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前相対論の物理の時空


相対論は、空間と時間の理論に深く結合している。それゆえ、私は空間と時間の始まりの短い考察から始めよう、 そうするとき、反論のある主題を持ち出していることを知っているのであるが。全ての科学の目的は、自然科学であれ、 心理学であれ、我々の経験を調和させ、それらを論理的なシステムへ持ち込むことである。 どのように我々の慣れた概念である空間と時間が、我々の経験の特性に関係するのだろうか?

個人の経験は、事象の系列のなかに配置されて我々に姿を現わす; この系列のなかで我々の記憶する単独の事象は、"以前"と"以後"と の判定規準に従って順序付けられて現れ、そして、それらは、それ以上分析できない。それゆえ、その個人にとって私-時間、又は 主観的時間が存在する。これは、それ自身、計測できないものである。確かに、私は、後の事象に前の事象より大きな数を付けるように 事象に数を添えることができる;しかし、この添付の性質として、全く任意であり得る。時計を手段として事象の順序を比較して、 私が定義できるこの添付は、与えられた事象の系列の順序を時計によって供給される。我々は、時計によって何かを理解するが、 それは数えられる事象の系列を用意し、後述する他の特性をもつのである。

言語の助けによって異なる個人は、ある程度、彼らの経験を比較することができる。そのとき、異なる個人のある感覚の知覚は、 互いに対応している一方、他の感覚の知覚は、そのような対応が確立できないことを見出す。我々は、異なる個人に共通のそれらの 感覚知覚を現実とみなし、それゆえ、ある尺度で、非個人的とすることが習慣付けられている。自然科学、そして、それらの最も 基本的な物理は、それらの感覚知覚を扱う。物理的な物体の概念、特に剛体は、相対的にそのような感覚知覚の一定の複合体である。 時計は同じ意味で、また物体であり系であるが、それが数える事象の系列が、その全てが等しいと見なし得る要素(訳注:時間間隔) によって形成されているという追加的特性をもつ。


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我々の概念と概念系の唯一の正当性は、それらが我々の経験の複合体の再現を助けることである;これを越えてそれらは、何らの合法性 をも持たない。そこではそれらは我々の制御のもとにあった、経験主義の領域からのある基本的概念を、先験性 の漠然とした高 みに消し去ることによって、哲学者達は科学的思想の進展に有害な影響をもってきたということを私は確信する。なぜなら、もしも、 概念の宇宙は、経験から論理的な手段によって演繹できず、ある意味、それなしにどんな科学も不可能である、人間精神の創造として 現れるべきものであってさえも、それにも関わらず、概念の宇宙は、我々の経験の性質からほとんど独立してあり得ないことは、人間 の肉体の形態から衣服がそうであるのと同じである。このことが特別に正しいのは、我々の時空の概念においてである。それらを調整して 奉仕性の状態に置くために、物理学者は、先験性のオリンポスの丘から、事実をもって引きずり降ろさざるを得なかったのである。

我々はいま、我々の空間の概念と判定に立ち来る。経験と我々の概念との関係に厳しい注意を払うことは、ここでまた不可欠である。 Poincaré は、彼の本、"科学と仮説(La Science et l'Hypothese)" に与える言及のなかで、明確に真実を認識していたと私には思える。 剛体に我々が知覚できる全ての変化のなかで、我々の体の自発的運動によって打ち消し得るものは、それらの単純さによって印される; Poincaré は、これらを位置の変化と呼ぶ。単純な位置の変化によって我々はふたつの物体を接触させることができる。幾何学に基本的な、 合同の定理は、位置のそのような変化を支配する法則をとり扱わなければならない。空間の概念にとって次のことは本質的にみえる。 物体 B, C, ... を A まで持ってくることによって、我々は、新しい物体を形成できる;それを我々は、物体 A を延長するという。 そうして物体 A を延長し我々は、ついに何か他の物体 X まで接触するようになる。全ての物体 A の延長の全体を "物体 A の空間" と呼ぶ ことができる。そのとき、全ての物体は、"(任意に選んだ)物体 A の空間" のなかにあることは正しい。この意味で、我々は抽象のなかに 空間をいうことはできず、"物体 A に所属する空間" だけをいうことができる。地球の地殻は、我々の毎日の生活において物体の相対的な 位置を判定することにおいて、非常に支配的な役割を果たしているために、確かに弁護できない空間の抽象的な概念を導いた。 この致命的な誤りから我々自身を解放するために "参照物体" 又は "参照空間" だけについていうべきである。 これらの概念の洗練は、一般相対論を通してだけ必要となることを、我々は後に見る。


