ケイ国王の映画感想文21 VOL.36

ケイ君のビデオ観賞記21その十二(「溺れる魚」)

「溺れる魚」(監督/堤幸彦 出演/窪塚洋介 椎名桔平 IZAM 仲間由紀恵)

 堤幸彦監督・・・もともととんねるずのバラエティ等のディレクターをしていた人で(いわゆる秋元康グループ)、のちにドラマ、映画のディレクターに転身。劇場映画デビュー作は「!(アイ・オー)」と言う作品(未見)である。
 しかしこの人の名を知らしめたのはテレビドラマの方。「金田一少年の事件簿」や「サイコメトラーEIJI」、「ケイゾク」、「トリック」、「池袋ウェストゲートパーク」と言った超人気作品である。
 これらの作品は娯楽性に富んだ非常に楽しめる内容であったし、目の超えたドラマファンにも非常に受けが良かった。僕自身もこの中の幾つかは普通に見て楽しませて貰ったし、彼の「TVディレクター」としての才覚にケチを付けるつもりはない。いわゆる「映像的に冒険している新感覚の人だ」、という評価に対して「一部留保しながら」、ではあるのだが。
 
 告白せねばなるまい。わては堤幸彦作品、実は余り好きではないのだ。て言うか、
「(基本的に)嫌いである

(ああ、言うてもうた。でもはっきりさせて置かんとな、んむ)。

 理由は、いわゆる人間を深く掘り下げて描く能力の欠如であったり(ああ……)、なんでもないシーンにも意味なく凝った映像を使うので、スムーズなストーリーの流れが阻害されたり(うう……)、物語の整合性や、つじつま合わせにやや無頓着であったり(ん〜む……)、ま、そう言う事だ。
 この人の撮った作品には、主に映像的な面で、目立つ特徴がある。しかし、それには物語や作品の内容にそってそのような手法を用いてるとは言えない部分も多く見受けられる。単に自分の作品の特徴付けとしてそのような手法を使っているに過ぎないのではないか、と俺が言わずとも同じような風に思っている人は多いと思う。特殊効果に頼らず、オーソドックスに撮った方が良いと思われるシーンにもこの人は特殊効果をかける人だ、と言う「偏見」を基本的に俺は持っている。
 おふざけも良いが、どこかに真摯な部分を見せてくれないと……しかし、「それがこの人の長所である」、と言う意見にはまあ頷けないこともない。今までのパターンからの脱却、良い意味でのお遊びの部分、バラエティ出身の監督らしい、今までのTVドラマにないノリは確かに日本のTVドラマ界に新しい風を吹き込んだ、とも言える。いわゆる「その場、その瞬間が楽しけりゃいいじゃん」ってところはまさに「今時のテレビっぽいノリ」を体現していると言える。
 そう、この人のやっている事はある意味正しい。だから別にいいのだ。「TVでそれをやる分には」。

 さて……そんな堤幸彦嫌いのわてが何故、堤作品である「溺れる魚」のビデオを見たのか? 理由は以下に述べる通りである。

1、原作の小説(作・戸梶圭太)がふざけてて今風のノリで面白かった。ふざけてるけどちゃんと物語に整合性があるし、人間を見る目がシニカルで良い。そして何よりも映像的だ。これは映画化の話が出てもおかしくないなと思った。

2、若手男優の中でも最近良いと思っている窪塚洋介君が出ているから(ああ、そう言う意味では彼の出世作のドラマ「池袋ウェストゲートパーク」を見てないのは、問題あるなあ。実際面白かったらしいし)。

3、仲間由紀恵ちゃんが出ているから(……)。
 
4、意外と面白い、と言う評判……

 と言う事で「溺れる魚」を借りて見た訳だ(前ふり長かったねえ)。

ストーリー〜“溺れる魚”と名乗る人物によって、一流企業の脅迫事件が発生。警察の内部捜査をしていた落ちこぼれ刑事2人組、白洲(椎名)と秋吉(窪塚)は、捜査対象の警部がその企業と癒着していたために、事件の渦中に巻き込まれる。

見終った感想
面白い! そして仲間由紀恵ちゃんサイコー!(笑)
〜最初の始まり方、物凄いベタ。水槽の中の魚が溺れるシーンから始まる……これってどうなの? ダサくない?
……って思いつつも、その後はなかなか快調! 意外と原作に忠実。面白いじゃん! IZAMかっこいい! 仲間由紀恵ちゃん可愛い!最高!(立ち回りシーンがあればなお良かった)。役者陣の怪演は良い。ただ女装癖のある若い刑事役の窪塚君はこの映画ではちょっと悪い意味で下手である(良い意味で下手って言葉もないけどね)。でもこれは監督が悪い。女装癖のある刑事だが、性的嗜好はノーマルである筈の原作の秋吉が映画ではややそっちの気がある人に変わってしまっている。そのことによってちょっとキャラクターがぼやけてしまった。女装癖という変わった趣味を持ちながら、どちらかと言うと警官として、人間としては結構ちゃんとしていた秋吉の二面性を原作通り活かしていれば、それなりに感情移入出来る主人公になったと思うのだが、もともと役者としてつかみ所のない窪塚君がもともとリアリティのない役を余計つかみ所無く演じてしまった。この後に見た「GO」ではそれが解消されていたのだから、これはやっぱり監督の責任だ。
 もう一つ、IZAMが経営するクラブが、アバンギャルドな人達が集まるクラブと言う設定だったのだが、そう見えないってのは、これもやっぱ監督の力量だな。ま、まあまあ許せる範疇だけれども。 
 が、圧倒的にこの映画は面白かった。初めて堤監督、頑張ったじゃんって思った。楽しい映画が見たい人、是非見てちょんまげ! こっち方面(バカっぽいエンタティメント)の邦画は最近あんまりいいのがないなと思っていたので、すごく良かったです。で(☆☆☆☆)にしよう!と思ったんですが……

 ただ一つ、あとから、あ、そうか、と思った部分……この犯人が犯行を起そうとする「きっかけ」が原作と違うんだよね。ま、それはいいとして、その「きっかけ」が違うにも関わらず、その後は原作と一緒なので、原作を読んでいた俺は逆に気付かなかった。つまり……動機、と言うか、犯人がなぜそんな事をするのか、があまり観客に良く分からないのだ。いわゆる愉快犯なんだけど、なぜそういう事をするのかが見えて来ない。原作だと犯人が企業に復讐する理由に共感出来るんだよね。原作だと企業側が結構悪いのね。だから犯人に感情移入が出来る。でも、映画の方は企業は全然悪くないんだよね。だからちょっと映画しか見てない人はアレ?って思う気がする。この辺はどうなんだろう。映画版だけ観た人の意見を聞いてみたい物だ。

 と言う部分にマイナスを感じたので(☆☆☆1/2)にさせて頂く。でもこれ、凄い高い評価っすよ。ていうか、面白いので是非観てちょ。で、再度言うけど仲間由紀恵ちゃんが可愛すぎ! 仲間由紀恵ファンは必見。んむ、スクリーン映えする可愛さ! もっと映画出てね!
ではではそう言う事で……
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('01.2月劇場公開)
('01/12/10書き下ろし)