ケイ国王の映画感想文21 VOL.38

殺し屋1

「殺し屋1」(監督/三池崇史 出演/浅野忠信 大森南朋 塚本晋也)

「PARTY7」の二億倍は面白いね。そして役者陣が素晴らしい
 ヤングサンデーに連載されていた人気マンガが原作。泣き虫の殺し屋1(大森)と究極のマゾやくざ垣原(浅野)の対決の話。
 人間が切り刻まれ、身体が変形するくらいボコボコに殴られ、精液が飛び散り、残酷ないじめのシーンあり……と、かなり刺激的な原作を三池崇史監督はめちゃくちゃ忠実に、それでいてポップで、やり過ぎる事で笑える(やり過ぎのドリフ大爆笑、って言ってる人もいた)作品に仕上げたと思う。もちろん18禁。ハリーポッター(と賢者の石)では満足出来ない人は是非どうぞ。ていうか、こっちでしょ?お正月映画の本命って(違うかい?)。

 役者陣が最高! キャスティングの良さ(ハマり具合)、良質の演技(怪演を含む)のコラボレーションが見れる今年最良の邦画ですね。残酷描写が苦手な人以外で「役者の芝居で映画を見たい人」は是非見て下さいって感じ。その中でもジジイ役の塚本晋也、金子役のSABUは二人とも本業は監督だったりするのにあの演技力! 特にSABU演じる金子が物凄い魅力的。変態・異常キャラだらけのこの作品で、唯一現実寄りの彼がまた切なくていいんだよねえ〜。んむ、この金子を見れただけでも元は取れてますね。
 
 浅野忠信が凄いのはもう言わずもがな。原作のマンガと一番容姿がかけ離れているんだけれども、じゃあ、この人以外誰が垣原をやれるんだ?と言われると思い付かないんだよね。で、思い付いたとしても、ここまでの存在感が出せるのだろうかと。
 ちょっと前の富士通ゼロックスのCM、浅野の出てる奴、アレとなんかリンクする部分があるんだよね、俺的には。あと最近のAUのCMとか。浅野って日常の空間に土足で踏み込んで来るよね。あの少しザラッと感じ。それでいてニクメナイ感じがあの人の持ち味なのかな、と思う。そしてあの人が持っているイマっぽい空気。監督もたぶんその辺に魅力を感じてるんじゃないかな。三池監督に限らず、浅野を起用したがる他の監督もね。

 イチ役の大森南朋もこの作品で初めてみたけど、んむ、いいと思いますよ。少年ぽさよりもいじめられっこっぽさ寄りのイチ。あとは演技力を監督は買ったのかなと。

 他にも寺島進、菅田俊、手塚とおる、有薗芳記、KEE、新妻聡、國村隼と言った好きな人には堪らない(笑)キャスト! もう最高ですわ! 一人で劇場で唸ってましたよ。「いいよなあ寺島進」、「いいよなあ菅田俊」。「いいよなあ有薗芳記」(……もちろん上映中に声には出しませんが)。

 残虐描写、もちろん痛そうな場面(痛そう所ではすまない)は顔をしかめながら見てるんですけど、でもこれって笑っちゃう系だな、と。一時期はやったスプラッタ系のホラーと目指している所は一緒です。なにしとんねん!と観客はつっこみを心の中で入れながら笑ってしまう。ありえへん!みたいな。やり過ぎ系のギャグってありますよね。それが視覚的だからショックが強いと言うだけで。余談と知りつつ続けるんですが、「ホームアローン」とかのがムカつくし教育上どうかなと。ま、子供が泥棒をやっつける話なんですが、あんな重いもん頭にぶつかったら死ぬだろう、とか、あの勢いで転んだら骨ぐらい折れるよなあとか、そう言うのをいっさい見せない。そっちのが罪やなあ、とか。あとちょっと違うけど「天使にラブソングを」でハーヴェイ・カイテル演じるマフィアが人を脅すシーンで雑誌を丸めたので人の頭叩いたりしてるんだよね。「雑誌で頭」て! なんでも規制すりゃいいってもんじゃないよ(溜め息)。だからって「殺し屋1」を子供に見せろとも言わないけどね。18禁は妥当でしょう……って長い余談でどうもすいません。話を元に戻して……

 三池監督作品の中ではもちろんこれ(「殺し屋1」)も代表作になっていくだろうけど、ある意味集大成と言うか、18禁の描写は「極道戦国志・不動」でもやってるし、「新宿黒社会」でも異常キャラのオンパレードはやってるし、インパクトは「DEAD OR ALIVE」に勝るものはないし(「DEAD OR ALIVE FINAL」早よ見たいわ〜)。インモラルと言えば「ビジターQ」もあったし……って感じなんですよ。逆に言うと「殺し屋1」見とけばOKって考え方もあるけど、「三池ウォッチャー」としては「ま、これくらいの事は三池監督なら当たり前にするよな」って部分もある。

 で、結論を言うと……

 エンタティメントのお手本見たいな作品。
 映像に体中を斬り刻まれたい、
 引きちぎられたい、
 突き刺されたい人は是非!


 是非って言われてもなあ(笑)。でもめちゃくちゃ面白いよん〜。

(☆☆☆☆)

('01・12月劇場公開)
('01/12/31 書き下ろし)

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