〜愛しいと気付く前〜




自分を表現しない人間を、嬉しさや悲しみを表情にしない人間を

冷たい人。そう言うんだ・・・・・・

泣かないからって悲しくないわけじゃない。笑わないけれどそれなりに楽しいと思うときもあった・・・

どうしてだろうな・・




よくわからない人の心理。

それを読めない自分の無知な感情。



















「はぁ〜」
クラウドは宿屋の2階で誰にも気付くとのない溜息をついた。

頭にたまるドロドロのストレス。
他人との接触が多いグループ行動。・・・・疲れる。

もやもやした感情の渦の中。振りまわされて傷つけられて。捨てられて・・・

ちょっとした他人の態度。その時の表情。どうしてそんなに気遣う必要があるのか俺はわからない。




『コンコン』

返事をするのが面倒だ・・そう感じたのに

「なんだ」

ドアの前で達人の事を思い返事をする俺・・。。

「だーれだ?」
「エアリス」

・・・・今回のグループは確かバレットとヴィンセントのはず・・・・
なんでエアリスがここにいるんだ?

「へへへ。」
エアリスが悪戯がばれた子供の表情で入ってきた。
「あんたなんでここにいるんだよ」
茶色い椅子にこしかけたままクラウドが話す。
「ん?幽体離脱?ってやつで」
「冗談を聞きたくて質問した事じゃない」
「そう?実際そうかもよ」
エアリスがころころ笑う。
「で?本当は」
「もう!シドとレッド13と皆で打ち合わせするってこの宿に。そしたらクラウドたちもいたというわけ。よろしい?」
「けっこうだ」
そう答えただけなのに。
彼女はまたコロコロ笑う。なぜだろう。

さっきだってそうだ。
冷たい態度で・・・感情のない態度でいっても彼女はその冷たい言葉を暖かな態度で返してくれるんだ。

冷たい雪を投げつける俺に。エアリスは何時も暖かい態度で話してくれるんだ・・・・・




「あんたって脳天気だって言われない?」

皮肉口。

「人間前向きが肝心よ」
「どうだか」

またくすくすころころ。

「クラウド」

彼女から話しかけるのはおしゃべりなくせにあまりない。
ほとんどの彼女の話しかけはさっきみたいな単語の小さな集まりで終る。

「ソルジャーってどういう事をするの」

最初は彼女の興味心だと思った。

「いろいろ。」
「いろいろ?」

少し脅かすつもり

「殺しもする。調査も。偵察も。暗殺も。戦争も。全部だ」
「・・・・・クラウドも・・した?」






















あぁたくさん殺した



















「・・・・・・・・」
「後悔してる?」
「あぁ」






















少しの興味心。彼女のそれが俺の感情をずぶずぶと傷つける。
だから・・仕返しのつもりだった。

「で?古代種はどんな事をするんだ?」










「・・・・・・・えっ」

「ん?」

「よくわからないわ。 お母さんがよくいっていた言葉の意味もわからない。 けど皆が幸せにあるならなんでもしなくちゃいけないのが私の仕事なのかな・・」

「ふ〜ん」

その時の少し寂しそうな嬉しそうな。誇りを持ったような微笑。

今彼女はどんな気持ちか。こんな複雑な表情を理解する力を自分は持ち合わせていなかった。

「あっ私もう自分の部屋いくね」

だからさっきまで楽しそうに笑っていた彼女が自分の部屋をいきなり出ていった理由も知る術を知らなかった。

気付くべきところに。気付かなくてはいけない大切な時に。

彼女がいつも苦笑いをする癖を持っている事を、長い間。供に旅をしてきたのに。俺は知らなかった。

『バタン』



















それから5分













「クラウどさん。晩飯だ。」
バレットが飯の知らせに来て、下に降りていった。
エアリスにその事を伝えようとドアを空けた

「エアリス。」

「・・ひゃい」

情けない返事だ。
「おい。えありすめしだって・・・・・!!」




泣いてたんだ。




誰のせいといわれれば俺が名を挙げなくてはいけないだろう。




「見られちゃった。」




「・・・・」

泣いている女をどうするかだなんて知るわけがなかった。

また笑おうとするエアリス。無理にするその微笑がとても切なかった。
どういう理由で泣いているのか。自分はその心理を知る術を知らない。




でもどうしたんだ?と聞くほうがとても無情な行動のように思えて。




そっと。うずくまってこちらに無理な微笑を与えているエアリスの頭を優しく抑えて撫でてあげた。
そうすると
エアリスは顔を腕の中にうずくめて小さく「ありがとう」といっていた。

























どうしてだろうな。

あんたは俺以上に人の醜さを知っているはずなのに。

自分が泣いている時でさえ。相手に言葉を与えるんだろうな。




俺以上に聞かれたくない過去を持っていて。独りが楽な事も。寂しい事も

人が我が侭な事も

あんたは俺以上に知っているはずだ。

どうして頑張るんだろうな・・・・・・






















「少し無理しちゃった」
「かなりだな」

「へへへ」




エアリスがしゃがみこんだ俺の服のすそをつかんだ

「クラウド・・・大好き」

彼女の一度の甘え。



















「エアリス?」













「スー――」










寝てるのか・・・・・

























クラウドはしゃがみこんだまま頭を掻いた。




「今日は飯が食えないな・・・」

そういって自分の裾を掴んだまま泣き疲れたエアリスの髪にキスをした。


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切ないです…すごく切ないです。冷たい雪を暖かく受け止める…なんて素晴らしい表現なんでしょう
風の管理人さん、素晴らしい小説をどうもありがとうございました。

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