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空間要素としての点の概念と、連続体としての空間とを導く、参照空間のそれらの特性に関して、これ以上、詳細に私は立ち入らない。 また私は、連続した点の系列、又は線の概念、を正当化する空間の諸特性の、さらなる分析を試みることもしない。 もしも、これらの概念が仮定され、それらが経験のなかの固体との関連をもっているならば、そのとき、我々が空間の 3 次元性に よって意味するものをいうことが容易である; 各点に対して 3 つの数、$x_1, x_2, x_3$ (座標値)を添えて、この添付が往復的に 一意であるように、そして、点が連続的な点系列 (線)を描くとき、$x_1, x_2, x_3$ が連続的に変化するようにすることができる。

前相対論の物理では理想的剛体の構成法則は Euclid 幾何に整合しているということが仮定されている。これが何を意味するかは、 次のように表現できる:剛体上に印された 2 点は、間隔を形成する。そのような間隔は、我々の参照空間に相対的に静止 にさせることが多種多様な方法によって可能である。もしいま、この空間の点が、座標値 $x_1, x_2, x_3$ であるといえ、その間隔 の 2 端の座標値の差、$Δx_1, Δx_2, Δx_3$ が間隔のどの方向においても同じ次の 2 乗和を与えるなら、 \[ s^2 = Δx_1^2 + Δx_2^2 + Δx_3^2 \tag{1} \] そのとき、参照空間は、ユークリッド的 (Euclidean) であり、座標値は、デカルト的 (Cartesian) という(*)。この仮定を無限小の 間隔に制限しておけば、実際には十分である。この仮定に含まれているものには、むしろ特別でないために、それらの基本的な重要性 のために我々が注意をしなくてはならないものがある。最初に、理想的な剛体が任意の仕方で動かし得ると仮定されている。第2番目に、 理想剛体の方向に対する行動は物体の素材や、位置の変化に独立であることが仮定されている。それは、ふたつの間隔が一度一致すれば、 それらはつねに、どこにおいても一致するという意味においてである。これら両仮定は、幾何学において、とくに物理測定において 基本的重要性をもち、経験から自然に起きる; 一般相対論において、それらの有効性は、天文学的大きさと比較して無限に小さい 参照空間と物体だけにおいて仮定される必要がある。

(*)この関係は、間隔の原点と方向(比、$Δx_1: Δx_2: Δx_3$) の任意の選択において成立しなければならない。


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量 $s$ を間隔の長さと呼ぶ。これが一意に決定されるために確定的な間隔の長さを任意に固定する必要がある;例えば、我々はそれを 1(単位長)に等しいとすることができる。そのとき、全ての他の間隔の長さは決定されるだろう。もし、我々が $x_ν$ をパラメタ$λ$に 線形に依存するとするなら、 \[ x_ν= a_ν + λ b_ν \] 我々は、ユークリッド幾何の直線の全ての特性をもつ線を得る。特に、直線上に間隔 $s$ を $n$ 回置くことによって長さ $n・s$ の間隔を得る ということが容易に出る。長さは、それゆえ、直線に沿って単位測定棒を手段として実行する測定の結果を意味する。後に明らかになるように、 長さは、直線のそのように、座標系に独立であるという重要性をもつのである。

我々はいま、特殊相対論と一般相対論のなかで類似の役割を果たす、一連の思考に来りくる。我々は問う:我々が使ったデカルト座標 以外に、他の等価な座標はあるだろうか? 間隔は、座標系の選択から独立である物理的な意味をもつ; そして、我々の参照空間の 任意の点から敷かれた、全ての等しい間隔の終点の軌跡として、我々が得る、球状の表面も同様である。もし、$x_ν$ と $x'_ν$ ($ν$は 1 から 3) を我々の参照空間のデカルト座標とするなら、そのとき、その球状表面は、我々のふたつの座標系のなかで次式によって表される。 \[ ΣΔx_ν^2 = 一定 \tag{2} \] \[ ΣΔ{x'}_ν^2 = 一定 \tag{2a} \] (2)と(2a)が互いに等価であるために、どのように $x'_ν$が $x_ν$ によって表されなければならないか? $x_ν $の関数として表された $x'_ν$ に関し、$Δx_ν$の微小値への Taylor の定理によって、我々は次を書くことができる。 \[ Δx'_ν= Σ_α {∂x'_ν \over ∂x_α} Δx_α + {1 \over 2} Σ_{αβ} {∂^2 x'_ν \over ∂x_α∂x_β} Δx_αΔx_β ... \] もし、我々が (2a) をこの式で置き換え、(1)と比べるなら、x'_ν が x_ν の線形関数でなければならないことを見る。 もし、それゆえ、 我々が次を置けば、


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\[ x'_ν = α_ν + Σ_α b_{να} x_α \tag{3} \]

