「さよなら…」

これが彼女の最期の言葉…いや彼の空耳だったのかもしれない

(デートの約束守れなかった)
彼は悔やんでいた、ボディーガードの報酬…
それは今までやったどの仕事のよりも欲しかった報酬なのだから

このように想いにふけるとき彼は夜、それに星の見える平野で寝っころがりながらと決めていた
夏はまだしも、冬はとても寒い所である…当然クラウドのからだは冷える
それを心配してか彼の幼馴染の女性は毎回のように防寒具を届けていた

「クラウド、風邪ひくよ」
「いつもすまないな」
彼は厚手のガウンを受け取った
クラウドが想いにふけるとき、いつも幼馴染は届けにきていた…例えどんなことがあっても
いつもだったらここで幼馴染は帰るはずだった…が
「エアリスのこと考えてたんでしょ?」
「えっ!!!!」
(なんでわかるんだ!?)クラウドの脳は驚きのあまり叫び声を精製した
そしてそれは図星であることの証明となった…彼は昔から隠し事が苦手だった
特に幼馴染には考えていることをいつも悟られていた

「やっぱり…そうなんだ」

「……………」

「エアリスはもう・・戻ってこないの」

「……………」

「だからね…あのねそろそろ私の事…」
「わかってるよ!そんなことわかってるよ!エアリスに二度と会えないことだって!
ティファが自分に目を向けてほしいって思ってることだって!」
(俺、何てこと言ってるんだろう…)
彼はやり場のない気持ちを吐き捨てるように叫び、そしてそれを後悔した
…自分の幼馴染が傷つくことがわかっていたから
「ゴメン…私でしゃばってた」
「ティファが謝ることないさ!…全部俺が悪いんだ…答えてあげられない俺が…」
「そんなことない!誰も悪くなんてないんだよ。クラウドが自分を責めたら…」

…ゴクン

幼馴染はいったんつばを飲み込んで
「クラウドが自分を責めたら…エアリスが悲しむよ…」
(エアリスが悲しむ…俺のために? 君を守れなかった俺なんかのために…)
彼は地面に伏してうつむいた…自らの心の葛藤に耐えきれずに
「すまないが一人にしてくれないか?」
地面に伏した彼の言葉に幼馴染は困惑しながらも首を縦にふり、去った…心配そうに彼を見ながら

「コラコラ、女の子を夜道に一人でいかせちゃダメじゃないの!!」
不意にクラウドは背中に強い衝撃と聞き覚えのある声が聞こえるのを感じた
ふりむくと、そこには…

…エアリスが立っていた

「!!!!!!!!」

「クラウド…お久しぶり」

(夢か?それとも幻か?)
彼は信じることができなかった…彼女は彼の目の前で他界したはずなのだから
「夢なんかじゃない、幻でもないよ…本当はもう会わないつもりだった」
「なんで…なんでだ!?俺はあんたに会いたくて会いたくてたまらなかった…
もう二度と会えないとわかっていても、会いたかった…これからも一緒にいたい、いや!一緒にいよう」
「私も。だけどダメ…あなたはティファと結ばれなければいけないの…私と一緒にいても不幸になるだけ。
古代種と人間が結ばれることは悲劇を生むの、私がそうであったように…」
「神羅は滅びた!宝条だってもういない!」
「歴史は繰り返される…きっと誰かが私を捕らえにくる…クラウドにはもう迷惑をかけたくない」
「そんなの蛇の生殺しじゃないか…俺はあんあたのこと好きなのに、こんな近くにいるのに…なんで…」
彼は泣きふした…やるせない気持ちを抑えきれずに

しならくしてエアリスは泣き止まない彼の肩をさすって、言った
「君に涙は似合わない!まぁ笑顔も似合わないんだけどさ…とにかく!今すぐ笑いなさい」
予想もしない彼女の言葉に彼は戸惑いながらも、真っ赤になった目を擦りながら顔を作った
なんともぎこちないしぐさだったが
「こ、こうか?」
「うーん…30点」
「そうか?60点はカタイと思うんだが」
「まけにまけて45点!修行のやり直し!!」
「修行って言われてもなぁ…」
彼は今まで泣いていたのが嘘のように明るくなっていた…これが彼女の狙いだった
「じゃあエアリス先生が見本を見せてあげる♪一度しかやらないからよーく見るのよ」
(美しい…なんて美しいんだ)
彼は花のような美しい笑顔に息を飲み、見とれていると…

突然青白い光が笑顔の女神を包んだ

「もう行かなきゃ…笑顔忘れないでね、あなたの幼馴染を幸せにしてあげてね…」
「えっ!!」

さよなら…




気が付くと彼は一人横たわっていた
辺りは何事もなかったように平然としている
(夢だったのか?)

今あったことが夢であろうと幻であろうと

「さよなら…」

これは彼女の最後の言葉…いや彼の空耳だったのかもしれない

 

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