水鳴琴の掲示板
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ぷちぷち佐為's「PSY(サイ)」その21
- 真珠
-2004-12-10 14:20:10
削除
ぷちぷち佐為's「PSY(サイ)」
その21
ヒカルは佐為の中の細い階段を上へ上へと上っていった。
”落ちたいと思わなければ落ちませんよ。”
”わかってるって。”
ポーンと階段を蹴ると、まっすぐ上に飛び上がった。
いくらでも飛んでいられる。
”ヒカル、遊んでないで。”
”だって面白いんだもん、お前の中って。”
自由自在に振舞える空間というのは現実に存在しないが、ここではそれが実感できる。
たまらなく楽しく面白い。そして母の腕の中であやされているような安心感と充足感がある。
先を急く佐為をじらすようにグルグル飛び回ったり跳ねたりすると、
佐為の面映くくすぐったがるような波動が心地いい。
心と心の肌擦れ合う温もりや感触は幼子のような無邪気な喜びを沸きあがらせる。
精神が触れ合うことが、こんなに楽しいことだとは知らなくって
ヒカルは夢中で佐為の中を飛び回った。
”あれ?なんだ???”
星々が煌き瞬く中に不釣合いな藁葺きの庵が浮いていた。
”あれが桑原老のいるところですよ。”
いつの間にか目的地に来ていた。
”オレ、もっと遊びたかったのになー。”
むくれるヒカルをさんざめくような佐為の笑いの波動が取り囲んだ。
ひとしきり笑った後に居住まいを正して佐為が話し掛けた。
”桑原老、聞いて欲しいお話があるのですが…”
佐為の丁寧な物言いに、ぞんざいな返事が返って来た。
”ほー。ワシの碁の相手をしてくれるのかのぉ?”
”いえ、今日は違う話で…。”
”ううむ。最近、耳が遠くなってのぉ。よく聞こえんのぉ。”
ふざけた返答にヒカルは思わず怒鳴り返した。
”大事な話に来てんのに!さっさと出て来い!第一、ここは佐為の中だろう!
勝手に住み着いて何言ってんだよ!”
”ほー。なにやら活きのいいのを仕入れてきたのぉ。ふひゃひゃひゃひゃ。面白い、お前だけ来い。”
微笑ましい度の高い困った佐為の感情を感じて、なんとなく面白くないヒカルは足を踏み出した。
”オレ行くよ。”
”えっ?えっ?えっ?でも、ヒカル…?”
佐為の慌てた感情の波が自分に向かうのに満足しながら、ヒカルは宇宙空間の庵の庭石を踏みしめた。
”大丈夫!あんな図々しいじいさん。佐為の中からほっぽり出してやる!”
佐為の返事も待たずに腕まくりして庵の襖を開けるとサルのような風貌の老人が
ニヤニヤと笑いながらヒカルを待ち受けていた。
”げっ!なにコイツ。”
「こりゃ、コイツとはなんじゃ。コイツとは。ワシをなんだと思っておる。」
”佐為の中の居候…。”
「ワシは造物主じゃ。」
”ぞーぶつ?なに、それ?”
「ものを知らん小僧じゃな。つまり、この世の中全てを造り上げた神なのじゃ。」
ポカンとした顔のヒカルが、やがて目尻を下げ堪えられなくなって笑い転げるのを見て
桑原はポカリと持っていた扇子で叩いた。
”なに、すんだよ!クソじじい!!”
「よく聞けぇ!お前は、この間ここと似た場所へ行ったであろう。」
”あ…永夏の中か?”
「人の中には、宇宙がある。お前の中、もちろんワシの中にも。
これをマインドワールドというのじゃ。ここは佐為のマインドワールドじゃ。
そしてその中にワシがいてお前がいて実際に生きているように話たり行動できる。
さらにマインドワールド内は永夏が作り上げたように大地があり草花が咲き風が吹く
そういう空間も造ることが出来る。ワシなんぞ居を構えておる。」
”だからー?”