又は、 \[ Δx'_ν = Σ_α b_{να} Δx_α \tag{3a} \] そのとき、方程式 (2) と (2a) の等価性は、次式で表される。 \[ ΣΔ{x'}_ν^2 = λΣΔx_ν^2 (λは、Δx_νから独立) \tag{2b} \] それゆえ、$λ$が定数でなければならないことが出る。もし、我々が $λ= 1$ と置けば、(2b) と(3a) は、次の条件を与える。 \[ Σ_ν b_{να} b_{νβ}= δ_{αβ} \tag{4} \] ここで、$α=β$ 又は $α≠β$ に従って$δ_{αβ}=1 $又は $0$ である。条件 (4) を直交性の条件、変換 (3), (4) を線形直交変換と呼ぶ。 もし、我々が $s^2 = ΣΔx_ν^2$ が、全ての座標系で長さの自乗に等しくあるべきと規定するなら、そしてもし、我々がつねに同じ 単位の物差しをもって測るならば、そのとき、$λ$は、$1$ でなければならない。それゆえ、我々の参照空間のなかで、ひとつのデカルト 座標系から他へ、それによって渡すことのできる線形直交変換は、唯一である。我々は、そのような変換を適用するなかで、直線の式 が直線の式になることを見る。(3a) を逆転して、両辺に $b_{νβ}$ を掛け、全ての$ν'$ によって総和すると、我々は次を得る。 \[ Σ b_{νβ} Δx'_ν = Σ_{να} b_{να} b_{νβ} Δx_α = Σ_α δ_{αβ} Δx_α = Δx_β \tag{5} \] 同じ係数 $b$ は、また逆の$Δx_ν$の置き換えを決定する。幾何学的に $b_{να}$ は、$x'_ν$ 軸 と $x_α$ 軸間の角の余弦である。


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まとめとして、我々がいえるのは次である、ユークリッド幾何学のなかに(与えられた参照空間には)、優先座標系デカルト系があり、 それらは、互いに線形直交変換によって変換する。我々の参照空間の2点間の距離は、測定棒によって測定され、そのような座標では、 特に単純な仕方で表される。幾何学の全体は、この距離の概念の上に打ち立て得るものである。現在の扱いでは、幾何学は実際の物事 (剛体)に関係していて、その定理はこれらの物事の行動に関係する言明であり、それらは、真又は偽を証明することができる。

人は普通、幾何学をその概念と経験の間のどのような関係からも分離していると学ぶことが習慣付けられている。純粋に論理的であって、 原理的に不完全である経験主義から独立であるものを切り離すことには利点がある。これは、純粋な数学者の満足である。 彼は、公理から彼の定理を正しく、すなわち、論理的な誤りなしに演繹できるならば満足する。 ユークリッド幾何学が真であるか否かという問いは、彼の関心にない。しかし、我々の目的のためには、幾何学の基本的概念を自然の 対象に関連させることが必要である; そのような関連なしには幾何学は物理学者にとって無価値である。物理学者にとって、幾何学の 定理が真であるか否かについての問いに関心がある。この視点からユークリッド幾何学が定義から論理的に導かれた単なる演繹を超える 何かを断言することは、次の単純な考察から見られるであろう。

空間の $n$ 点の間には、$n(n-1)/2$ の距離 $s_{μν}$がある。これらと、$3n$ の座標値との間には我々は次の関係をもつ。 \[ s_{μν}^2 = (x_{1(μ)} - x_{1(ν)})^2 + (x_{2(μ)} - x_{2(ν)})^2 + ... \] これら、$n(n-1)/2$ の方程式から $3n$ の座標値が消去されてよい、そしてこの消去から $s_{μν}$には少なくとも $n(n-1)/2 - 3n$ の方程式 が残るであろう(*)。一方、$s_{μν}$ は、測定できる量である。そして定義から互いに独立である。これらの $s_{μν}$ の間の関係は、 必ずしも先験的 である必要がない。

(*) 実際には $n(n-1)/2 - 3n + 6$ の方程式がある。


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前述から(3), (4) の変換式は、ひとつのデカルト座標系から他への変換を支配することにおいて、ユークリッド幾何学において基本的な 重要性をもつことは明らかである。デカルト座標系は、それらのなかに2点間の測定できる距離 $s$ が次式によって表現できるという特性に よって特徴付けられる。 \[ s^2 = ΣΔx_ν^2 \] もし、$K_{(x_ν)}$ と $K'_{(x_ν)}$ がふたつのデカルト座標系であるなら、そのとき、 \[ ΣΔx_ν^2 = ΣΔ{x'}_ν^2 \] 右辺は、線形直交変換の式のために左辺と恒等的に一致する。右辺は、左辺の $x_ν$ を $x'_ν$ に入換えただけが異なる。これは、$ΣΔx_ν^2$ が線形直交変換に関して不変量であるという言明によって表現される。ユークリッド幾何にある、そのような、全てのそのような量は、 明らかに客観的な重要性をもち、線形直交変換に関する不変量によって表すことができたように、デカルト座標系の特定の選択に独立である。 これが、不変量の形式を支配する法則を扱わなくてはならない不変量の理論が、解析幾何学において重要である理由である。

