ケイ国王の映画感想文21 VOL.52

ケイ君のビデオ観賞記21その十五(「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」)

「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」(監督/金子修介 出演/新山千春 宇崎竜童)

 遅ればせながら
 
ようやくビデオで見た。監督は「平成ガメラ3部作」で見事大人の観賞に耐える怪獣映画を作って絶賛された金子修介監督
 
 公開当時、「平成ゴジラ最高傑作!」、「いや、平成ガメラも超えたのでは?」の声もちらほら聞こえたのだが……それには半分同意し、半分は同意しかねるという感じ(個人的には)。

 子供騙しも良い所な、今までの「平成ゴジラシリーズ」(いや、僕にはそう言い切る権利すらないのかも知れない。なぜなら平成ゴジラシリーズは全てTV放映時に鑑賞し、しかも、毎回「余りのつまらなさと退屈さと稚拙な作りに呆れて」、途中でいねむりをする、チャンネルを変える、録画したビデオも途中まで見て結局消す、と言う形で満足に最後まで見た作品はないのだから)の中で「一番面白い!」と言う評には同意なのだが(しかしそれなりに評判のいい「ゴジラ×メカギラス」は未見なので次回機会を見つけてなんとか見とこうとは思う)、同じ金子監督の「平成ガメラシリーズ」を超えたかと言われると……個人的には平成ガメラシリーズの中でいまいちかなと思っている「ガメラ3」よりも劣っていると言う評価である。が、それでもやはり、なかなかの秀作であると言う評価を与えざるを得ない。「得ない」って言うか……充分楽しめましたです。はい

 単純に演出下手だと思う。が、クライマックスの盛り上げ方と、最後の締め方がそれなりにうまいので、前半に感じているその不満をうまく反転させカタルシスに結び付ける事が出来る人>金子修介監督

 状況の見せ方、話の進め方、テンポ、リズムは良いと思うんだよね。でも人間につける芝居の付け方が下手クソだと思う(今回のゴジラに限らず>金子監督作品全般)。もちろん怪獣映画なので怪獣にも演出を付けないといけないのだが、特技監督がある程度、補助的な形でその辺はフォローしてるんだろうけど、やっぱり怪獣たちの目的とか意志とか性格付けとか、その辺もう少し明確にして欲しかった。今回はガメラの時にタッグを組んだ脚本・伊藤和典と特技監督・樋口真嗣が不在だったので、その辺ちょっと甘かったのかも。でも怪獣たちの戦いのシーンは迫力があったし、ボブ・サップばりの(!)圧倒的な破壊力と強さを見せるダークな悪役ゴジラは非常に魅力的! もっと突き詰めてくれても良かったくらい。でも公開当時、併映されていた「劇場版とっとこハム太郎」目当てのお子様方にはこれ以上やると刺激が強過ぎかな? ま、その辺はこれくらいが良い按配かもしれないのかなとも思うけれども。

 護国三聖獣
 バラゴン、モスラ、キングギドラを、ヤマトの国を護る護国三聖獣とする解釈は面白かった。民間伝説である「護国聖獣記」と言うのを勝手にでっち上げ、それに出て来る表記に沿って、バラゴンを「婆羅護吽」、モスラを「最珠羅」、キングギドラを「魏怒羅」として扱っている所とかも面白いと思う。
 対するゴジラを「大平洋戦争で死んだ英霊たちの残留思念の集合体」(だからその恨みで日本に攻め入って来る)とする大胆な設定も面白いと思う。ただこの設定はこの作品で出て来る謎の老人(天本英世)の口から語られるだけでそれを裏付ける映像的な描写はないし、「戦争で犠牲になったアジアの人たち、アメリカ人、原爆の犠牲になった日本人の霊も一緒になってるに違いないわ」的な主人公由里(新山)の唐突な、しかも何の説明の裏付けのないセリフで、ぼやけた、しかもとんちんかんなリアリティに欠けた設定になってしまった。しかもその後、その設定を活かした展開はまったく出て来ない(皇居を破壊しようとして躊躇するとかって言うシーンとかあったら凄い事になってただろうな)。おそらく最初は予定していたんだと思うが、やはり政治的なメッセージが強過ぎるのと、怪獣と言えども生物の範疇に入る筈のゴジラと言う生き物の根幹を揺るがす問題なので、(この後のシリーズ展開も考え)その設定を突き詰める事をしなかったんだと思う。が、もったいないなあと言う感じ。そこまで行ってたら画期的な怪獣映画になっていただろう(良い事なのか悪い事なのかは知らないが)。いずれにしてもこの作品には若い頃、政治運動にも関わっていたと言う金子監督らしいこだわりが見え隠れし、大変興味深い。そう言う意味でも大変面白い作品ではあるなあと思う。

 あとは……冒頭のシーンで思いっきりアメリカ版ゴジラに皮肉かましてたのは面白かった。ここは見どころの中の一つ(笑)。
 あとは役者陣、新山千春は序盤のセリフ回しとか、ちょっと心もとない感じだったのだが(新山に限らず、どうも金子作品の役者へのお芝居の付け方はどうも心もとない。なぜだ?)、後半に進むに連れ、このくにを守る為、ゴジラと戦う護国三聖獣や防衛軍准将の父親の姿を最後まで中継しようと決心し、決死のリポートを続ける主人公・由里役を凛々しく演じていてとても魅力的(☆)。単身ゴジラ退治に乗り込む父親役の宇崎竜童もやはり前半の演技は心もとないのだが(まあ、本業は歌手だしね)、後半は大切なものの為に戦う軍人、そして父親を誠実に演じていて好感が持てる。好感が持てるが……ここは演技のベテランを持って来ると言うのも一つの手だったのでは>金子監督。

 とは言え、非常に面白かったです。星は(☆☆☆1/2→厳しめ?)ですが、他のゴジラシリーズがそれこそ個人的には☆二つにも満たないような評価なので、充分観賞に値する作品であると言う評価だと言う風に思って頂きたい。
 はてさて、この作品を超えるクオリティのゴジラ映画は今後現れるのだろうか。新作「ゴジラ対メカゴジラ」、見に行って見ようかな。

('01・12月劇場公開)
('02/12/2書き下ろし)

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