ケイ国王の映画感想文21 VOL.50

ピンポン

「ピンポン」(監督/曽利文彦 出演/窪塚洋介 ARATA サム・リー)

 「ピンポン」は面白かった。ARATA演ずるスマイルが一番好き。ぺコ役の窪塚君はあの芝居は鼻に付く人もそろそろ出て来てるだろうけどあのぺコの伸びやかな感じはやっぱり窪塚君にしか出せないと思う。ハマリ役過ぎて逆に文句を言われてしまうと言うパターンか。キャプテン太田役の人最高!竹中直人も夏木マリも良かったね。個人的にはチョイ役の三輪明日美も良かったね。

 見る前はもしかしたら面白くないかもとか思ってた。が、ちゃんとしっかりと面白い。そして新しい。観客に誠実な映画である。

 同じ松本大洋原作の「青い春」、こちらは「欠点もあるけど愛おしい映画」。「ピンポン」は「人前に出して恥ずかしくない堂々たる映画」。
 

 「ピンポン」を見る前は、「青い春」と「ピンポン」を見比べたら出来の良い悪いに関わらずひいきするのは「青い春」の方かなと思ってたが(「青い春」のざらついた感じ。鬱屈した青春と言うテーマは非常に好みである)、どうしてどうして、僕は明るくてポップな「ピンポン」の方が好きだ。
 
 見てない人に慌てて言うと「ピンポン」にも登場人物の挫折や葛藤が出て来る。ただその描き方は最低限の部分だけ押さえ(その押さえ加減が絶妙だと思う)、それでいて表面的ではなくリアルな感じがするのである。
 

 井筒監督が某番組で「ピンポン」はどの登場人物にも感情移入が出来ないと言って怒っていた。僕も見ていて思った。「心から感情移入出来る登場人物は確かにいない」。

 でも、面白いのだ。その理由をずっと考えている。
 それはやはり今どき珍しい「ヒーロー」を描いた映画だからではないかと言う気がする。それもちょっと前に流行った「鬱屈を抱え込んだヒーロー」ではなく、「困難にぶつかりもちろん悩んだりもするが、いともあざやかにそれを乗り越え、痛快にそれを克服するヒーロー」、それを描いたからではないか、と。

 もちろん、そのヒーローを際立たせたのは所謂凡人である所の「アクマ」(役名)君が非常に魅力的だったからだ。
 だからなおさらヒーローたちが輝いて見える、という意味でも、やはりこの作品は原作(未見)でのキャラ設定が非常に良くで来ているのだと思う。そして脚本(宮藤官九郎)と監督(曽利文彦)が良い仕事をしたのだと思う。SFXの使い方も完璧。今年映画賞をあげるべきはこの映画だね。
 
 ただ今年の邦画一位はやっぱり「害虫」である事には変わりがないけれども。

 「ピンポン」は何回も見たい映画だ。そしてこういう映画がこれからもどんどん作られて行くべきだと思う。

(☆☆☆☆☆)

('02・7月劇場公開)
('02/8/17 日記から転載)

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