幾何学的不変量の2番目の例として体積を考えよう。これは、次で表現される。 \[ V= ∫∫∫ dx_1 dx_2 dx_3 \] Jacobi の定理を使って我々は、次の式に書くことができる。


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\[ ∫∫∫ dx'_1 dx'_2 dx'_3 = ∫∫∫ {∂(x'_1, x'_2, x'_3) \over ∂(x_1, x_2, x_3) } dx_1 dx_2 dx_3 \] ここで、最後の積分の被積分は、$x'_ν$ の $x_ν$ に対する関数的な行列式であり、これは (3) によって、置き換えるする係数、$b_{να}$ の行列式 $|b_{μν}|$ と等しい。式(4)から、もし、$δ_{μα}$ の行列式を形成するなら、行列式の乗算定理によって、 \[ 1= |δ_{αβ}|= |Σ_ν b_{να} b_{νβ}|= |b_{μν}|^2 ; |b_{μν}|= ±1 \tag{6} \]

もし、我々が自ら制限し、それらの変換を行列式 + 1 をもつ(*)(座標系の連続的な変化からくるものだけ)とすれば、そのとき V は不変量である。

不変量は、しかしながら、デカルト座標の特定選択に独立に我々が与え得る唯一の形式ではない。ベクトルとテンソルは、他の表示形式である。 現在の座標値 x をもつ点が、直線上にあることを次式で表示しよう。 \[ x_ν - A_ν= λ B_ν (ν= 1..3) \] 一般性を制限することなく、我々は次を置くことができる。 \[ Σ B_ν^2 = 1 \]

(*) このように、 "右手系" と "左手系" と呼ぶ 2 種のデカルト座標がある。これらの間の違いは、全ての物理学者と工学者に知られている。 これら 2 種の系は、幾何学的に定義できず、それらの間の対比だけであることに注意することは興味深い。


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もし、我々が式に $b_{βν}$ ((3a)と(5)を比較して)を掛け、全ての$ν$に総和すれば、次を得る。 \[ x'_β - A'_β = λ B'_β \] ここで、我々は、次を置いた。 \[ B'_β= Σ_ν b_{βν} B_ν ; A'_β= Σ_ν b_{βν} A_ν \] これらは、第2番目のデカルト座標系 $K'$ に関する直線の方程式である。それらは、元の座標系に関する方程式と同じ形式をもつ。 直線は、それゆえ、座標系に独立な意味をもつことが明らかである。形式的に、これは、量 $(x_ν - A_ν) - λB_ν$ が間隔の成分$Δx_ν$ と同様に変換されることによる。3つの量の組は、どのデカルト座標系にも定義され、間隔の成分と同様に変換され、ベクトルと呼ばれる。 もし、ひとつのデカルト座標系でベクトルの3成分が消滅すれば、全ての系で消滅する。なぜなら、変換の式が斉次であるからである。 我々は、このように幾何学的表現の言及なしに、ベクトルの概念の意味を得ることができる。直線の式のこの行動は、直線の式が線形 直交変換に関して共変であると表現できる。

我々はいま、テンソルの概念を導く幾何学的実体があることを短く示す。$P_0$ を2次の表面の中心、$P$ を表面の任意の点、$ξ_ν$ を座標軸上 への間隔 $P_0P$ の投影とする。そのとき、表面の方程式は、 \[ Σ a_{μν} ξ_μ ξ_ν = 1 \] このなかで類似の場合も、我々は総和の記号を省略し、2度現れる添字について総和を実行すると理解する。 我々はそうして、表面の式を次のように書く。 \[ a_{μν} ξ_μ ξ_ν = 1 \] 量 $a_{μν}$ は、選択されたデカルト座標系に関して、与えられた中心位置について、表面を完全に決定する。 線形直交変換の$ξ_ν$への変換の知られた法則 (3a) から、我々は、容易に $a_{μν}$ の変換法則を見出す(*):

(*) 式 $a'_{μν} ξ'_μ ξ'_ν= 1 $は、(5)によって $a'_{στ} b_{μσ} b_{ντ} ξ_σ ξ_τ = 1$ に置換でき、それからすぐに結果が出る。


