ケイ国王の映画感想文21 VOL.28

リムジンドライブ

「リムジンドライブ」(監督/山本政志 出演/T.M.スティーブンス 仲祐賀子 鬼丸 サンキ・リー)

・元気のいい映画!
 ニューヨークでデジタルビデオ片手に、機動力とノリとパワーで撮り切った元気のいい映画である。
 
 渋谷系ガングロギャルのエリ(仲祐賀子)は恋人を訊ねてニューヨークへやって来た。エリは“頭は弱いが(笑)”言葉の通じない外国人相手でも物おじしない、典型的なやたら元気のいい渋谷系コギャルである。エリはため込んだお金で、ニューヨークでリムジンの運転手をしているファンキーな黒人マリーク(T.M.スティーブンス)のリムジンを借り切りニューヨーク見物とシャレ込む。最悪の客が来たと嘆くマリーク。
 エリが訊ねて行った恋人は現地で女を作っていた……。恋人の所に乗り込み、大暴れしてる所をエリはマリークに止められるが、その間にマリークは商売道具のリムジンを盗まれてしまう(……)。厄病神に取り付かれたと言った表情のマリーク。エリはマリークの家に強引に居着いてしまう。責任を感じ、自分もリムジンを探すと言うエリにマリークは「いいから出て行け!」と言うのだが、聞く耳を持たず……。
 二人はリムジン探索に乗り出し、その間に二人は様々な人間や事件に遭遇する。エリとボーイフレンドをめぐる話、マリークと娘の話、怪しげな商売をしているパキスタン人、ベトナム系中国人マフィアとの出会いとか……
 
 人種のるつぼ、ニューヨークで巻き起る珍騒動の数々。バカとファンクとバイオレンス。恋と友情。ストリート感覚で一時間半強、突っ走ります! まさしく「リムジンドライブ」。
 
 お金はかかってないし、有名な映画スターは出てないけど、横浜の閑散とした劇場内で、明らかに主人公エリと同じ風体で普段映画を見無さそうなコギャル二人組が「チョー面白かった!」と言って劇場を出て行くのを見たのが印象的だった。さわやかな気分で劇場を出れるハッピーな映画。
 
 マリーク役のT. M. スティーブンスはファンクの世界では神様と呼ばれる超大御所(!)。
 その世界では超有名人だが、演技の世界ではド素人である。でも、持ち前の勘の良さやリズム感でマリーク役に素晴らしくはまっている。劇中で披露する神憑かり的なベース演奏は素晴らしい!
 そして、日本語まじりの英語で外国人たちと堂々と渡り合うエリ役の仲祐賀子(本物のコギャル)。同じく演技経験がなくオーディションで選ばれた今時の女子高生でもちろん初主演・初演技なのだが、これまた同じ画面内の他の役者さん、喰われっぱなし。物凄い逸材ですなあ〜。抜群の存在感。物凄く天然ですが、変に計算とかしないのがいい感じ。
 そして、山本監督の前作『JUNK FOOD』でデビューした鬼丸(元チーマー。獅子のような体躯と鋭い目つき、たなびく黒のロンゲがかっこいい!)も、相変わらずの存在感で良かったっす。

 こういうボーダーレスな映画、どんどん出て来て欲しい。そしてこういう元気な映画をどんどん見たいなと思いました。(☆☆☆☆)と言う事で・・・

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('01・5月劇場公開)
('01/7/28書き下ろし)