「ゴールデン・ボーイ」(監督/ブライアン・シンガー 出演/ブラッド・レンフロ)

[あなたがこの映画を見る理由・見ない理由]
・ブラッド・レンフロのファンだから
(見ない理由〜興味がないから)
・原作がスティーブン・キングだから
(見ない理由〜キング作品の映画化された物は当たり外れが多いから) 
・監督の前作、「ユージュアル・サスぺクツ」が面白かったから
(見ない理由〜ピンと来なかったから)
・「ゴールデン・ボーイ」と言うハリウッド娯楽作らしいタイトル
(見ない理由〜内容が分かり難い……)
 
 僕は監督の前作「ユージュアル〜」は傑作だと思ってます。が、もしかしたら、監督の実力よりも脚本家の力が大きかったのじゃないかとか、今回だけたまたま実力よりも面白い物が作れたのではないか……と思ってました(監督のファンの人ゴメン)。と、言うのは、残念な事に「ユージュアル〜」のオチが僕は読めてしまった事(やな奴だな俺。でも素晴らしい作品だと思いますよ)。
 「ショーシャンクの空に」のどんでん返しにはキレイに引っかかった俺。だから「ショーシャンク〜」のが上だとは言いませんが(逆に世の中には「ショーシャンク〜」のオチはすぐ分かったという人は結構いるらしい)、まあ、満足度はちょっとだけ低かった事は否めません(スゲー面白かったけどね)。
 で、監督の本格的なハリウッド進出作である今作品でどれだけ演出力を発揮してるか、それを見たかったのと、この作品のあらすじ〜少年が元ナチス戦犯の老人を心理的に追いつめて……と言う、何だかイメージが掴みづらい内容(ピンと来ないあらすじって大体単純につまらないか、あるいは……面白い展開を先にバラせないので泣く泣く当たり障りのない事を書いてるかどっちかである)。で、僕は面白い方に賭けた! しかも最近心理劇が好きなので(サスペンスって言うと安っぽくなる。単純に事件に巻き込まれた主人公が最後に逆転するとかしないとか、自分からどんどん事件に入り込んで、最後抜け出せなくなるとか、脱出するとか、意外と物語の構造は単純だったりする。よっぽどうまく作らないと……)、「ラウンダーズ」と言うカードゲームの駆け引きを描いた作品が大変面白かったので、そういう心理的な駆け引きが見られたらいいな、と思ってこの映画を見に行く事にさせて頂いた次第です。(長いよ前置きが!→すいません!)
 で、CM、予告編を経て、いよいよ本編開始。
 ……
 ブライアン、ごめん。あんた巧すぎる。「ユージュアル・サスぺクツ」がどちらかと言うと、パズルを組み立てるような映画で、登場人物も多く、心理描写も一人の人物に割ける部分はどうしても少なかったが、今回は登場人物が絞られてるので、その心理的な葛藤や駆け引きの部分が充分に見られて、改めてこの監督の資質、演出力をたっぷり見させて頂きました。いや、凄いわ、この人。物凄い逸材をハリウッドは手に入れましたね。
 傑作ですわ、間違いなく。是非皆さん見ましょう(→宣伝マンではない)。ブラッド・レンフロもイアン・マッケランといった役者陣も良かったし……
 勿論好き嫌いはあるでしょう。でも、「スター・ウォーズ」的な映画から得られる面白さと、こう言う映画から得られる面白さの違いは勿論分かってるだろうし、見ないと勿体ないと思う(まあ、結局は好きずきだけども)。
 台詞もいいんだよな。結構印象的な台詞がビシバシでてくる。あと、全体的にさらっとしてるけども、ぬるっとした映像や雰囲気。あの辺は、「ユージュアル〜」から受け継いでます。あと、この映画を見るポイント。監督ブライアン・シンガーは「ゲイ」です(前作の時から自分でカミング・アウトしてる)。そういう人が撮ったんだな、と思うともっと楽しめる(ゲイの人、気を悪くしたらすみません)。撮影は楽しかったんだろうな、と思う。で、イアン・マッケランも実は……(パンフレットで確かめて下さい)
 原作とも後半はまるっきり変えてるそうだ。パンフレットで読んで、ああ、やっぱり、と思った。ショッキングな映像やCG等も少ないのに目茶苦茶、衝撃的に面白いこの映画(しかもパワフルである)、監督のハリウッド進出成功(勿論、質的な意味で)を心から喜びたい。人間の持つ暗闇の部分にB・シンガーはスポットを浴びせ続ける。次回作も是非楽しみにしたい。じゃあ、今回の文章もこの辺で。
Kでした。それでは。(☆☆☆☆)
('99・6月劇場公開)

'99・7月 メール・掲示板機能付きFAX「mojico」掲示板にて初出
'00・12/7 加筆修正

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