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\[ a'_{μν}= b_{σμ} b_{τν} a_{μν} \] この変換は斉次であり、$a_{μν}$ について1次である。この変換のために、$a_{μν}$ を 2 階 (2重の添字をもつから) のテンソルの成分と呼ぶ。 もし、テンソルの全ての成分 $a_{μν}$ がどれかのデカルト座標系について消滅するならば、それらは、他の全てのデカルト座標系に関しても 消滅する。2次の表面の形と位置は、このテンソル (a) によって記述される。

より高階(添字の数)のテンソルも解析的に定義できる。ベクトルを階数1のテンソルとみなし、不変量(スカラー)を階数0のテンソルとみなす ことは、可能であり、かつ利点がある。この点に関して、不変量の理論の問題は、次のように定式化され得る:どのような法則に従って 与えられたテンソルから新しいテンソルを形成することができるか? 我々は、後にこれらの法則を適用できるようにするために、これらの 法則をいま考察する。最初にテンソルの特性、線形直交変換によって同じ参照空間のなかでひとつのデカルト系から他への変換に関する特性 について扱う。法則は次元数から全体として独立であるから、我々はこの数を $n$ として残し、最初には不確定とする。

定義 もし、ある対象が $n$ 次元参照空間のなかのすべてのデカルト座標系に関して $n^α$ の数の $A_{μνρ}$... ($α$は添字の数) によって 定義されるなら、これらの数は、α階のテンソルの成分である。ただし、変換法則が次式であるなら。 \[ A'_{μ'ν'ρ'...} = b_{μ'μ} b_{ν'ν} b_{ρ'ρ} .... A_{μνρ...} \tag{7} \] 注意 この定義から次が出る。もし、(B),(C),(D) がベクトルであるとき、 \[ A_{μνρ...} B_μ C_ν D_ρ... \tag{8} \] は、不変量である。逆に、任意選択のベクトル(B), (C) に式(8)が不変量を導くことを知るなら、(A)のテンソル性が推定できる。


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加減算 同じ階数のテンソルの対応成分の加減算によって等しい階数のテンソルが得られる: \[ A_{μνρ...} ± B_{μνρ...} = C_{μνρ...} \tag{9} \] 証明は、上に与えられたテンソルの定義から出てくる。

乗算 階数$α$のテンソルと階数$β$のテンソルから、階数$α+β$のテンソルを得ることができる。最初のテンソルの全ての成分に 第2番目のテンソルの全ての成分を掛けることによって: \[ T_{μνρ... αβγ...} = A_{μνρ...} B_{αβγ... } \tag{10} \] 縮約 階数$α- 2$のテンソルを階数$α$のテンソルから、ふたつの確定した添字を互いに等しく置き、そしてこの単独の添字について総和する。 \[ T_{ρ...} = A_{μμρ...} (= Σ_μ A_{μμρ...}) \tag{11} \] 証明は、 \[ A'_{μμρ...} = b_{μα} b_{μβ} b_{ργ...} A_{αβγ...} = δ_{αβ} b_{ργ...} A_{αβγ...} = b_{ργ...} A_{ααγ...} \]


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これらの要素的演算ルールに加えて、微分("Erweiterung")によるテンソルの形成がある。 \[ T_{μνρ...α}= {∂A_{μνρ...} \over ∂x_α} \tag{12} \] 線形直交変換に関して新しいテンソルがテンソルからこれらの演算ルールに従って作られる。

テンソルの対称特性 テンソルは、それらの添字のうちふたつ $μ, ν$ に関して、$μ, ν$を交換した結果の両成分が互いに 等しいとき対称、等しく反対符号のとき、反対称(訳注:skew-symmetry "斜対称"は、"反対称"と意訳する) と呼ばれる。

対称状態: $A_{μνρ}= A_{νμρ}$
反対称状態: $A_{μνρ}= -A_{νμρ}$

定理 対称又は反対称の特性は、座標選択から独立であり、そこに重要性がある。その証明は、テンソル定義の式からくる。

特別テンソル I. 量、$δ_{ρσ}$ (4) は、テンソル成分である(基本テンソル)。

証明 もし、変換の式 $A'_{μν}= b_{μα} b_{νβ} A_{αβ}$ の右辺で、我々が $A_{αβ}$ を、量 $δ_{αβ}$ (それは、$α=β,α≠β$ に従い$1, 0$) に置き換えれば、我々は次を得る。 \[ A'_{μν}= b_{μα} b_{να} = δ_{μν} \]


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最後の等式記号の正当性は、(4)を逆置き換え(5)に適用すれば、明白になる。

II. 全ての添字対に関して反対称テンソル($δ_{μνρ...}$)であって、次元数 $n$ に等しい階数をもち、その成分が $+1$ 又は $-1$ であり、 それが$μνρ... $ が $123...$ の偶奇の置換に従うものがある。

