ケイ国王の映画感想文21 VOL.18

ハンニバル

「ハンニバル」(監督/リドリー・スコット 出演/アンソニー・ホプキンス ジュリアン・ムーア)

 「羊たちの沈黙」のラストで「バッファロー・ビル事件」を解決した後、護送中に逃げ出し姿を消した“人喰い”ハンニバル・レクター博士。10年前、そのレクターに顔の皮膚を奪われ、車椅子生活を送っている大富豪メイスン・ヴァージャーは虎視眈々とレクターへの復讐の機会を狙っている。生きたまま人間を食らう、特別に品種改良した凶暴な巨大豚にレクターを生きたまま喰わせるのがヴァージャーの歪んだ願望である。
 ヴァージャーは「バッファロー・ビル事件」以来、レクターが特別な感情を寄せているFBI捜査官クラリス・スターリング(ジュリアン・ムーア)を囮にして潜伏しているレクターを狩り出そうとする。クラリス、そしてFBIらを巻き込み、果たしてヴァージャーVSレクターの戦いはどのような凄惨な結末を迎えるのであろうか・・・

 前作「羊たちの沈黙」の監督ジョナサン・デミとクラリス役のジョディ・フォスターが途中降番し、完成が危ぶまれてたが、監督に「エイリアン」、「ブレード・ランナー」、「グラディエーター」等の“映像派”リドリー・スコットと、クラリス役に「ブギー・ナイツ」、「マグノリア」等で好演したジュリアン・ムーアが抜擢され、無事作品は完成。原作人気も相まってアメリカでも大ヒットし、ついに日本での上映になった訳ですが・・・

 前作「羊たちの沈黙」とはやはり作品のトーンが違いますね。押さえたトーンのサイコサスペンスだった前作と違い、悪趣味満載、見せ物に徹した「人喰いレクター君の大冒険」みたいな映画でした。にしてもリドリー・スコットって人間を描くのってこんなにへたくそだったっけか? 活劇としてもかなりお間抜けな感じ。ヴァージャーの手下が「あの天才殺人鬼レクター」に近付くのに、あまりにも不用意に近付き過ぎるバカばっかりだし、そのレクターも後半かなり不用意な形で囚われの身になったりする。ホプキンスは前作よりちょっと太ったなあとは思う以外は完璧なレクターぶりだったが、そのレクターの登場させ方とかが普通でつまんないんだよなあ。これは監督の責任でしょう。ただ、「知的な狂人もしくはある意味・怪物」ってキャラをどう扱うのかはかなり難しそうだけどね。殺人シーンも前中盤はかなり不満。ヴァージャーもレクターの宿敵の割にはなんか線が細すぎる。なんか役不足だったなあ〜。

  「レクターの登場シーン」は
  光と影の使い方が絶妙で、
  シネスコの細長い画面の中の構図が天才的に美しい、
  そして怪物を描かせたら天下一品の
  「ハロウィン」のジョン・カーペンター監督に、

  「レクターのイタリアでの華麗な殺しのシーン」は
  イタリア出身の「サスぺリア」のダリオ・アルジェント監督に

演出して貰いたかったと個人的に思う私・・・

 ただクライマックスからラストにかけてのくだり(あのショッキングなシーンも含めて)、あの辺はリドリー・スコット監督の面目躍如かな、と思いました。
 例の晩さんのシーンはさすがにゲンナリした。悪趣味にも程があるなあ(いい意味でも悪い意味でも)・・・その辺のクオリティの高さをそれなりに評価するにしても前半とかがなあ〜。カタルシスがないのが嫌でした。どうせ原作と違うんなら、主要人物、もっとむちゃくちゃにされたら良いのに・・・(ひどいやっちゃなあ。わし)。突き抜けてしまうと見てる方も楽になれるんだけど・・・クラリスとレクターの関係も進展や決着を見ないので、その辺も消化不良。いろいろな意味で萎えた気分で劇場をあとにしました。お金払ってゲンナリするってのも貴重な体験かも。

 誰かが「羊たち〜」を「ジョーズ」、「ハンニバル」を「ジョーズ2」に例えていたけど、ま、ほぼ全面的に賛同。同じ怪物が暴れるにも、見せ方で大分変わるものです。かなりの怪作だけど、怪作にしては平凡。
あ、結構否定的な意見が多い、ジュリアン・ムーアのクラリス役は僕的にはかなり良かった。と、同時に、降りたジョディ・フォスターの選択もそれはそれで間違っていないと思った・・・さてまたまた続編、作られるのだろうか?(☆☆1/2)

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('01・4月劇場公開)
('01/4/10書き下ろし)