Love Gate様 水の館
水の守護聖リュミエール様 御生誕祭記念Novel
大切な人の為にできること
<リモージュ with ロザリア>
「はぁ・・・」
「はぁ・・・」
「はぁ〜」
此処は女王の執務室。
いつもはテキパキと執務を片付けていく私の有能補佐官のデスクの上に
積み重ねられていく書類の束。
そして何度も聴こえてくる彼女の溜息。
私は自分の書類に目を通す事をやめて、そっと立ち上がると
紅茶を入れてゆっくりと戻る。
そしてロザリアの前にそっと差し出す。
゛カシャ゛っと言うカップの音に現実に引き戻されたのか
ロザリアは立ち上がり、いつもの彼女に戻って
私の手からティポットを奪い取ると何事もなかったかのようにカップに紅茶を注ぐ。
そして着席するとまた深い溜息を吐き出した。
「ねぇ・・・ロザリア。溜息を吐き出すと、幸せが逃げちゃうんだよ」
私はワザと聴こえるように大きな声で口にすると
ロザリアはハッとしたように顔をあげてティ−カップを口もとに運ぶ。
「ロザリア、美味しい?久しぶりに私がいれた紅茶を飲むのもいいものでしょう」
「えっ・・・えぇ。有難う。アンジェリーク。そっそれより、私は早く執務に戻らないと。
貴方が頑張ってくれているのに私の仕事が進んでいないなんて、補佐官として失格ね」
ロザリアはそう言って、もう一口紅茶を飲むと書類に次々と目を通していく。
ねぇ・・・ロザリア・・・。
どうして話してくれないの?
貴方のその溜息の理由も私は知ってるわ。
もくもくと仕事をこなしていくロザリア。
そして聖地の夕暮れ。
その日の執務を終えた私たちは、二人揃って宮殿の置くの私室へと戻る。
そして着替えを済ませると私は、ロザリアの部屋を訪ねた。
「ロザリア。お邪魔してもいい?」
扉の外でノックをして声をかける。
暫くすると中から扉が開いて、ロザリアが姿を見せる。
「アンジェリーク・・・」
「明日のリュミエールの誕生パーティーの打ち合わせに来たの。
お邪魔してもいい?」
「えぇ。どうぞ」
ロザリアは私を部屋の中へ招き入れると、すぐに紅茶を用意して
テーブルにセットして、静かに私のむかいがわに腰をおろした。
「ロザリア・・・。貴方の溜息の理由、リュミエールでしょ・・・」
私はロザリアを視線で覗きこむようにしながら言葉にする。
「えっ・・・。えぇ。ねぇ、ここ数日、リュミエールの様子がおかしいの。
おかしいのって言うのは違っているわね。いつもと違う気がするの。
アンジェリークはどう思う?」
「それは私も感じていたわ。ロザリアが溜息をつく時って・・・
リュミエールが絡んでいる時が多いもの。
でもロザリア、貴方だったらリュミエールに理由を訊ねることもできるでしょ」
「訊ねたのよ。そしたら・・・」
★
− 回想 −
「リュミエール」
「ロザリア。どうかしたのですか?」
「それは私がお訊ねしたいですわ。顔色がよくありませんわよ。
体の具合が悪いのでしたら、本日の執務はお休みください。
陛下とジュリアスには私から申し伝えますから・・・」
「いいえ。私は大丈夫ですよ。心配をおかけしてしまいましたね。ロザリア。
実は此処数日、夜中に眠れない日々が続いているのです。
ですが・・・体が耐えられなくなってしまった時には、お言葉に甘えさせて頂きますね」
★
「っと仰られただけで・・・、私には何も助けになる事が出来ずしまいで・・・」
やっぱり・・・。
私の想像してたとおりね。
「ねぇ、ロザリア。何も形として大切な人にできる事を考えなくてもいいんじゃないかしら。
大切な人の為に私自身で何かを成し遂げたい。そう言う気持ちもわかるの。
けれど・・・、自分自身で直接手にする事ができなくても・・・間接的にお手伝いできる事は
ないかしら?」
「間接的に・・・」
「そう。間接的に・・・。私とロザリアは、聖地に来てまだ日が浅いわ。
でも・・・守護聖たちは私たちの長い時間を此処で過ごしてる。
私たちにはできなくても、彼らにの力を借りる事は出来るんじゃないかしら」
「守護聖の力・・・」
「そう。特に、オリヴィエとかオスカーなら・・・いろいろと力になってくれるんじゃないかしら。
それに・・・クラヴィスも実は心配していたみたいなの。
