電場加速

片山泰男(Yasuo Katayama)


電場による加速は、乗客に加速を感じさせるだろうか。電磁加速は重力加速よりも制御しやすい。そして電磁場が電荷に与える力は電荷並進系では全て電場である。 それに対して重力場は電場と違って内外とも素通しで、内部質量は隠せず、外場はそのまま内部に現れる。重力には今のところ導電体やシールドはない。ところが、 電場の力を利用する場合、「静電シールド」がある。ここでは、導電体の「静電シールド」の電場加速についての効果を考える。

導電体のロケット外殻の内部にあって外殻と導電した乗客は、外殻と等ポテンシャル(等電位)である。内部電位が等しく電場がないことは、余剰電荷(電荷というとき 全て、物質の陽電荷と陰電荷の差を意味する)が全て外部表面に存在するのではなく、電荷存在比率が等しいだけではないか。もしそうなら、電場加速も重力加速と同じ 利点(無衝撃加速)をもつが、恐らくそうでない。電場加速は無衝撃を期待できない。同符号の電荷たちは、互いに斥力をもち、できるだけ離れようとして、導電体では 外部表面の(全電荷が表面にくると却って密集するので(*))近くに分布する。電荷が外殻にあれば外部電場は外殻を加速し、内部の物体は外殻の加速からの衝撃を受ける。

では、ロケット外殻(導体)から絶縁して帯電させた乗客は、帯電させた外殻と同じに加速されるか? 絶縁は完全とするか、不完全でも時間を経て外殻へと漏出する前とする。 電荷の移動は瞬時でなくある時間(時定数t=CR)がかかる。電荷はまだ内部にあり、外殻は内部電荷の分を持たないと仮定する。外殻は導体で外部電場はロケット内部に 入り込めず、内部には外部電場がなく内部電荷は加速されない。このとき、電荷は外部から見えるのか? 見えないとすると...。 静電気学では「静電シールド」は、外部電場を内側に隠すが、内部電荷を外部に隠さない。外殻に導電する/しないに関わらず、内部電荷を隠せない。 もし、内部電荷が外部に見えないなら、それは隠せることであり、隠せるとは物体の表面的な電荷を任意にできることである。電場のなかで電荷をみせて移動し、 電荷を隠して元に戻すなら、無制限にエネルギーを得る永久機関ができるから、あり得ない。内部電荷からの電場はシールドを越えて外に出て隠せない。 但し、地上でアースされた外殻は、これと条件が違い、静電誘導で内部電荷の反対電荷を地球から外殻に集め、内部電荷を隠すことができるが、ここでは、 外殻は他と絶縁されているのである。

静電誘導: 帯電物体の近くにアースした物体を置くと反対電荷が集まる。アースした油滴の漏れる容器に帯電物体を近づけ、容器から落ち離れる油滴が反対電荷に帯電し、 下の絶縁した容器に元の帯電物体の電荷より大きな反対電荷が貯まる、重力利用の静電誘導。


導体の外殻と内部電荷の間を絶縁しても、電荷は外部に隠せない。導体は表面に電場の平行成分をなくし垂直(法線)成分を残す。導体にシールドされても内部電荷から の発散が保存される。「発散は、ある立体内部の電荷密度の体積分であり、その立体を包む閉曲面を交差する電場の法線方向成分の面積分に等しい」(ガウスの定理)。

導体閉曲面を通して電場の法線成分、内部電荷からの電場の発散は外に姿を表す。電荷を隠せないとは、電荷からの電気力線の導体面に垂直な殆どシールド貫通である。 外からの力線は、シールドの外面に垂直に立ち、貫通せず外殻で消えるのか。導体は等電位であり、閉曲面の内部空間は電場が0である。導体面では力線は内から外に出るが、 外から内に入らない一方通行なのか。力線は電荷で終端される。外部力線が外殻で消えるとき外殻の表面に電荷が必要である。外からは外殻に内部電荷がみえる。 外部の電気力線は、外殻表面にみえる電荷で終端し、その内側には内部からみえる反対電荷の鏡像と内部電荷の間に電気力線がある。力線は一方通行ではない。 力線の本数は内部電荷量である。力線は消えるのではなく、内部でも線は内部電荷と結んでいる。

外側からは外部電荷の反対符号の鏡像ではなく、内部電荷がみえる。内外の電荷は等量で連なり、外部力線は外殻に垂直に通過し、内部空間に殆ど貫通している。 外からは外殻を通して内部電荷がある。それに力は働き何かが加速される。内部には内部電荷の作成した等方的な電場しかない。 これは、内部電荷には力は働かず加速される(無衝撃加速)と誤解させるが、内部は単に取り残されるだけであろう。

