ケイ国王の映画感想文21 VOL.8
BROTHER

「BROTHER」(監督/北野武 出演/ビートたけし オマー・エプス)

 いきなり感想から。
 バスケットのシーン。ただ単に遊んでいるシーンなのになんでこんなに素晴らしいのだろう。「ソナチネ」で言う所の「浜辺で相撲」にあたるのが、今回は寺島進と黒人らのバスケのシーンなのだが、ああ言うシーンが自然に演出出来てしまうだけで、やっぱりたけちゃんは普通ではないと思う。全体として「普通に良く出来た映画」になりそうな危険性も感じられたのだが、あのシーン一つだけとっても、飛び抜けた傑作であると言い切る事が出来ると思う。とりあえず僕にはあのシーンがベストである。充分過ぎる感動を味わった。北野武万歳!である。

 キャストの中では石橋凌! 良かったなあ〜。イケイケやくざかっちょ良かった……

 あと今回注目なのは実は加藤雅也ではないかと思っている。たけし映画の主要キャストで初めて甘いマスク系の人が起用されたのが面白い(安藤政信もいたが、あれはまた別)。ロスの地元のイケイケジャパニーズマフィア白瀬役を演じた加藤だが、この手の映画が好きな男連中(僕も含めて)は加藤雅也が白瀬役に足りうる存在だったか、もう少し高いレベルを要求する部分もあるかも知れない。だが、白瀬と白瀬の舎弟・石原(石橋凌)の途中合流コンビ、物凄く魅力的だったんだよね。あの二人の外伝を作って欲しいくらい。出会いのエピソードとか……(誰が撮るねん!って話ですが) 結構女性ウケするキャラだと思った。あの二人を主人公にした同人誌とか出ても不思議には思わない。なんとなく今までのたけし映画にはなかったなあ、と思って非常に魅力的に、感じましたね。

 あの面白いお姉ちゃんも良かった(名前がわからん)。たけし映画では初めて、女性キャストしっくり来た人ではなかったかしらん。この人これから売れるかも(だから名前はなんだっての)。

 バイオレンスシーン。近未来の架空の話である「バトル・ロワイアル」より現在と地つながりの「BROTHER」の暴力の方が遥かに危険な代物ではないかと思ったぜよ。えげつないシーン多し。そんな一つ向こう側の暴力の感性を持つたけしの映画が普通に観客動員一位なんかとっちゃってもどうなんだろうと思っちゃったり、逆に評価が低くても分かってないなと思っちゃったり、複雑な心境です。僕はもちろんOKです。どんどんやってくれと。次は恋愛ものを撮るそうですが、その後にでも、今度は暴力もの連続して三部作くらいいっぺんに作ってくれと、勝手にリクエストする私であります。

 作品の内容や、主人公たけしとオマー・エプスの関係の描き方については、僕からは特に付け足す言葉はなし。見て感じたものが全て。その辺の深いテーマに関する事はパンフレットとかに載っているたけし自身や出演者のインタビュー、ライターの方の文章で非常に気の利いた事が書いてあったりするので、そっちを読んだ方がよろしいかなと(なかなかの名文多し)。そっちで結構いい文が書いてあるので、それにかぶらないように、今回はその周辺で面白く感じた事を述べるに留めました。この作品に関してはその辺はあまりくどくど言わない方が良い気がするので……僕自身も少し、語り足りない感じもしない事もないですが、まあまた、語りたい事が出来たらなんか書こうかなと思います。と言う事で……(☆☆☆☆)
('01/1月劇場公開)
('01/2/4書き下ろし)

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