禁断の奇跡 byさくら様
突然降りだした雨は、衰えることなく、
今もなお降り続いていた。
「困りましたね。」
リュミエールがアンジェリークに向かって苦笑いをした。
「本当に・・・。いつになったらやむのかしら?」
アンジェリークも苦笑いを返す。
二人は今、偏狭の惑星の式典に来ていた。
そこは自然の美しい星で、帰るまで少し時間があったので
少し散歩しようかということになったのだ。
しかしその直後、大雨にあい、
近くの小屋に避難を余儀なくされたのだった。
「いっそ・・・ずっと降っていればいいのにー」
アンジェリークがふと漏らす。
リュミエールが思わず反応した。
「陛下!!」
そしてその言葉が今の二人の関係を如実に表していた。
アンジェリークが女王になるのは、もうしかたのないことだった。
宇宙の崩壊を目の前にして、どうして
辞退などできようか?
あの時ロザリアはすでにルヴァと恋仲だった。
女王候補がアンジェリーク一人という状態で、試験は続けられていたのだ。
そしてー
宇宙の移転。
宇宙を救ったアンジェリークが、次代の女王になることは
宇宙の民の願いだったのだ。
試験終盤において、やっとお互いの気持ちが確認できた
アンジェリークとリュミエール。
なのにー
その時には、もうアンジェリークの運命は決まっていたのだ。
その後、女王が出かける公務に、たとえリュミエールが
付き添うことが多くても、誰も文句は言わないだろう。
ざぁぁぁぁ。
雨の音が小屋の中をこだまする。
「今は誰もいないわ。」
アンジェリークの声が響く。
その声がかすかに震えている。
聖地ではどんなに近くにいようと、決して触れることができない。
近くて遠いー
今は聖地から、こんなにも遠くてー
なのにー
「ですが・・・・・」
リュミエールの返事は歯切れが悪い。
微妙な関係。
曖昧なバランス。
きわどい均衡。
一度崩れたら、もうきっと元通りにならない。
一番恐れるのはそのこと。
押さえつけるので精一杯なこの感情。
一度でも溢れさせてしまったら
きっともう、抑えられない。
そして、それは禁断の感情なのだ。
「女王になんか・・・ならなければよかった・・・・。」
言ってもしかたのないことと理解はしているけれど、
アンジェリークは言ってしまう。
もし、ロザリアが試験を降りてなかったらー
もし、宇宙の危機が迫ってなかったらー
もしー
それは尽きることがない。
瞳からは涙が溢れてくる。
日頃からたまっていたものが、ここに来て
どんどん溢れ出す。
「アンジェリーク。どうか泣かないで下さい」
リュミエールがそっとアンジェリークを抱きしめる。
ほっておけるわけがない。
突き放せるわけがない。
愛しい、愛しい少女。
「だって・・・・・。私ー・・・」
アンジェリークはまだしゃっくりをあげていた。
そういう自分は子供みたいで、とってもかっこ悪いと思うけれど、
でも、正直な自分なのだ。
たまには甘えたい。
もたれ掛かりたい。
そしてその相手はリュミエールがいい。
「あなたには敵いませんね。本当に」
リュミエールは本当に優しく微笑んだ。
それがアンジェリークの涙を止めるなんて、ちっとも自覚していたいのだろうけどー
リュミエールはアンジェリークを覗き込む。
「どうせならー泣いて過ごすのではなく、もっとー」
吐息がかかるくらい近くにいるリュミエールに
アンジェリークは赤くなる。
二人の影がゆっくりと近づいていく。
リュミエールの暖かい温もりを感じながら、
アンジェリークはふと思う。
「でもー
でも守護聖と女王候補でなければ、出会えなかった。
今はただ、あなたと会えた奇跡を信じたい。」
雨はまだ降り続いていた。
だからー
今は、今だけはー
女王と守護聖でなく、
アンジェリークとリュミエールとしてー
禁断の奇跡。
はたしてそれは、幸いだったのか?それともー
ずうずうしくも、お願いして載せさせていただきました〜♪
どうもありがとうございます〜♪真珠
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