ケイ国王の映画感想文21 VOL.1
ダンサー・イン・ザ・ダーク

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(監督/ラース・フォン・トリアー 出演/ビョーク) 

 見てきました!  実はラース・フォン・トリアー初体験の私ですが・・・
「トリアーって面白い面白いって聞いてたけど、やっぱり面白い!」
 これから遡って、以前の作品を色々見れると思うとわくわくしますね。
 え〜、早くも今の所、僕の今年のナンバーワンです!

あらすじ〜シングルマザーのセルマ(ビョーク)は女手一つで工場に働きながらひとり息子を育てている。病気で失明寸前にまで視力が落ちてちているセルマは、遺伝性の同じ病気で失明の危険のある息子の為に経済的に苦しい生活の中、こつこつと手術代を貯金していた。絶望に満ちた毎日の中で、ミュージカル好きの彼女の心を癒す物は、彼女の頭の中で繰り広げられるミュージカルの妄想であった。そんな彼女は突然思いも寄らぬ事件に巻き込まれ……

 ビョークはアイスランド出身の人気歌手。運命に立ち向かう女性セルマを奇跡のような魂の演技で演じている。もうこの作品を最後に映画出演する予定はないとの事。確かに全てを出し切ったと言う感じだった。ちなみにこの作品は去年のカンヌ映画祭のパルムドール(グランプリ)、ビョークは同映画祭で最優秀主演女優賞を受賞している。

・「人の不幸」ってりっぱなエンタティメントなんだなあ
 この監督ってフィクションの中ではなにやってもいいって思ってるに違いないと勝手に確信。所詮フィルムの中で行われてる事やん、みたいな。で、基本的に僕はその姿勢に賛成だったりする。のめり込んで見ると悲劇、突き放すとブラックな喜劇。監督は後者のつもりで撮ってるような気がする(あるいはどちらにも受け取れるように作ってるような気も……)。その辺が面白かった様に思われます。
 役者陣、もちろんビョーク最高! そして個人的には、「アメリカの警官の格好させたらNo.1俳優(ちなみにNo.2は水野晴郎氏。なんでやねん!)」と思っているデヴィット・モースが良かったッス。ああ言う役やっても旨いんだね、あの人……(どう言う役柄かは詳しくは書きませんが)
 それから、主人公の憧れの元俳優役のおじいさん。もし、日本版を作るんならおひょいさんこと藤村俊二氏があの役ではないかと(作りませんが)。
 あと、この作品、ダウンタウンの松ちゃんが好きそうな感じがしました。雑誌「日経エンタティメント」の松ちゃんのコラム(「松本人志 シネマ坊主」)にも注目したいと思います(取り上げるかどうかわかりませんが)。
 間違いなく見て損のない映画だと思いますよ。面白かった〜!  
 ビョークのファンなら見ないと後悔すると思う。音響効果の良い劇場でミュージカルシーンを堪能して下さい。

(P.S.ここまでの文を書いた翌日、発売されていた日経エンタティメントを購入。松本氏はこの映画に十点満点を付けていました! びっくり!)

・ミュージカル映画
 うちの弟が自分の彼女とカップルで見て来たそうです。やっぱりちょっとブルーになったらしい。で、彼女は列車のミュージカルシーンでジーンときたとのこと。僕自身もややその感じに近いです。ミュージカルシーンに感激、みたいな感じ。もちろん普通の芝居のシーンもめちゃくちゃ良かったんですが。
  普通のお芝居のシーンが「主」で
  ミュージカルシーンが「従」という感じで見ている人と

  ミュージカルシーンが「主」で
  普通のお芝居のシーンが「従」と言う感じで見てる人
によっても感想が違って来る気がします。
 僕はミュージカルシーンが「主」と見ました。
 普通の芝居のシーンがいわゆるお笑いで言う所の「フリ」ではないだろうかと。
「ミュージカルシーンに移行する為の、普通のお芝居のシーン」という風に。
 だからどんなに主人公が悲惨な状態にあっても、こっちがメインではないのだろうな、という風にわりと客観的に見られたような気がします。

 この作品を見て腹を立てたおすぎ氏はわりとまっすぐに映画を見る人だと思う。おすぎの怒る理由は分かる。
 でも、そんなおすぎに腹を立てさせたトリアー監督の方にどちらかと言うと、変な共感(好感)を持ってしまう自分って、やっぱアンチハリウッドな人なんだなあと思ってしまいました。

(ここまで書いたところでまたちょっと一日、時間を置いて考えてみた)

 と、↑に書いては見たもののやっぱりもう一度ひっくり返して考えてみよう。やっぱりこの映画がハリウッドのアンチという意味だけで作られてないのは確かだ。やっぱりこの映画はセルマと言う女性の凄まじい生きざまを描いた映画である事は間違いない。通り一遍ではない結末、その「リアル」に僕は感動したのではないか。
 そしてやっぱり人の魂を救うものは広い意味でのアートであり、エンターティメントであるとこの映画は訴えている。そのメッセージを読み取れたからこそ、僕はこの映画が好きなのだ。人の心をうつアート&エンタティメントとはもちろん映画やミュージカルや美しい歌声だったりする。ビョークの歌声はそれだけで素晴らしいアートだ。通り一遍の明るい物語だったらそのビョークの歌声もうすっぺらいものに聞こえたかも知れない。そう言う意味でもトリアー監督の選択は間違っていなかったとも言える。
 いい意味で重みのある映画だった。そしてそれは僕にとってはかなり心地良い重みである。今でもビョークの美しい歌声が記憶に蘇る。さわやかな映画だった、と言い切ってしまおう。かなり僕好みの映画だった。それだけは間違いない。大拍手!(☆☆☆☆)('00/12月劇場公開)

'01/1/6書き下ろし

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