証明は、上で $|b_{ρσ}|= 1$ を証明した定理の助けによって出る。

これら、数少ない単純な定理は、不変量の理論から前相対論の物理と特殊相対論の方程式を築くための装置を形成する。

我々は、前相対論物理のなかで、空間中の関係を指定するために、参照物体又は参照空間、そして、それに加えてデカルト座標系が 必要であることを見た。デカルト座標系を、それぞれが単位長をもつ棒によって形成された立方体的な枠組と考えることによって、 我々はこれらの概念の両者を融合してひとつにすることができる。この枠組の格子点の座標値は整数である。基本的な関係、 \[ s^2= Δx_1^2 + Δx_2^2 + Δx_3^2 \tag{13} \] から、そのような空間格子の構成員は、全て単位長であることが出てくる。時間のなかの関係を指定するために我々は、標準時計を加え、 デカルト座標系の又は参照座標系の、いわば、原点の位置に置くことを必要とする。もし、事象がどの場所で実行されても、その事象と 同時である原点にある時計の時間を指定すればすぐさまに、我々は、それに 3 つの座標値 $x_ν$ と時間 $t$ を割り当てることができる。 それゆえ、我々は、以前には個人のふたつの経験の同時性だけに関係していたのであるが、遠方の事象の同時性の言明に客観的意味を (仮想的には) 与えることができる、そのように指定された時間は、我々の参照空間のなかの座標系の位置に全く独立であり、それゆえ、 変換(3)に関して不変量である。

前相対論の物理の法則を表す方程式系は、ユークリッド幾何学の関係をもつと同様に、変換(3)に関して共変であると仮定される。 空間の等方性と一様性は、この方法で表される(*)。 我々はいま、より重要な物理の方程式のいくつかを、この視点から考察する。

(*)物理法則は、空間のなかに特別な方向が存在する場合でさえも、変換 (3) に関して共変であるような方法で表現することができるが、 このような表現は、この場合には適していないだろう。空間に特別な方向が存在する場合は、この方向に関して確定的な方法で座標系を 向けることが、自然現象の記述を単純化するだろう。しかし、もし他方、空間に唯一の方向がない場合、異なった方向に向けられた座標系 の等価性を隠すような方法で自然法則を定式化することは論理的でない。我々はこの視点に、特殊と一般の相対性の理論のなかで、再び 出会うだろう。


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物質粒子の運動方程式は、 \[ m {d^2x_ν \over dt^2 }= X_ν \tag{14} \]

($dx_ν$)はベクトルであり; $dt$、そしてそれゆえ、$1/dt$ もまた不変量である; こうして、($dx_ν/dt$) はベクトルである; 同じ方法で ($d^2x_ν/dt^2$) がベクトルであることを示すことができる。一般に、時間に関する微分操作は、テンソル特性を変えない。一方、$m$ は 不変量(階数0のテンソル)であり、 $m ({d^2x_ν \over dt^2}) $ は、ベクトル、又は、階数 1 のテンソルである(テンソルの乗算の定理によって)。 もし、力 ($X_ν$) がベクトル特性をもつなら、同じことが差分、($m ({d^2x_ν \over dt^2}) - X_ν$) についても成立する。これらの運動方程式は、 それゆえ、参照空間のなかの全ての他のデカルト座標系においても有効である。力が保存される場所の場合、我々は ($X_ν$) のベクトル 特性を容易に認識できる。なぜなら、ポテンシャルエネルギー$Φ$が存在し、それが粒子相互の距離だけに依存する、そしてそれゆえ不変量である。 力のベクトル特性、$X_ν= -{∂Φ \over ∂x_ν}$ は、そのとき、階数 0 の微分についての一般的な定理の帰結である。

1階のテンソル、速度を乗算して、次のテンソル方程式を得る。 \[ m ({d^2x_ν \over dt^2}) - X_ν {dx_μ \over dt} = 0 \] 縮約とスカラー $dt$ による乗算によって、我々は運動エネルギーの方程式を得る。 \[ d({mq^2 \over 2}) = X_ν dx_ν \] もし、$ξ_ν$を質点と空間に固定された点の座標の差とすれば、そのとき、$ξ_ν$は、ベクトルの特性をもつ。 我々は、明らかに ${d^2x_μ \over dt^2 } ={d^2 ξ_ν \over dt^2}$ をもつ、粒子の運動方程式が次式に書けるように。 \[ m ({d^2ξ_ν \over dt^2}) - X_ν = 0 \] この式を$ξ_μ$で乗算して、次のテンソル方程式を得る。 \[ (m ({d^2ξ_ν \over dt^2}) - X_ν) ξ_μ = 0 \] 左辺のテンソルの縮約をとり、時間平均をとれば我々はビリアル(virial)の定理を得るが、それについてさらに考察はしない。添字の 交換をして続く引算をして、我々は、単純な変換をして、モーメントの定理 (訳注:角運動量の時間微分が力のモーメント) を得る。 \[ {d \over dt} [m (ξ_μ {dξ_ν \over dt} - ξ_ν {dξ_μ \over dt})] = ξ_μ X_ν - ξ_ν X_μ \tag{15} \]


