"銀河系外天文学" T.A.アゲキヤン著(1966)、笹尾哲夫訳、地人書館を、大変に素晴しい内容の本なので、紹介する。 何が素晴しいのか、最初、難しくて歯が立たないように思う、しかし、入門者のために事実を整理して淡々と述べているところ。 銀河系外の天文学の小宇宙、(この本は、銀河のことを小宇宙と呼ぶ。)の具体的な様々な姿をまるで愛情を込めるように記述する、 このような本はまたとない。私がこの本を手にしたのはもちろん大学時代であるが、銀河の図を多く掲載した本を小学生のときから 図書館で眺めていた記憶と重なる。それは、この本ではないかもしれない。ここで半分近くを要約するのは、著作権侵害であるが、 どうか学生のノート、レポート程度と考えて欲しいが、これでは、愛情あまってのしっぺ返しだから、著者又は訳者からの要請が あれば当然、閉鎖になるだろう。(*)
(*) 最近、私の文章のいい加減さを自覚した。4章以降の章立てが元と違う。私の7章は半分でしかなく、8章以降はノートでさえなく 私の勝手なメモである。近いうちに訂正したい。(2016/7/17)
太陽系の近傍の恒星の距離は、年周視差を使って求められる。地球軌道半径(1.496億km)の視差を1秒角にする距離を 1 pc パーセク (Parallax secondから) と呼び、距離の単位にする。(3.259 光年) 1pc は地球軌道半径の 206265 倍、3.08*10^13 km である。(30兆km) 最も近傍の恒星は、ケンタウルス座のプロキシマ 1.31 pc、アルファケンタウリA,B の1.32 pc、バーナード星の1.84 pc である。 それぞれの絶対等級は、+15.7, +4.7, +6.1, +13.1である。三角測量で星までの距離を測定できる範囲は狭いが、6000個の恒星の距離が 測定されている。
太陽付近の恒星の密度:暗い星は遠方では見えないため、距離に対する恒星密度は、遠方ほど低下する。5pcで0.08、10pcで0.04である。 周辺の恒星分布から近傍への外挿で 0.133個/pc^3 という値が得られる。一辺2pcの立方体に1つである。
恒星の基本的な物理的指標は、絶対等級とスペクトル型である。星のスペクトル型は、一列に並べることができる。(O-B-A-F-G-K-M) (Oh Boyi A Fine Girl Kiss Me)と名付けられる。アルファベットが欠けるのは、歴史的理由である。スペクトル型は、さらに細かく 10に分けられ、O, B0〜B9, A0〜A9, ...と並べられる。太陽は G4 とされる。スペクトルは、星の表面物質の吸収線で、O は、 電離ヘリウム,2 重電離酸素、 B は、電離酸素、電離窒素、 A は、水素、 F は、電離金属、G,Kは、非電離の金属、 M は、酸化チタン などの化合物が特徴である。水素は全てに存在するが、B7〜A3において強い。
しかし、星に化学組成の違いがあるのではなく、温度だけによってスペクトルが違うのである。(O:50000度, B0: 25000, B5: 15600, A0: 11000, A5: 8700, F0: 7600, F5: 6600, G0: 6000, G5:5520, K0: 5120, K5:4400, M0:3600, M5:2700) スペクトル型が測定できない場合、 青色感度の強いフィルムと普通のフィルムの2種類の等級差による色指数 CI = m_ph - m_pv で温度を推定する。
質量ー光度関係:恒星の質量は、二重星の観測で得られる。恒星の光度は、温度に関係するが、絶対等級Mからおおよそ、直接換算できる式がある。 m= 3.89*10^(-0.1194M) mは太陽質量(2x10^33gr)単位。温度と絶対光度があると、温度の4乗に比例のステファンの法則 1cm^2あたりの毎秒 のエネルギー 5.71*10^-5 T^4 erg/sec を使って、表面積S、そして半径 rが求まる。
