「双生児」(監督/塚本晋也 主演/本木雅弘、りょう)
 
 「鉄男」で一気に世界に躍り出た(北野武よりも欧州では有名!)《ツカモト》の(当時)新作。江戸川乱歩の原作を塚本流に描く。
 明治末期。主人公(本木)は、 大病院の院長として地位と名誉、そして若く美しい妻 ・りん(りょう)に囲まれ何一つ不自由のない生活を営んでいた。 気掛かりなのは妻・りんが自分と出会う前に遭った大火事のせいで記憶喪失になっていると言う事。
 そんな彼に次々と不幸が襲い掛かり、彼自身も常に得体の知れない視線を感じるようになる。 ある日、庭で主人公は自分と瓜二つの顔の男に襲われ・・・
モッ君は悪くないし、ビジュアルも凝っている。ただ、これは僕の個人的な事だが、一人二役とかの芝居が始まると僕自身なんか冷めてしまう傾向にある(似たような例〜「死霊のはらわたPART2」のアッシュの右手に乗り移った死霊とアッシュの戦い・・・ようはひとり芝居と言う事になるのだが、なんか、「あ、ひとり芝居してる!」と思っちゃうんだよね。ドライやなあ〜)。
 原作の雰囲気にも多分忠実なんだろうと思うし、全体を彩る美術が素晴らしい。しかし、今までの塚本ワールド(「鉄男」、「鉄男2」、「東京フィスト」等に顕著なサイバーパンクな世界)に馴れ親しんだ私としては「ちょっと今までよりもおとなしいかな」と思ってしまった(それでも充分刺激的だが)。「肉体破壊、イメージの爆発」は抑え気味(凶々しい雰囲気は健在である)。「独特のカチャカチャしたコマ撮り映像」も今回見られず残念であった。しかし新しい塚本ワールドを作る事には成功したと言えるだろう。そして今回映画初出演のりょうが良かった! 塚本さんは女性を描くのも旨いんだなと思った。素晴らしい存在感! 映画女優りょうには是非これからも期待したいと思った次第である。(☆☆1/2)
('99・8月劇場公開)

'99・9月 メール・掲示板機能付きFAX「mojico」掲示板にて初出
'00・12/24 加筆修正

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