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この方法で、ベクトルのモーメントがベクトルではなく、テンソルであることが明らかである。それらの反対称性のために、この系には 9 つ でなくただ 3 つの独立方程式しかない。3 次元空間の 2 階の反対称テンソルをベクトルに置き換える可能性は、ベクトル形成の次式による。 \[ A_μ= {1 \over 2} A_{στ} δ_{στμ}. \] もし我々が、2 階の反対称テンソルに、上に導入された特別な反対称テンソル$δ$を掛け、そして 2 度縮約すれば、その成分がテンソルの成分と 数値的に等しいベクトルが結果する。これらは、いわゆる軸性ベクトルであり、右手系から左手系への変換において $Δx_ν$ と違う変換をする。 3 次元空間で 2 階の反対称テンソルをベクトルとみなすことは、絵のような美しい利点があるが、対応する量の正確な性質を再現しない。 そのため、それをテンソルと考えるほうがよい。

我々は次に、連続媒体の運動方程式を考察する。$ρ$を密度、$u_ν$ を座標と時間の関数とみる速度の成分、$X_ν$ を単位質量あたりの体積力、 $p_{νσ}$ を $x_ν$ 増加方向の$σ$軸に垂直な表面上の歪力とする。そのとき、領域の運動方程式は、ニュートンの法則から、 \[ ρ {du_ν \over dt}= - {∂p_νσ \over ∂x_σ} + ρX_ν \] ここで、${du_ν \over dt}$ は、座標 $x_ν$をもつ時刻 $t$ の粒子の加速度である。もし、この加速を偏微分係数で表現するなら、我々は$ρ$で割って次を得る。 \[ {∂u_ν \over ∂t} + {∂u_ν \over ∂x_σ} u_σ = - {1 \over ρ} {∂p_νσ \over ∂x_σ} + X_ν \tag{16} \] 我々は、この方程式がデカルト座標系の特別な選択によらずに成立することを示さなくてはならない。($u_ν$) は、ベクトルであり、それゆえ、 ${∂u_ν \over ∂t}$ もベクトルである。${∂u_ν \over ∂x_σ}$ は、2階のテンソル、${∂u_ν \over ∂x_σ} u_τ $は、3階のテンソルである。左辺の第2項は添字$σ,τ$ の縮約からの結果である。右辺の第2項のベクトル特性は明らかである。右辺第1項も、やはりベクトルであるためには、$p_{νσ}$がテンソルの必要がある。 そのとき、微分と縮約によって ${∂p_{νσ} \over ∂x_σ}$ が結果する。そして、それゆえ、ベクトルである。それはまた、スカラーの逆数 ${1 \over ρ}$の乗算の後に おいても同じである。その $p_{νσ}$ は、テンソルである。そして、それゆえ、次の式に従って、変換する。 \[ p'_{μν}= b_{μα} b_{νβ} p_{αβ} \] は、この式を無限小の4面体で積分するメカニズムで証明される。$p_{νσ}= p_{σν}$ それゆえ、歪テンソルが対称テンソルであることは、 モーメントの定理を無限小の平行6面体に適用することによって証明される。以上述べたことから、上で与えたルールの助けによって、 その方程式が空間のなかの直交変換(回転変換)に関して共変であり; そして、その式が共変であるためには、式のなかの量がそれに従う ルールも変換されなくてはならないことも明らかになる。


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連続の方程式の共変性、 \[ {∂ρ \over ∂t} + {∂(ρ u_ν) \over ∂x_ν}= 0 \tag{17} \] は、前述のことから、取り立てての議論は、必要ない。

