ケイ国王の映画感想文21 VOL.3
ケイ君のビデオ観賞記21その二(「押切」)

「押切」(監督/佐藤善木 出演/徳山秀典 初音映莉子)

 「富江」、「うずまき」等で知られる人気漫画家・伊藤潤二原作の漫画の映画化。色々な映画評を見る限りあまり評判が良くなかったのだが、結構面白かった!

あらすじ〜二枚目だが影のある高校生、押切トオル。彼は、幼少の頃、両親と住んでいた洋館で起こったと思われる奇怪な事件の悪夢に毎晩悩まされていた。その屋敷で起きた怪現象の謎を解く為、10年ぶりにその屋敷を訪れるトオル。そこでトオルは不思議な体験に遭遇しその日からトオルの運命は大きく変わり始める。その頃から、トオルの通う学校周辺では「墓掘り人」と呼ばれる連続殺人鬼が出没。その正体がトオルではないかと言う噂が立ち始めていた。果たしてその正体は……?

 物凄くチープだし、似たようなアイデア(「パラレル・ワールド」を扱っている)はどこにでも転がっていると思うが、「もう一人の自分」と言うテーマはそれだけでとても楽しい。ホラーのいい所はそれを科学的な説明とかなしに、「そうなってるんだからしょうがない」で済ませられる事だと思う私(笑)。
 それから、この映画の場合、ホラーの面白さの中の一要素として、「普段見なれている風景や良く知っている人間が突然、別のものに変わってしまう怖さ」と言うのを良く表現していると思われる。特に「外見的に変わってしまう怖さ」よりも、「外見は変わらずに内面や中身が突然変わってしまう事の怖さ」が表現されていて個人的には非常に良かった。具体的に言うと、トオルの秘密を知ってしまった友人たちが、今までトオルの味方だったのが、突然、トオルに牙を向く場面。理屈では分かっていても感情的に許せないと言う理由で突然豹変する友人たちの描写は人間の理不尽さや、自分もその立場ならそうするかも……と思わせる部分があって非常にいいシーンだった。
 お話自体も主人公がどうなって行くのか?と言う展開で最後まで楽しめたし、なかなか良かったです。確かに劇場で1800円払って見た人は物足りないかもしれないけど、ビデオレンタルして見る分にはちょうどいい感じに思いました。こういう話は結構好きですね〜。非常に面白かったです。
 安っぽい特撮や、若い役者さん達のぎこちない芝居もそれはそれでまたいい物です。徳山くんはこれから人気出そうだし、初音映莉子ちゃんも「うずまき」に引き続き、けなげな女の子役で可愛いし。学園青春ホラー物としてサクっと楽しめます。お気軽にどうぞ!(☆☆☆)

('00/9月劇場公開→'01/1月ビデオでの観賞)
('01/1/22書き下ろし)

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