外の電場が内部からみえないのは、電場が外殻に外部電場の反対電荷を集め、電荷を移動し外部電場を中和して、外場を内部に隠すのである。内部の電場は内部電荷による 等方的な電場で内部電荷を加速しない。外部電場による外殻の電荷配置で外殻前面を引き後面を押すから外殻を電場方向に伸長させるが、一様電場なら外殻全体としては加速がない。 外殻が電荷をもてば加速される。それでは、外殻と内部の両方が加速されず電荷が隠せるなら、エネルギー保存が崩されありえない。電荷が隠せず全くシールド効果がなく、 外部電気力線がシールドをそのまま貫くなら内部電荷が加速される。これも現実と思えない。シールド効果があるなら内部電荷は加速されず、 丁度内部電荷と等しい電荷が外殻に姿を表し、外殻だけが内部電荷の代りに加速されるだろう。

注意すべきは、外殻は実際は電荷をもたないことである。電荷を持たない物体が外部電場によって加速されるなら、外殻だけの加速推進ができる。内部電荷はそのまま静止し、 筒状の外殻を次々に打ち出すことができる。外殻に電荷を与えないから、それの中和もいらない。これは正しいのだろうか?と疑う。


外部電場は、外殻でシールドされ方向性を失い、内部電場は等方的で内部電荷は力を受けない。外殻には外部方向性を内部等方的に変える電荷の偏りが存在し、 それが外場で外殻を伸長加速する。外部電荷に近い側に引力、遠い側に斥力で、外殻全体は、内部電荷の受ける力を代行するだけの引力/斥力を受ける。 張力のある紐は、内部電荷から等方性に出て、外殻を抜けると大きく曲り、外殻に力を与える。

実は外部にも見えない部分があり内部にも見える部分があると部分比率を考えても、エネルギー保存は回復しない。このとき外殻が不導体では外殻なしと同じで、 導体と不導体の中間なら中間的な状態である。つまり、外殻が不導体なら外殻は加速を受けず内部が加速を受ける。内部と等しい加速を得るよう外殻も多少導電、 帯電させる。この「外殻を導体にしない」は導体外殻の問題を避けているだけが、意外な解決かもしれない。

外殻が内部を完全に覆う構造が考えにくい原因である。外殻は力学的骨格を与えるが、一部しか被覆せず内部電荷を大半露出する。そうすれば、内部電荷に力が働き、 外殻と内部電荷を等しく加速でき、乗客は衝撃を感じずに加速できる。「外殻で覆わない」も第2の回避的な解決である。

通常の推進はエンジンをもち、それが船を加速する。そのとき推進部とそれ以外の積荷の質量との間に働く力が困るのである。電場推進は、帯電させた物体全てを電場 (又は磁場中の速度でみる電場)の中で加速推進する。それが人体までに分布する電荷に働けば、人体は外殻と等しく加速して、無衝撃加速できる。しかし、 内部には小型化した同じ問題があって、電荷が導電体の人体表面にだけにあるなら、表面だけ加速を受け、内部は後に残されるかもしれない。


ジュールベルヌの月世界旅行の大砲は、加速が人体に激しすぎた。しかし逆に、ロケットは加速が小さいことが地上からの上昇において効率低下を招く。 ロケット外殻は火薬の爆発による推力を受け、積荷である乗員は直接力を受けず外殻から力を受ける。そのとき、体重の何倍もの力がかかり、人体を傷つける。 これを車の衝突を使って自分の体で試している人がいることを最近、放送で知った。25G, 40数G でも生きていたが、肋骨は、折れるようだ。

"オディッセイ" 火星にひとりぼっち、という映画 (オディッセイとは、A.C.クラークの1969年の邦題「2001年宇宙の旅」の原題と同じである。この作品は、 その A.C.クラークの短編、「地球の太陽面通過」 (早川SF文庫SF292「太陽からの風」に収録) を意識した作品のはずだが、物語は主要テーマが全く逆転している。 助からない主人公の孤独で崇高、悲劇的な結末だけの断章は、余りに個人的で、ハリウッドには受け入れられない。そして、印象的すぎて何十年たっても 読み返したくない作品である。ところが、このSF映画の中では火星に取り残された人の救出が行われ、ロケット推進は12Gで、やはり肋骨が折れた。 人体を含めた電磁加速がなぜ必要であるかは、分かるだろうか?大砲のように打ち上げることができれば、静止軌道エレベータに近づけることができるからである。 何をだって? ロケットの効率をだ。一瞬で脱出速度を得れば、位置エネルギー分を支払うだけですむのである(**)。