それをいい始めると、クラヴィスだけじゃないのよ。ジュリアスも心配していたわ。
ただ・・・ジュリアスも、クラヴィスも心配している表情を表に出さないから・・・」
「アンジェリーク・・・」
「実はもう、私の部屋にオリヴィエとオスカーを招待しているの。
二人にお願いしましょう。それが今の私とロザリアができることだもの。
そして後は、誕生会が無事に終わるように・・・楽しく予定をたてることでしょ。
ちゃんとカタルヘナ家からも、ロザリアのばあやさんをお招きしたわ。
今日、クッキーとケーキを作るんでしょ」
「えぇ」
「さっ、二人を連れてくるわね」
私はそう言って、ロザリアの部屋を後にした。
− ロザリア SIDE −
アンジェリークが退室して、部屋の扉が静かにしまる。
私はクローゼットの中から、昨日完成したサマーセーターを手に取る。
リュミエールの誕生日に・・・私ができる精一杯の事。
私の想いを一編み一編みに込めて・・・。
私はアンジェリークのように、刺繍でタペストリーを綴っていくことは出来ないけれど
編物なら、ばあやに教えてもらった事があるから・・・。
そのサマーセーターを大切に畳んで、用意した包装紙にクルクルと包んでいく。
そしてリボンをかける。
包みを大切に抱きしめて、そっと机の上に置く。
私は何を焦っていたのかしら・・・。
全ての事を私ができるとは思ってはいけない。
此処には、素敵な仲間がいるんですもの。
皆様のお力をお借りする事も、甘えているわけではないのですもの。
私は私にできる範囲で、精一杯をリュミエールに・・・。
そう。アンジェリークの言ったとおりよ。
それでいいんだわ。
明日の誕生日。
リュミエールにとって素敵な想い出が彩られるように、
精一杯を伝えればいいのよ。
「ロザリア。入るわよ」
ノック音と共に、入室してくるアンジェリーク。
そして続いて入室してくるオスカーとオリヴィエ。
「はぁ〜い。ロザリア、お招きアリガト」
「失礼します」
二人の来客に、それぞれの好みの飲み物をお出しして席につく。
「早速だけど・・・二人にお願いがあるの」
「お願い?」
「ねぇ、最近のリュミエールを見てどう思う?」
「そうねぇ・・・。リュミちゃん、元気がないわよね。肌の荒も気になってたのよね」
「いつものリュミエールとは違うな」
「それでね・・・。オリヴィエとオスカーにリュミエールの力になって欲しいと思って。
ほらっ・・・、ロザリア。貴方からもお願いしないと・・・」
アンジェリークに促されて、私はゆっくりと口を開く。
「先日からリュミエールの顔色が悪かったの。それで私、気になって声をかけたの。
そしたらリュミエールは『夜、眠れな日々が続いている』と私にそう答えたわ。
私はそれ以上、深くを訊ねる事は出来なかったの。
オスカー・オリヴィエ。お願いします・・・
どうか、リュミエールの力になってあげてください。
私には話せない悩み事があるのかも知れません」
そう・・・
私には決して立ち入る事の出来ない何かが・・・
その中にはあるのかも知れない・・・。
「いいわ。任せて・・・。そのかわり、ロザリアも明日は楽しませて貰うわよ」
「えぇ」
「その笑顔。リュミちゃんの事はワタシたちに任せてくれればいいから。
ねっ、オスカー」
「あぁ」
オスカーが承諾した途端、アンジェリークはオスカーに抱きつく。
「オスカー・オリヴィエ。リュミエールの事、頼んだわよ。
さてっ。なら私たちも調理室にでかけましょう。
ばあやさんが待ってくれてるわよ。
二人とも、明日の料理・・・期待しておいて。
私とロザリアの手料理で精一杯、おもてなしするわ」
アンジェリークは、そう言って二人を送り出す。
そう・・・私にできる精一杯を。
大切な人の為にできる 精一杯を・・・
やりたいから・・・。
私はその後・・・、
アンジェリークと共に調理室に出掛けました。
大切な人の笑顔が見たくて・・・
精一杯の心を届けたくて・・・。
リュミエール。
おめでとう・・・。
貴方の誕生日を明日は心から祝福させてね・・・。
The End
By:暁鈴様
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