ケイ国王の映画感想文21 VOL.42

修羅雪姫

「修羅雪姫」(監督/佐藤信介 出演/釈由美子 伊藤英明 嶋田久作 佐野史郎)

ストーリー〜現在とは時間も空間も異なる“もうひとつの未来”
 暗殺集団・建御雷家で育った雪(釈由美子)は、愛を知らず、また哀しみすら知らぬ孤独な女剣士である。が、母の死の真実を知った雪は組織を抜けて逃亡し、反政府グループのメンバー・隆(伊藤英明)と知り合う。隆との時を重ねる中で、雪は自分の心の中に生まれつつある新しい何かに気づくのだが...。
(↑公式ホームぺージより)

 釈由美子が素晴らしい!
 アイドル釈由美子の初主演映画がハードSFアクション映画と聞いて驚く人も多いと思うが、そのアクション初挑戦の彼女(しかも天然ボケ系でふにゃふにゃしてとてもアクションをする人には見えない)が本場・香港のアクション女優以上の動きを見せ(比喩ではなくマジで!)、哀しみを背負った美しき女刺客を笑顔ひとつ見せずに演じ切っていると知ったらその驚きは更に倍増するであろう。
 とりあえず新しいアクション女優が誕生した事に乾杯したいと思う。
 て言うか新しいもなにも、志穂実悦子以来日本にアクション女優なんていたのか?
 まあ、そう言う映画が少ないので需要がないと言う事でもあるのだけれども。
 
普通のお芝居の部分も非常に良かった。計算づくの頭で考えた芝居ではなく、役柄に素直に入り込み、そのキャラクターの感情に身を任せる。とても映画初主演とは思えない。大したものだ。
 グラビアアイドルの彼女だが、ちなみに今回はセクシーなシーンはほぼないに等しい。この辺、作り手側が安易なサービスシーンに逃げず、ちゃんと中身で勝負しようとしている姿勢が見えて、非常に好ましい。サービスシーン嫌いじゃないけどね(笑)。

 アクションシーンのかっこよさ! 2001年度で一番アクションがカッコ良かった映画
 
アクション監督は香港のアクションスター、「ドニー・イェンCOOL」では製作総指揮、監督、主演、アクション監督の4役も務めた事のあるドニー・イェン。
 コマ単位のスピーディーなカット割り、独創的で躍動感溢れる殺陣はこの映画の最大の見せ場である。釈由美子がほとんどスタント無しでそれらのシーンをこなしている事にはほんと驚くしかない。日本刀を持った暗殺集団が香港のカンフーを下敷きにした殺陣で暴れるのも新鮮。
 わての知人は「日本刀で香港風アクション」にちょっと違和感があると言っていたが、わて的には「『もう一つの未来』が舞台だし、かっこよければいいのでは」と言う感じ。あとはそのアクションそのものが「独自の戦闘体系を持っている暗殺集団の特徴をあらわしている」と思うので、「唐突に見た目のかっこよさだけで香港人でもないのになんの説明もなくカンフーアクションが始まる最近の駄目映画」とは一線を画していると思ってる。「クリムゾン・リバー」とか「ヴィドック」とか、最近のリュック・ベッソンのプロデュースの奴とか(「ジェット・リー」本人のはまあいいとして)。何はともあれこのアクションシーンを見る為だけでも入場料を払うのは惜しくない。ビデオやDVDが出たら何回も巻き戻して見てみたい。それぐらいアクションシーンがかっこいい!

 物語はシンプルな「仇討ちもの」。アクションシーン以外、のっぺりとしたありきたりな展開が続くので、少々退屈気味。見せ方の問題だと思うんだけどなあ。そんな中、不思議な近未来世界を小道具や何気ない風景でかいま見せようと言う特技監督・樋口真嗣は頑張っていると思うし、嶋田久作、佐野史郎、六平直政、松重豊、長曽我部蓉子と言った脇を固める人達が非常に良い味を出している。伊藤英明はまあまあ。映画初出演(うろ覚え)の真木よう子ちゃんもいい感じ。

 不満点を言えば、暗殺集団の個人個人の戦い方、武器に個性を持たせて欲しかったなと言う事と、最後の主人公・雪とボスの戦い、「圧倒的に強いボスに勝ち目のない戦いを挑む雪」にして欲しかった。序盤のシーンでボスがせっかく出て来るんだから、その時に力の差を見せつけて欲しかったね。やっぱ敵が強ければ強い程盛り上がるでしょ。あとアクションシーンの見せ場がもう一つくらい欲しかったなあ。それで中だるみも防げたと思うんだけどなあ……

 と言う事で作品的には(☆☆☆1/2)。アクションシーンと釈由美子には(☆☆☆☆☆)差し上げたい。そう言う感じです。ではでは……

('01・12月劇場公開)
('01/2/17 書き下ろし)

>BACK