まとめ: 電場は宇宙には弱い。真空中は、荷電粒子が自由に移動し、殆ど導電体である。大規模な銀河サイズの磁場は残るが制御できず推進には使えない。 電場の強さは必要で、我々は1G重力場での人体の電場浮遊の経験さえなく、粒子浮遊位しか経験しない。しかし、電場推進は、重力推進より恐らく先に実現する。 なぜなら我々は、電磁気の技術を少しはもつが、一般相対論から100年を経て、重力制御技術を全く持たないのだから。


(*) 電荷は導電体全体に分布するよりも表面に分布するとより密集する。そのため、電気力が他の力より小さいとき、体積全体への一様な分布も可能性がある。 電荷は電場で力を受ける一方、電荷は電場の源でもある。電荷が互いに及ぼす斥力よりも、その電荷以外の電荷の作る電場を考える方が簡単である。球対称分布 ではニュートン重力のNewton-Birkhoff定理と同じく、電場は、中心から自身より外側の電荷は関係せず、内側の電荷が中心にあるときの電場と等しい。外へ斥力 を及ぼす電場を勾配が与えるポテンシャルは正で、中心で高く周辺で低下し、物体外では1/rをとり無限遠で0に近づく山形をなす。そしてポテンシャルと電荷密度 の積がエネルギーである。そのため電荷は、導体内部より表面に近いほうが、エネルギーの低い安定な配置になる。

例えば、表面から半径の1/100以内に半分はあるか? とかいう電荷の分布は、電荷量やサイズによらない。斥力は電荷量に比例し、サイズの2乗に反比例するが、 他の力が関係しないとき、電荷分布は電気力のバランスで決まり、電気力全体の大きさに関係しない。電場は電荷密度のr方向積分であり、ポテンシャルはさらに 電場のr方向積分である。つまりポテンシャルの2階微分が電荷密度ρ(r)のとき、総電荷一定の条件で、ポテンシャルと電荷の積の物体内定積分であるエネルギーを 最小化する電荷密度分布が実分布である。このような最小エネルギーの分布を求めることは類型化した難しい問題である。そのとき容易な特殊解として、全電荷が 表面にある分布は、外向き電場の考慮が必要なく上の積分を0にするが、r方向の電荷密度が表面で無限大になり、表面内密集に必要なエネルギーを考慮しないため 疑わしい。「内部に電荷があれば外向き斥力で移動し全電荷は表面にしか存在しない、電荷は導体内部に存在しない」は、正確でないのだろう。

2000個の電荷を単位球内に乱数で初期配置し、互いの斥力による移動をシミュレーション。(denka.cを、cc -O -o ia denka.c -lm し、./ia を実行。) 抵抗の存在する導体中の電荷は、自分以外の電荷の斥力の和に比例して慣性なしに移動する。単位球外に出ると中心から単位球面上に引き戻す。半径を20個の区域に分割し +1個を球表面にしヒストグラムを取り分布をみると、数100〜数1000ステップを経ると約6割が表面(20)にあり、その半分程度の3割が表面から半径の1/20内(19)にある。 それ以外の1割以内がその内部(0-18)にある。内部電荷は球対称でないから、そこより外側の電荷の力も受ける。内部電荷は停留しないようで、非常に徐々にだが外に移動 していく。表面と表面近くは大きく変動しながらも長期的に比率を保つ。これも停留でない理由は 1/20 が 1/100でも同じ性質であること。表面を越えた電荷を表面に戻す 方法に依存する。... たとえ電荷を内部に留める方法がなくても、内部から表面近辺への電荷移動が終わらない間に加速すればよい。「帯電後すぐに瞬時加速」は第3の 問題回避型解決かもしれない。


(**) 加速について: 地球脱出速度11.2 km/sを与えるのに、100秒間で与えるのと1000秒間で与えるときの効率を比較する。加速度が11.43Gで100秒間、1.143Gで 1000秒間で同じ脱出速度に達する筈だが、その間、重力加速度(1G)が減速をする。100秒では -0.98km/s 約1割、1000秒では -9.8km/s 約9割の損失である。大加速は、 重力加速度が働く時間を短くし損失を小さくする。効率は、(G-1)/G= 1- 1/G である。予定速度に達するには 1/効率 倍の時間と燃料をかける必要がある。 ロケットでは最大G= 3〜5にする。

その場所Rの周回速度 v= √(GM/R) に達しない物体は、重力に負けて地表に落ちてくる。脱出速度 v= √(2GM/R) に達しない物体は、周回しても脱出できない。 脱出速度以上の物体は、すでに脱出したと同然で、その後どれだけの期間、重力を受けても大丈夫で、重力は速度に勝てず、物体を脱出させる。つまり、 位置エネルギー+運動エネルギーを正にするのには早いほどよい。