面白くなさそうに講釈を遮るヒカルに桑原はニヤリと笑いかけた。
「お前達の暮らす世界はワシの造り上げたもの、お前達はワシのマインドワールド内に生きているんじゃ。
ここにいるワシは自分の造った世界を戯れに見るために一部を佐為の中に投影して出来た影のようなものじゃ。
そしてワシがここにいるからこそ佐為は最強なのじゃ。」
胸を反らせる桑原がチラリとヒカルをかえりみると、ヒカルは眠そうに欠伸をしていた。
「お前、ぜんぜん信じておらんな!虎次郎なんぞ涙を流してありがたがっておったのに!」
”虎次郎!知ってんのか、じいさん?!”
「おーおー、知っておるぞ。聞きたいか?」
コクコクとヒカルが頷くと桑原はフンと横を向いた。
「お前なんぞには教えてやらん!」
”なっにー!?ドクソじじい!!”
殴りかかろうとしたヒカルは、ふと行動を止めた。
腕組みをして桑原を眺める。
「な…なんじゃ、小僧?」
桑原の体が逆さに浮かんだ。
「こりゃ!なんてことをするんじゃ!下ろさんか!老人は労わるもんじゃぞ!」
”あー、やっぱり!永夏の中と同じなんだ・・・。”
思う強さが力になり力は相手の思う力を超えると相手に作用する。ドサリと桑原が落ちた。
”なんで佐為は、こんなの飼ってるんだろう?追い出しちゃえばいいのに。
ここにだって佐為も入ろうと思えば入れるんだろう。なんでコイツの好きにさせとくのかなぁ?”
「じゃから言ったであろう!ワシは神なんじゃ。佐為とてワシをどうすることもできんのじゃ!」
バリッ。大きな音と共に庵の屋根が捲れ宇宙空間が見えた。
「小僧、やめんか!ワシの大事な庵じゃぞ!」
”佐為!”
”なんです、ヒカル?”
面白がるような波動が答える。
”なんで、ここにコイツを置いてやってんの?”
しばらく考えるようなふわふわとした思いが漂った。
”そうですねぇ。別に邪魔じゃないですし居たければ居ても良いかなぁと思って…”
広大無辺の宇宙にゴミがひとつあっても小さすぎて気に止めるに値しない。
そんな感触を感じてヒカルは桑原をかえりみた。
”ウソつき!”
慌てて庵の屋根を直すと桑原は再びふんぞり返った。
「ふ…ふん、そう思わせて居座ってしまうのがワシの偉大なところなのじゃ!」
”それの、どこが偉大なんだよ!?もう、いいよ!
なんで佐為はアンタなんかと会う必要があるなんて言ったんだろう。
とんだ無駄足だったぜ。”
「ほー。では、御器曽の後ろ盾についても聞きたくないのかのぉ。」
ヒカルはピタと足を止めた。
”どーせ、わからないくせに!”
「ふふん。さーて、どうかのぉ?ワシは嘘つきの老いぼれじゃしのぉ。
じゃが、なんでお前の知りたがっていることが、それだと知っておるんじゃろうなぁ?
なぜ?佐為はワシに聞きたがっておったのかのぉ?」
桑原の体が天井に張り付いた。
”おじい様、教えて下さい。”
ヒカルは怒りを込めた目で睨みながら桑原をグルグル振り回した。
”うちのじっちゃんだって、そう言うと教えてくれたぜ!”
「ほ…ほう、お前にもじい様がおるのか?嫌な孫を持った気の毒なじじいじゃな。」
その言葉がヒカルの記憶を刺した。
立ち上がる火柱、半狂乱の祖父。確かに嫌な孫、気の毒な祖父かもしれない。
頬に涙が伝いかけたヒカルの頭をくしゃりと撫でる祖父そっくりの手に慌てて顔上げると桑原だった。
解放した覚えはないのに、どうやって降りてきたのか驚くヒカルを座らせると
どこからか茶と菓子を出してきた。
「お前のじい様に免じて話してやるから、よく聞け。
アイツは御器曽の中におる。このワシが佐為の中におるようにな。」
ヒカルの驚いた顔に我が意を得たりと桑原は意地の悪い笑いを浮かべた。
「倒すには御器曽の中に入って戦うしかない。
だが御器曽の器はアヤツと佐為の両方が入れるほどの大きさはない。
佐為が戦うために御器曽に入ろうとすれば御器曽の精神は体ごと弾けるじゃろう。」
”いいじゃん。御器曽って悪いヤツなんだろう。”
「お前は、そう言うが佐為はどうじゃろう?佐為は、それを良しとするかのぉ?
