ヒカルが熱を出した。
TVのニュースで雨の予報が出ていたにも関わらずヒカルが面倒だと云って傘を持っていかなったせいだ。
佐為とヒカルの母・美津子は自業自得だと思った。
しかし、熱の出たヒカルをそのままにしておけない。
体温を測らせると38度もあった。
目もとろんとして、いつものそうな活発な姿はなかった。
ベットに大人しく寝ているようにヒカルに言って、美津子は学校に連絡を入れる為に
1階へ降りて行った。
ヒカルが熱を出して苦しんでいるのに、佐為は何も出来ない。
実体のない佐為は何も出来ないにも関わらずヒカルの寝ているベットへと近づいた。
「ヒカル」
呼びかけて、佐為が手をヒカルの額へ手を翳すとヒカルがうっすらと目を開けた。
「佐為・・・」
熱で潤んだ瞳でヒカルが佐為を見つめた。
「お前の手、冷たくって気持ち良い。」
いつもなら、佐為の冷たい体が近づくのを嫌がるヒカルだったが
この日は熱が出ている所為か佐為に触れられるのを喜んだ。
佐為とヒカルが常に一緒に行動しているように思われているが、佐為は幽霊なので
ヒカルの真横に佐為が立つとヒカルは背筋がゾックとするものを感じると言って嫌がった。
しかし、熱が出ているせいで体温が上がっていたヒカルは佐為が触れるのを喜んだ。
それが、佐為には嬉しかった。
ヒカルは熱が段々と上がっているらしく、佐為に同じベットに入るように言った。
普段ならベットに佐為が近づくとヒカルが寒がって嫌がる。
だから、佐為はヒカルから離れた位置で寝るようにしていた。
本当なら佐為も現代の寝床であるベットの寝心地を味わってみたかった。
ヒカルの機嫌を損ねて碁を打てなくなるのが嫌で実行出来なかったが、今日は違う。
ヒカルからの許可が出たのだ。
佐為はヒカルと同じベットに入った。
ヒカルは佐為の冷たい体に抱かれるように寝た。
そんなヒカルを見て、心の中で佐為は思った。
(虎次郎が亡くなって私はもう誰にも見えないものだと諦めてました。
しかし、ヒカル。あたなたが現われた。
あなたはその名の通り、私に再び『神への一手』を極めるチャンスをくれたまさに
ヒカリなんです。
私の腕の中にいるあなたは、まさに希望の光。ずっとこのまま時間が止まって欲しい。)
薬とたっぷりの睡眠で元気になったヒカルを見て、
やはりヒカルには前髪のような太陽の下が似合うと感じた佐為だった。
END