新星と超新星:新星現象は、恒星のあまり深くない層の爆発現象。新しい星の誕生ではなく、その場所には必ず古い写真にあわい星が 見付かる。暗い星(絶対等級M=6〜8)が数日で、M= -6 〜-7になり、もとの数十万倍の光度を出して閃く現象である。 数日で、10^45〜10^46 erg、太陽が 1 〜10万年かかって放出するエネルギーに等しい量が放出される。 光量は次第に減少し、ときには小規模の増光を伴い、10〜20年でもとの状態に戻る、一時的な現象である。 飛び去る質量は、星の質量の10万分の1である。
超新星現象は、重く大きな星の一生の最後の星深部で起こる爆発現象であり、数か月から数年に渡って、数十億倍の光度になる。 M= -12〜-18になり10^49〜10^51erg、太陽の数十億年分のエネルギーを放出する。物質放出の速度は、6000km/sec にもなる。 爆発によって飛散する質量は、星の質量のかなりの部分、少なくとも数%以上である。残骸に星雲を残す。 約100年に1度程度起こるとされる銀河系での超新星は、歴史上3回記録されたが、望遠鏡ができてから観測されていない。 超新星がなかったためではなく、銀河系は、対称面上のチリのため、他の銀河より条件が悪いのである。
スペクトルー光度図:横軸にスペクトル型を縦軸に光度を取り、その中に星のプロットを取ったのが、ヘルツシプルング・ラッセル(HR)図である。 その中の位置は、何らかの共通性によるだろうが、星の年齢か、化学組成か、それらの本質を考えることは難しい。しかし、事実として5つの系列 に分かれる。主系列星が右下(0.0001 太陽光度)から左上(1万太陽光度)にかけてS字型に分布し、その下に並行して主系列に比べて1/4から1/5の 光度の準矮星の系列がある、その下にA〜Fに0.01太陽光度より少し下に白色矮星があり、中央から右上に伸びる赤色巨星の舌がある。それらの上、 1万太陽光度を超える所に超巨星が左右に拡がっている。HR 図は、太陽系の近くの恒星から作られたもので、遠方の分布は異なると考えられる。 散開星団、球状星団、他の銀河ではこの図が異なるのである。存在比率は、光度の大きい恒星は、遠くまで見えるので、その体積で割る必要がある。 統計は、主系列星とくに K, M 型のスペクトルの赤色矮星が多い。超巨星1個に対して主系列星1000万個、白色矮星約100万個、準矮星1万個、 そして赤色巨星数1000個である。
恒星の固有運動と視線速度:視線に垂直な方向の恒星の運動は、期間を置いた恒星の写真の比較で求める。通常の恒星の固有運動20〜30km/secと、 精度は、年間 0".001 であり、精度の 5 倍の信頼しえる値は、1200pc 内である。最も大きい固有運動の恒星は、バーナード星10".27(1.8pc)、 カプテイン星8".79 (4.0pc)、ラカイル9352星6".87(3.7pc),-37°15492 星6".09(4.8pc)、白鳥座 61 番星5".22(3.4pc)である。 視線速度は、スペクトルの偏差Δλ/λ= v/c によって測定でき、遠ざかる方向を正にする。条件の良い場合、精度 0.1km/sec まででる。
銀河系の形:恒星が円盤状の分布をしていて、境界は明確でないが 1000pc^3 に恒星1個を境界とすれば、直径30000pc 厚さ2500pcである。 直径10万光年、太陽系は、ほぼ銀河対称面上にあるが、銀河中心軸から 10000 pc (8.5kpc) であり中心よりもふちの方に近い。 銀河系に含まれる恒星の数は、1000 億(2000億〜1兆)を超えている。(括弧内は、最近の数値。)