頭の固いヤツじゃからのぉ。それに御器曽が壊れればアヤツは他の人間の中に逃れるじゃろう。
アヤツが逃げ込んだ人間を片っ端から壊していくかな?」
”じゃあ、どーすんだよ。じいさん。”
「じ…じいさん。とことん失礼なガキじゃのぉ。まぁ、いいわ。ワシは寛大じゃからのぉ。
教えてやろう。お前が御器曽に入るんじゃ。お前なら御器曽は壊れん。
そして中で佐為の力を使える。どうじゃ妙案じゃろうが。敬えよ、小僧。」
”ちぇ!神様ぶっちゃってぇ。”
「だがな・・・真に立ちむかわなければならんことは、その後じゃ。
まぁ、とりあえずヤツを倒して虎次郎が封印を解いても良いようにすることじゃな。」
”とりあえず?まだ、なにかあるのか?”
「そうじゃ。封印されたものに答えを出さねばならぬ、時間内にな。
このとおりワシは老いぼれじゃ。ワシが死ねば、この世界も死ぬ。
時間が尽きる前にお前達は全ての答えを出し終局する。
そしてワシは、ここの物語を書に記さねばならん。
ワシの寿命が尽きる前に出来れば、それを読んだ誰かの中にこの世界は移転できる。
出来なければ…」
”あー、はいはい。じゃ、オレ帰るから!”
「こりゃ!小僧!!」
襖の向こうに声が聞こえたが、あえて無視した。
聞きたいことは聞いたし年寄りの妄想にまで付き合ってはいられない。
庵から出ると宇宙空間が明るく輝きだし体が軽く透き通り始めた。
慌てて瞬きするとヒカルは佐為にもたれてイスに座っていた。
実際の時間はほんの数分だったらしい時計は部屋に来た時と変わらない時間をさしている。
”アイツが佐為の中にいるの反対!”
ヒカルは頬を膨らませて佐為に抗議した。
”そうですか?”
佐為が言うと傍らの空間が歪んで桑原が現れた。
”すいませんが、ヒカルが嫌がるので出て下さいね。”
ニッコリ微笑む佐為には後ずさりしながら桑原はヒカルに掴みかかろうとした。
「こりゃ!小僧!!せっかく居心地が良かったのになんてこと言うんじゃ!」
ヒカルは思いっきりアッカンベーをすると佐為の後に逃げ込んだ。
どうも佐為に向かっていくことは避けたいようで桑原は忌々しそうに
舌打ちするとスゴスゴと部屋を出て行った。
”あれ?アイツって体はどうなってたんだ?”
ヒカルが佐為に入ったのは、あくまで精神だけで体は佐為にもたれてイスに座っていた。
それなのに桑原は体ごと佐為の中にいたようだった。
”さぁ?不思議な御仁ですから。”
佐為は気にしていないようだがヒカルは桑原が言った言葉を思い出してひっかかった。
”まさか…あの話は本当…?”
袂の下で佐為が小さく笑った。
”ヒカルは何を言われたんですか?
私には千年前は仇敵で雌雄を決するために戦って勝ったから住み着いたとか、
世の中の出来事は全部自分が書いた書割通りに起こるとか言ってましたよ。”
ヒカルは思わず声をあげた。
”オレには逆のこと言ったぞ!オレ達がやったことを物語に書くとか!”
騙された。
ヒカルが文句の一つも言ってやろうと探すと食堂から桑原の笑いが聞こえてきた。
「ひゃっひゃっひゃっ。青いのぉ。」
前では緒方が赤くなったり青くなったりしている。
どうやら桑原に何か言い負かされたらしい。
緒方にも含むところのあったヒカルは少し溜飲を下げたため桑原を許してやることにした。
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