ケイ国王の映画感想文21 VOL.25

ケイ君のビデオ観賞記21その十一(「犬、走る」)

「犬、走る」(監督/崔洋一 出演/岸谷五郎 大杉漣 冨樫真 香川照之)

 舞台はアジアの無国籍都市・新宿歌舞伎町。
 新宿署の不良刑事(岸谷五朗)と在日韓国人の情報屋(大杉漣)との奇妙な友情、そして中国人娼婦、桃花(冨樫真)との奇妙な三角関係を中心に、警察組織、韓国系やくざ、中国系犯罪組織らを巻き込んで、ハチャメチャで、しぶとく、したたかで、おまぬけで、しかし憎めないやつらの人間模様を描いた、アジアンテイスト満載の疾風怒濤の痛快作!

 三池崇史の「日本黒社会」と違い、同じようなテーマを扱っていても、悲愴感は希薄。代わりに全編を覆うのは過剰で人間臭いユーモアである。
 「二日間寝てないんだよ」を口癖のように主人公が呟き、ことあるごとに旨そうに食事をかき込む主人公達のシーンが描かれ、くったくがなくSEXが描かれ、人の死も悲しみとユーモアと表裏一体で描かれる。暴力シーンも過剰なドツキ漫才を思わせ、相棒の刑事(香川照之)と暴力バーでバーの従業員相手にはちゃめちゃに暴れるシーンは最高! 痛快!

・新宿を走り抜ける大杉漣が素晴らしい!
 猟犬とも野犬とも野良犬にも例える事ができる登場人物らを岸谷、大杉らが快演している。岸谷、大杉、あと香川照之ファンは必見! あと韓国系やくざ役の遠藤憲一もいいです。役者陣最高!
 特に新宿の街中を走り抜けるダイナミックな大杉の疾走シーン、まさしくゲリラ撮影! 素晴らしいシーンだ!
 そしてたくましく野性的であっけらかんとした中国人娼婦役の冨樫真(もちろん女性)が良かったです。のっけから主人公との大胆なSEXシーンも堂々と演じ、非常に魅力的でした。この作品がスクリーンデビューのようですが、もっと他の色々な作品でも見てみたいと思いました。

 生きて行く事に貪欲で、たくましく、エネルギッシュな生き物として人間を描く崔洋一の視点はまさしくアジア的なのでしょう。
 そこからもらえる勇気とかパワー、明日からも元気に生きて行こうと言う気にさせてくれます。結末も爽やかで心地良く、いい映画だと思いました。(☆☆☆☆)と言う事で…… 
  
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('98劇場公開)
('01/5/30書き下ろし)