Happy Wing

     
   あなたに手を引かれるままに歩いて来ました。
   静かな、静かな、森の湖に・・・

「おはようございます、リュミエール様。                       
今日は一日私に付き合っていただけませんか?」             

     朝一番にそのまぶしいほどの笑顔を見せられて、
 私が断る術を持たないのを あなたはご存知なのでしょうか。 

「朝起きたらとってもお天気がよくって、                      
リュミエール様とお出かけしたくなっちゃったんです。             
・・・ご迷惑でした?」                              

    いいえ。私は今日、いえ昨日からあなたを
    お誘いしようと思っていたのですよ。
                        ・・・・なぜなら・・・
 

    ふ・・・と、二人の間を風が吹き抜けました。
    それは、もうすぐ訪れる初夏の香りのする風。    
       そう、まるであなたのように優しく、時には心地好く、
        私の髪を、ほほを・・・全身を包み込んでゆく風。

             ・・・風は・・・するりと・・・抜けて・・・
 

               「!!」

       私はとっさにあなたの手を引き寄せてしまって、
                 それから・・・・それから、私は。

「リュミエールさ・・ま・・?」                             

    驚いたあなたの不安げな瞳が私を見上げていました。
       その時、ふ、と私は気がついたのです。
         あなたの瞳の中に映る私の顔・・・
  
      「・・私は、あなたの側にいつもいたいと・・
          そればかりを考えてしまいます。
    その瞳の中に私をいつまでも映してくださいませんか?
       ・・・できることならば・・・。」

    (風はなぜ、吹き抜けてゆくのでしょう・・
          留まることをしらず、いつもいつも)

       その瞬間。 
       私は大きな柔らかな何かに、包まれていたのです。

「リュミエール様。リュミエール様は気づいていらっしゃいますか?  

      どうして私が今日、リュミエール様をお誘いしたのか・・・。」                          

     そこで、ふっとあなたは微笑んで、それから・・・

「お誕生日おめでとうございます、リュミエール様。」               
 

   風は、留まることを知らず・・・
        けれどそれが良いのだと。

「ありがとうございます。」
              私もあなたを包む風になりたいと・・・・

by夕鬼 庚様