ケイ国王の映画感想文21 VOL.40

ソードフィッシュ

「ソードフィッシュ」(監督/ドミニク・セナ 出演/ジョン・トラボルタ ヒュー・ジャックマン)

あらすじ〜ゲイブリエル(ジョン・トラボルタ)は『狼たちの午後』においてアル・パチーノのとった行動が間違いとし、自分が監督だったらと見解を語る。ところがカメラが退いていくとそこは紛れもない銀行襲撃の場面だった。そして物語はその4日前に戻る。政府の闇資産として、20年前の麻薬取締局の極秘作戦「ソードフィッシュ」で生じた95億ドルもの大金が銀行に眠っている。ゲイブリエルはそれに目を付け、天才ハッカーのスタンリー(ヒュー・ジャックマン)を仲間に引き入れて、コンピューターハッキングによって大金を奪おうと画策していた。大金を使ったゲイブリエルの真の目的とは?


「天才ハッカー」の扱いに注意せよ
 
かなりひねったセンスの作品である。トラボルタが率いる犯罪集団(?)の正体だったり、二重の三重のどんでん返しといい、いわゆる在り来たりのサスペンス、ありきたりのアクション物にしたくないと言う作り手側の意思を大いに感じ取る事ができる。
 で、やっぱりジョン・トラボルタの悪役はかっこいいし、ヒュー・ジャックマンはこれから人気出そうだし、ハル・ベリーはセクシーだし、役者陣に関して全く文句はない。冒頭の「マトリックス」のマシンガン撮影を応用したVFXシーンはかっこいいし……
 そして入場料に見合った「見応えのある映画を見たぜ感」をなんだかんだ言って満たしてくれる。人に「ソードフィッシュ」って面白い?って聞かれたら「なんだかんだ言って元は取れると思うよ」と言ってあげようとは思っている。
 が、この映画が必見の映画かと言われたらちょっと微妙な感じである(わて的には)。ま、ちょっとした事ではあるのだが……

(↓注意:ネタバレあります!)
 


 主人公はヒュー・ジャックマン演じる所のスネに傷持つ天才ハッカーである。で、悪のボス(トラボルタ)に弱味を握られ、利用される訳なのだが……
 で、この主人公は1.冒頭、2.クライマックス、で、超高難度のハッキングにトライする訳なのだが……「天才ハッカー」ですよ。物語の中心人物である「天才ハッカー」の物語の中での役割って、どう転んでも「超高難度のハッキングを成功させる」以外にあり得ないでしょ? で、それは別にいいっちゃあいいんだけど、物語の重要な見せ場にその主人公のハッキングが成功するか否かを持って来るのって、どうなん?
 ま、成功するっしょ。その為の登場人物だし……
 
 で、わてはある法則を発見しました。
 
 「古今東西、映画の中天才(的な)ハッカーと言う名目で登場した物語の主要人物は必ず超高難易度のハッキングを(最終的には)成功させる」と言う法則。
 
 「え〜っ!」と思った方、思い出してみて下さい。
 「ミッション・インポッシブル」、「インデペンデンス・デイ」(普通のノートパソコンで宇宙人の乗るマザーシップの制御部分に入り込んでいた。笑)、アニメ「カウボーイ・ビバップ」のあの女の子もそうだし……他の映画でも大体そうでしょ?違うって例ある?
 この「天才(的)ハッカー」だけですよ。絶対ハッキング成功しますね。映画に登場する他の天才(スポーツ、戦闘能力、学力)、ま、勝ったり負けたりじゃないですか。ハッカーだけですよ。「中心人物として出て来た『天才』ハッカーは必ずハッキングを成功させる」。

 だから先が読めてつまんない。

 そしてハッキングの場面って映像的には地味……

 なんちゅうか見せ方として、汗たらしながら、険しい顔をして、物凄いスピードでキーボードを叩く……なんか伝わり難いじゃん。こいつが普通のハッカーと能力的にどう違うの? 確かにキーを打つのは早いけど……みたいな。そのプログラムを突破する事の大変さ、彼がぶち当たっている障害とか障壁みたいなのが、見てる人(観客)にはわかんないでしょあんまり。
 確かに説明はあるのね。二重三重四重にガードされているみたいな。でもやっぱりそれってディスプレイの中の事だし、映像的にはわかんないのよ。
 結局なんかわかんないけど大変なんだなぐらいしかわからない。
 「マトリックス」と言う映画だとそれを全部肉体のアクションとか、修行とかに置き換えちゃうのね。物凄い強引なんだけれども(笑)。でもそれがあの斬新な映像で表現された時にやっぱ非常に面白かったし、分かりやすかった訳で……
 もちろんそれと同じ事をやれとは言わないけれども。ま、色々工夫はしてたんだけどね。冒頭の方のシーンだとナニをアレされながらキーボード叩かされたりとか(笑)。でもまあ苦し紛れって感のが強い気がするのね。
 で、結局サスペンスの手法として制限時間以内に突破する……ぐらいしかないのね。あとは「意外な言葉がパスワードだった」くらい。もうこの二つともお決まりのパターン中のパターンでしょ? それって……ねえ?

 だから上で上げた3つの作品「ミッション・インポッシブル」、「インデペンデンス・デイ」、「カウボーイ・ビバップ」は絶対、「メインのクライマックスの場面で超高難易度のハッキングにトライする」事はしないのね。ちゃんと大きなクライマックスシーンが別にある。「ソード〜」はメイン中のメインがそれだから、なんだかなあって感じ……(アクションの大きな見せ場は別にあるが、ストーリーの流れとしてのクライマックスは主人公のハッキングシーン)。なんちゅうかクライマックス以外もこの物語の流れを決める節々で全部主人公のハッキングのシーンが絡んで来る。本来巻き込まれ型のサスペンスっぽい本作品の、巻き込まれてる主人公が物語のキャスティングボードを握ってしまっている。しかもその主人公は天才なわけでしょ? だからあんまり見てる方は緊迫感がないのね。ま、突破するでしょみたいな。

 あとはゲイブリエル率いる組織の意外な正体?って奴。確かに意外っちゃあ意外だけど、でもただ奇をてらっただけのような気も……
 そうなんですよ、全体的に漂う「只、奇をてらってみました感」そこがどうもね。んーむ、意欲は買うし、成功してなくはないけど……頭脳的な犯罪集団っぽい組織のボスが、やる事は武力的手段に頼った派手な銀行強盗だったり、「バスの屋根にワイヤー引っ掛けて、ヘリでぶらさげてとんずら」にしても、あれだけ重そうな車体なら底が抜けるか、屋根が外れない?とか、主人公並にハッキング能力のある人物が見つからなかったらこの計画って成功しないじゃん。見つからなかったらどうするつもりだったの?とか、まあ、いろいろ考えてみたりする訳だけれども。ま、楽しめる映画である事は間違いないです。と言う事で……

 星は「☆☆☆1/2」にするか「☆☆☆☆」にするか迷いましたが、一応、
(☆☆☆☆)
にしときます。
 ではでは……

('01・12月劇場公開)
('02/2/2 書き下ろし)

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