、組合乗っ取り、裏金の資金浄化に手を染める裏組織の一員だというのだ。すでにチダック直属の"掃除屋"ジョー(ジェームズ・カーン)が2人を追って動き始め、ジェファーズとオベックスも2人を執拗に追い始める。必死にメキシコの国境線を目指して逃走するロングボーとパーカーの2人。
 そして代理母を快く思わないチダックの若き妻フランチェスカ(クリスティン・リーマン)の企みや、ロビンのある計画が裏では交錯し、次々と事態は二転三転する。
 果たしてロングボーとパーカーは無事に逃走し、身代金をせしめる事が出来るのだろうか……

・渋い!
 この映画、賛否両論だったので見に行くかどうか最後まで悩みました。見に行こうと思った決め手は「時速4kmのカーチェイス!」と言う雑誌の記述。
 見たい!
 で、劇場に見に行った訳だ。面白かった〜。めちゃくちゃ渋いっす、この映画。
 アメリカ南部&メキシコの灼熱の太陽の下で繰り広げられる、悪党対大悪党の静かで熱いガンバイオレンス。監督はあの「ユージュアル・サスペクツ」の脚本家クリストファー・マックァリー。渋目のクライムサスペンス。痛みの伝わるガンアクション。息詰まる攻防。めちゃくちゃ旨いっす。そして新しい。掃除屋ジョーのジェームズ・カーン! 渋すぎ! 主役のデルトロ、むちゃくちゃかっこいい! ライアン役のフィリップもいい感じ。
 で、「時速4kmのカーチェイス」とは……妊婦を誘拐しているので、逃げる側も追う側も慎重に行動する。路地裏での攻防で、逃げる側の主人公2人が、人質を連れながら、止めてある車のサイドブレーキをはずし、手押しで車を動かす。その車の開いたドアの後ろに身をひそめ、お互い銃を向け威嚇しながら、路地の出口に進んで行く。
 たったそれだけのシーンなのだが、主人公側と追っ手側の張り詰めた緊張が伝わってくる素晴らしいシーンになっていた。わての今年のベスト・アクションシーンの一つになると思われる。やっぱ緊張感って大事だよね〜。
 確かに多少人間関係が入り組んでたり、主人公達がかなり異色な悪党なんで、感情移入が難しい人もいるかも知れない。
 しかし、監督の意図〜ありきたりのアクション映画を撮りたくないという意思〜が伝わってくるし、マニアには堪らない映画だ思う。
 「処刑人」という映画が「劇画タッチのカッコ良さ」を目指してるとしたら、「誘拐犯」は「クライムノベルのカッコ良さ」をスクリーンで再現させようとしている風に感じた。いずれにしろ、新しもん好き、変わったもん好きの生っ粋のバイオレンス映画ファンは是非見るべし! デルトロがめちゃくちゃかっこいいと言う事とジェームズ・カーンが素晴らしいと言う事を再度駄目押ししとく。刮目して見るべし!
(☆☆☆☆)

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('01・6月劇場公開)
('01/7/28書き下ろし)