「催眠」(監督/落合正幸 出演/稲垣吾郎、菅野美穂、宇津井健)

 最終日に見に行ってきました。面白かった! 
 黒沢清の「CURE」と内容は似てますが、原作が書かれた時期が「CURE」の製作時期と重なってたので、パクリではないでしょう。本物の臨床心理士(催眠療法のカウンセラー)が、原作者とあって細部がリアルです。全く日常に接点のない人達が次々と謎の言葉を残して自殺を図る。どうやら被害者達が、共通の心理的暗示を掛けられたらしいと知り、その謎を追う刑事(宇津井)と若い心理カウンセラー(稲垣)。そして被害者達と同じ暗示を掛けられてるらしい、多重人格症の女(菅野)を発見し、彼女から手がかりを得ようとするが……
 前半、恐ろしく大げさで下手くそな演出に、これはTVスペシャルにするべきだったのでは……と思ったりするが、それでも、続きを見ようとなるのは、いい意味での猥雑さと俗っぽい部分(「CURE」は傑作だが、「洗練されすぎてる」、「官能的な部分が足りない」と言う不満がある)、そして、「爆発する宇津井健ワールド!」である。かっこいい宇津井健!
 怪作「シベリア超特急」を作り、自ら主演している水野晴郎の「晴郎ちゃんワールド」や、エコロジー・アクションと言う謎のジャンルを作ってしまった「スティーブン・セガールワールド」も気になるが、六十過ぎで、必要以上にパワフルで、力の入った芝居をする「宇津井ワールド」の魅力も侮れない。同じく刑事役の大杉漣もいい芝居してたし、カルト女優、菅野美穂も頑張ってた(もう少しエッチなシーンも欲しかった)。稲垣くんも「吾郎ちゃんワールド」で、頑張ってたが、でも、宇津井一人の魅力にはかなわない(でしゃばらない所が吾郎ちゃんの持ち味だからしゃあないが)。監督の演出力不足をカバーしたり、明らかに流れを邪魔したりしながら(いいのか?)、それでも前半、宇津井氏が観客の注意を引っ張っていく。
 じゃあ、映画としての出来は駄目なのか? 「否!」。中盤から、突然、監督の演出が「ピタッ!」とはまっていく。小学校のサッカーの試合だと思って見てたのが、急にワールドカップレベルのシュートがビシバシ決まって行くような驚きである。そしてクライマックスからラストまで全く目が離せない。稲垣、菅野もラストまで魅きつける。とても良かった。是非見て下さい(ビデオでも)。じゃ、また。(☆☆☆1/2)
('99・6月劇場公開)

'99・7月 メール・掲示板機能付きFAX「mojico」掲示板にて初出
'00・12/7 加筆修正

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