ケイ国王の映画感想文21 VOL.5
アヴァロン
「アヴァロン」(監督/押井守 出演/マウゴジャータ・フォレムニャック)
カランコロンカラン♪
ケイ(以下「ケ」)「♪アーヴァーローン!〜」
マスター(以下「マ」)「おう! ケイちゃんじゃないの? どうしたんだい歌なんか歌っちゃって、何かあったのかい?」
ケ「押井さんとこのお店で『アヴァロン』いただいて来たよ」
マ「ほーう。最近バーチャル・リアリティー風味で若者に人気の押井さんの所だね。どうだった『アヴァロン』?お味の方は?」
ケ「……ストレートティー。砂糖もレモンもミルクも入ってない奴。お湯みたいな味。うまいんだかまずいんだかわかんないや。熱さ加減は熱くもなくぬるくもなく。お湯の量は多いって感じがしたなあ」
マ「これは聞き捨てならないなあ、ケイ坊! その訳の分からない例え、説明して貰おうじゃないの?」
ケ「ああ、その前にコーヒー貰えないかな。いつもの奴……あ、ありがとう……うまい!さすがマスターのとこのコーヒーは旨いねえ。
じゃ、説明しようか。押井さんの言う事にゃ、ポーランドで仕入れたお茶っ葉(=オールポーランドロケ。役者もポーランドの人で、映像を素材として撮って来た)を『でじたる』って技術で好きな味、好きな色合いで加工して作ったのが今回の『アヴァロン』って飲み物らしい。だから……」
マ「ちょっと待った! 何でポーランドなんだい? 他の国じゃダメなんかい?」
ケ「押井さんの好きな『近未来風味』にするにはどうしてもポーランドらしい。その素材の茶葉をさらにアンバーかかったくすんだ色に変えて(=画面の色)、コンピューターで今風の味にしたのが『アヴァロン』って事だね」
マ「ふーん、それだけ工夫を凝らしたんなら、さぞ、押井さんの満足出来る味に仕上がったんだろうなあ。にしちゃ、ケイ坊の歯切れが悪いのはいったいどういうこったい?」
ケ「うむ……そんな工程をふんで作った飲み物ならさぞかし不思議な味がするに違いない!と思ったんだけど、そうでもないんだよね。でさ、ぶっちゃけた話、おいしいかどうかって事でしょ? 客に出す商品な訳だから……」
マ「そりゃそうだ」
ケ「どんな味わいを売りにしているのか。それが見えにくいんだよね……まず『甘味(=女性、子供が好みそうな要素)』は少ない。『苦味(=にじみ出る人生観。大人の味)』も余りない。『レモン(=若々しさ。瑞々しさ)』もないし、『ミルク(=口当たりの良さ)』もない。『熱さ(=文字通り熱いドラマ)』も足りないし、もちろん酒じゃないから『酔えない(=文字通り役者やドラマに入り込む)』し……かといって『物凄くまずい(=バカ映画)』とか、そう言う事でもないんだよねえ。まず過ぎて評判になって、どれどれ飲んでみようってお客さんを呼べたりもする世の中じゃんか。そう言う事でもなく……」
マ「全然ダメダメじゃねえか! もっと怒ったらどうなんだい? もっとはっきりした味にせい!って押井店長にさあ」
ケ「……たださ、砂糖が足りない! ミルクがない! とか言ってみても、もともと押井さんは『ストレートティーとして飲んでもらう為に』出してるんだよね。確かに砂糖やミルクやら足してしまうとありきたりの物になってしまうって言うのは分かるからさ、言ってもしょうがないって言うか……それに、意外と飲み心地は悪くなかったからさ。
ただあれだね。中身に対して『お湯が多い(=上映時間)』って気はしたよ。別にカップ一杯分の量(=上映時間106分)だから適量なんだけど、お湯を少なくしたら(=60分くらいの短編にしたら)物凄くおいしくなったと思うんだよね。それだけは間違いないと思った」
マ「ふーん」
ケ「あと嫌と言う程、押井さんが犬と戦車が好きなんだって言う事は分かった。店内、戦車と犬の写真だらけ(=戦車と犬のシーンが山程出てくる)。もう分かったから押井さん……って言いたくなった」
マ「なるほど」
ケ「とりあえず、淡々とした味で味わっている間はなんとなく退屈気味だった。けど好きな人は好きだと思う。それが結論、かな」
マ「で……結局は気に入らなかったって事でいいんだな?」
ケ「それが……もう一回あの味を味わってもいいかなって気になってる。俺って変?」
マ「……凄く、変」
ケ「(立ち上がり)じゃ、マスターごちそうさま。あ、ちなみに満足度は☆四つ満点の☆二つね!……じゃ、帰るわ。♪アーヴァーローン〜」
マ「だからその歌なんなの?」
ケ「『アヴァロン』の歌。店内にかかってた曲。あれから耳についたまま離れなくって。(帰りながら)♪アーヴァーローン〜(以下意味不明のポーランド語の歌詞)」
マ「その歌やめい〜!」
「アヴァロン」あらすじ〜近未来。若者たちはネットワーク型の仮想戦闘ゲーム「Avalon」に熱中していた。たとえそれがゲームの中でも、彼らにとっては強烈な「現実感」を伴う戦闘であり、そこから抜けだせない者も数多くいた。最強の腕を誇る女戦士アッシュ(M・フォレムニャック)もその一人である。そのアッシュの前に謎の戦士が現れる。仮装現実の世界「Avalon」の中でその謎の戦士の正体を探るうち、アッシュは「Avalon」の中の幻の最終フィールド、クラスSAの存在を知る……
感想の補足〜有名なパソコンゲーム、「ウィザードリィ」からの引用があまりにもあからさまなんだよねえ〜。ちょっとは捻らんかい! 戦士の職業を意味ありげに「魔術師」とか「盗賊」とか付けてる割に、戦闘で何を担当する人なのか役割が全然分からない。っていうか戦闘は「銃を持ってやる戦闘」なんだよね(笑)。ファンタジーっぽいネーミング全く関係あらへん。
退屈でつまらないと言い切ってもいいと思う。ただ好きな人は見るなと言っても見るだろうし……腹は立たないんだよね。なんか知らんけど。結局楽しんでしまったともいえる。後半ちょっといい感じだったし。
(もともとアニメ監督の押井氏。「うる星やつらビューティフルドリーマー」、「機動警察パトレイバー1」、「2」、「攻殻機動隊」は大傑作! なのに実写作品は観念的だったりしていまいち受けが悪い。「トーキング・ヘッド」なんて凄くてひっくり返りまっせ!)
押井ワールド恐るべし! 次作もたぶん見てしまう……筈(笑)。
('01/1月劇場公開)
('01/1/24書き下ろし)