我々はまた、歪成分が物質の特性に依存する式の共変性をテストする。そして、共変性の条件の助けを伴って、圧縮性粘性流体の場合のこれらの式 を立てる。もし、我々が粘性を無視するなら、圧力 $p$ はスカラーであって、流体の密度と温度だけに依存するだろう。そのとき、歪テンソルの貢献は、 明らかに、次である。 \[ p δ_μν \] ここで、$δ_{μν}$ は、特別な対称テンソルである。この項は、粘性流体の場合にもまた存在するだろう。しかし、この場合には圧力の項もあり、$u_ν$ の空間微分に依存する。我々は、この依存性を線形と仮定する。一方、これらの項は、対称テンソルでなければならず、入ってくるのは唯一、 \[ α ({∂u_μ \over ∂x_ν} + {∂u_ν \over ∂x_μ}) + β δ_{μν} {∂u_α \over ∂x_α} \] であろう。(なぜなら、$∂u_α \over ∂x_α$は、スカラーである。) 物理的理由(すべりのない)から、全ての方向に対称的な拡大が仮定される。 すなわち、もし、 \[ {∂u_1 \over ∂x_1} = {∂u_2 \over ∂x_2} = {∂u_3 \over ∂x_3}; {∂u_1 \over ∂x_2}, etc., = 0, \] であるとき、摩擦力は現れず、そのことから、$β= -{2 \over 3} α$ であることが出てくる。もし、 $∂u_1 \over ∂x_3$ だけが 0 と異なるなら、 $p_{31}= -η{∂u_1 \over ∂x_3}$ としよう。それによって$α$が決定される。我々は、そのとき、完全な歪テンソルのための次式を得る。 \[ p_{μν}= p δ_{μν} - η[({∂u_μ \over ∂x_ν} + {∂u_ν \over ∂x_μ}) - {2 \over 3} ({∂u_1 \over ∂x_1} + {∂u_2 \over ∂x_2} + {∂u_3 \over ∂x_3})δ_{μν}] \tag{18} \] 空間の等方性(全方向の等価性)からくる、不変量の理論の人間的な価値は、この例から明らかとなる。


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我々は、最後に、マックスウェル (Maxwell) の方程式を、ローレンツ (Lorentz) の電子理論の基礎となった形式によって考察する。 \[ \begin{align} {∂h_3 \over ∂x_2} - {∂h_2 \over ∂x_3} &= {1 \over c} {∂e_1 \over ∂t} + {1 \over c} i_1 \\ {∂h_1 \over ∂x_3} - {∂h_3 \over ∂x_1} &= {1 \over c} {∂e_2 \over ∂t} + {1 \over c} i_2 \\ &.... \\ {∂e_1 \over ∂x_1} + {∂e_2 \over ∂x_2} &+ {∂e_3 \over ∂x_3} = ρ \end{align} \tag{19} \] \[ \begin{align} {∂e_3 \over ∂x_2} - {∂e_2 \over ∂x_3} &= - {1 \over c} {∂h_1 \over ∂t}\\ {∂e_1 \over ∂x_3} - {∂e_3 \over ∂x_1} &= - {1 \over c} {∂h_2 \over ∂t}\\ &.... \\ {∂h_1 \over ∂x_1} + {∂h_2 \over ∂x_2} &+ {∂h_3 \over ∂x_3} = 0 \end{align} \tag{20} \] i は、ベクトルである。なぜなら、電流密度は、電荷密度に電荷の速度ベクトルを掛けたものとして定義されるから。 最初の3式から、$e$ は、ベクトルとして見なされることが明らかである。そのとき、$h$ は、ベクトルとして見なすことが できない(*)。それらの式は、しかしながら、$h$ を 2 階の反対称テンソルとみなすならば、容易に解釈できる。 従って、我々は、$h_1, h_2, h_3$ の代わりに、それぞれ、$h_23, h_31, h_12$ と書く。$h_{μν}$の反対称性に注意を払って、 (19), (20) の最初の3式は、次の形式に書くことができる。 \[ {∂h_{μν} \over ∂x_ν}= {1 \over c} {∂e_μ \over ∂t} + {1 \over c} i_μ \tag{19a} \] \[ {∂e_μ \over ∂x_ν} - {∂e_ν \over ∂x_μ} = + {1 \over c} {∂h_{μν} \over ∂t} \tag{20a} \] $e, h$ に対比して、同じ型の対称性をもつ量として、角速度がある。 発散の方程式は、次の形式をとる。 \[ {∂e_ν \over ∂x_ν}= ρ \tag{19b} \] \[ {∂h_{μν} \over ∂x_ρ} + {∂h_{νρ} \over ∂x_μ} + {∂h_{ρμ} \over ∂x_ν} = 0 \tag{20b} \] 最後の方程式は、3 階の反対称のテンソル方程式である( $h_{μν}$の反対称性に注意を払えば、どの添字対に関しても、 左辺の反対称性は、容易に証明できる)。この記述は、通常のものよりも自然である。なぜなら、通常の記述と違って、 それがデカルト左手系を、右手系だけでなく、符号を変えずに適用できるからである。

(*) これらの考察は、読者をテンソル演算に親しませて、4次元の扱いに特別な困難を無くさせるだろう; 特殊相対論(Minkowski の場の解釈)のなかの対応する考察では、もっと困難は少ないだろう。