ケイ国王の映画感想文21 VOL.9
ケイ君のビデオ観賞記21その四(「エリン・ブロコビッチ」)

「エリン・ブロコビッチ」(監督/スティーブン・ソダーバーグ 出演/ジュリア・ロバーツ)

 告白せねばなるまい。周りの評判も良く、ソダーバーグ監督作品(「セックスと嘘とビデオテープ」、「アウト・オブ・サイト」等)のファンであるにも関わらず、最初は見るのに躊躇した事を。何故かと言うと……

1.ジュリア・ロバーツにそれ程思い入れがない(すいませぬ)。
2.社会派っぽくないソダーバーグ監督がこの内容をどう料理したのかと言う不安。実話の映画化であるからには、ラストどうなるかも、見る人は分かってるのにどうやって最後まで持たせるのか? 監督は映画化するにあたって、どの辺で「いける!」と言う手ごたえを掴んだのか?
3.裁判もの法廷ものが好きではないとい言う事(理由は後で述べます)。

 で、見てみました……面白かった! そして僕の懸念が杞憂であった事が確認出来たのです。監督やるぅ〜!
 内容は一言で言うと「ヤンママ見習い弁護士エリンの公害訴訟奮闘記」と言う事になるのですが……(笑)
 
 そうだよなあ、そう撮るよなあ。それしかないもん。逆に言うとソダーバーグ監督で良かったよ。さすが分かってらっしゃる。そしてそれを予測出来なかった俺はまだまだだなあ〜。
 何の話かと言うと、つまり、裁判シーン&法廷シーンが冒頭を除いて、全くなかったと言う事。監督偉い! 
 証拠探しや、原告の団結の為の説得をするエリンのシーンは魅力的だけど、後半、裁判シーンが始まったら俺的にはしらけるだろうな、とずっと思いながら見てました。
 それがスパッと法廷シーンをすっとばして、結果報告のシーンになった時に、やっぱ監督センスあるなと思いました。
 と、同時に、出来る監督なら普通そうするよな、とアメリカの監督を見くびっていた自分をちょっと軽蔑しましたね。
 なぜ僕は法廷シーンいらんと言ってるのか。この映画に関して言うと、エリンが悪戦苦闘しながら証拠を揃え、原告達を説得するそのシーンが魅力的に描かれれば、そのあとの裁判シーンは蛇足に過ぎないと言う事。何せ勝つのは分かってる事だからね(事実の映画化な訳だから)……と、いう「この作品においての必然性の部分」と、
 もう一つは「裁判シーンの言葉と言葉のやりとりの面白さは映画の面白さではなく裁判の面白さに過ぎないと言う事」。映像的には面白みがないのだ、法廷のシーンって(好きな人ゴメンなさい)。 やたらと力の入った熱演ぶりとか、突然ありがたい演説が始まったりとか、突然浪花節を炸裂させたりとか……裁判をドラマチックに盛り上げる方法って大抵のパターンは決まってしまっている。しかも画的に面白くない法廷でえんえんくっちゃべってるのを見るのは僕的には結構苦痛なのだ。やるなとは言わないけど、それはTVドラマでやって欲しいと思うのだ。そっちのがメディア的にも合ってると思うし。
 それをあざやかに回避したソダーバーグ監督にほっとしたのであった。そう、この作品はエリンの魅力を伝えてなんぼの映画なのだ。この作品に関しては特に法廷シーンは、それを邪魔する為だけにしか機能しえない。そう言う意味でもスカッとした私であった。
 
 個人的に好きだったのはバイカーの彼氏がエリンの9ケ月の子供が初めて喋ったと携帯電話で報告するのを、エリンが運転しながら感激の面持ちで聞いているシーン。リアクションだけのシーンなのだが、こう言うのは結構パターンでも好きなんだよね
(運転しながら携帯はいかがなものか、とちょっと思ったけど)。
 あと、ジュリア・ロバーツはこういう役やらせたら右に出る人はいないのではないかと思わせる、適役であった。人気があるの分かるね。これからもヤンママ系でお願いします。長距離トラックの運ちゃん役なんかいいかも(笑)。
 
 もう一度作品の魅力に戻ると、単なる社会正義が勝つ!って映画じゃなくて、エリンの「いいものはいい、ダメなものはダメ!」と言う、一市民の等身大の視点で闘うお話なので、納得が行くし、感情移入も出来て、暖かみのあるところが良かったと思う。いい作品でした。スカッとしたっす。(☆☆☆☆)
('00/5月劇場公開)
('01/2/5書き下ろし)

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