銀河系内のガス物質:恒星の吸収線から視線速度が恒星のそれとは異なる星間のカルシウム、ナトリウムが見付かり、酸素、カリウム、 チタン、その他の原子、シアンCN、炭化水素 CH その他の分子化合物も見付かった。 銀河平面近くで星間ナトリウムは、10000cm^3あたり原子1個である。 地球上では 1cm^3 の空気に分子が 2.7 x 10^19 ある。星間水素は、長い間見付けられなかった。それは、水素の性質と恒星間輻射密度による。 電離した原子は、もう一度電子に出会わないのでなかなか電離から戻らない。励起した原子は一瞬に戻る。 電離水素は、陽子なので光を吸収しない。中性基底と励起の間は、遠紫外の光をやりとりするが大気を通らない。 恒星大気では励起からさらに高い励起に移るとき可視光をやりとりするが、星間では励起状態が非常に少ないのである。 結局、水素は発見されそれは輝線であった。電離水素が電子と再結合するとき、多段階で可視光を出すことがあるからである。 星間でも水素が多く他の原子全体の 1000 倍も多い。銀河平面で2〜3 cm^3 に原子1個、5〜8*10^-25g/cm^3 である。 星間ガスの分布は一様でない。星間ガスの全質量は銀河系内の全ての恒星の質量の 0.01〜0.02 にあたる。 銀河のなかで中性水素ガス(HI)と電離水素ガス(HII)は、明確に領域を分ける。紫外線源が近傍にあると水素は電離したままになる。 O型星の30〜100pcの球内は電離している。B1、B2 型ではそれよりずっと小さい。HII領域は、銀河系内の 1/10 で、Hα線(6563A)フィルタ で明るく写る。中性水素は、近いエネルギーレベル間 (陽子と電子の磁気モーメントが同じか逆による) の21cmの電波を輻射する。
銀河系の回転:中性水素の 21 cm 電波のドップラー偏位によって銀河系内の中性水素ガスの回転、そのまま銀河の回転とみなすことができる回転 を知ることができる。銀河中心からの距離によって回転の速度が低下する。4kpc で、0.011"/yser 8kpcで0.0061"/yesr 12kpc で0.004"/year である。 太陽のある10kpc では、0.0047"回転の周期は、2億7500万年で、速度は、220km/sec である。速度の曲線は 4kpc 200km/sec, 8kpc 220km/sec, 12kpc 200km/secで、多少の盛り上がりがある。ケプラーの第3法則では、周期が長半径の 3/2 乗に比例するが、銀河系は少し違っている。 半径の増大によって速度が低下するとき、近傍の恒星の視線運動にはある系統的影響がでる。 銀河中心方向と回転方向の中間方向とその逆方向に正の視線速度、それに垂直な2方向に負の視線速度がでる。 銀河中心を上に回転方向を右にする図では、右上と左下が遠ざかり、左上と右下が近づく。この運動は近傍の恒星の視線速度に現実に現れている。
銀河系内のチリ状物質:10^-4〜5 cm、平均間隔100m のチリは、ガスの1/100である。赤い光よりも青い光をより吸収する。 銀河平面内で 1kpcで 2m 等級さげるが、一様でなく、まだらな分布のため、不確かである。
銀河系の中心核:銀河中心核は、銀河平面のガスと塵に隠れている。1947 年ステビンとホイットフォードは、光電管による赤外線観測、 1951 年カリニャーク等の光電子倍増管による観測がある。直径1.3kpcのふくらみが確認された。
散開星団:数十から数百、(最大2000個)の恒星を含む星団。形は不規則。プレアデス星団は、視力のよい人で7個、望遠鏡では数百の星 とガス星雲を認める。ペルセウス座の h, χの二重星団には、600個の恒星を含む。散開星団には、はっきりした特徴がある。赤黄の巨星 は少なく、赤黄の超巨星がないが、白青の巨星、超巨星が多く存在する。色ー光度図では、主系列しか存在しない。銀河対称面に集中して 分布する。カタログに800程の散開星団があるが、銀河内に 3000 個ほどとみなされ、その星団内の恒星を平均 300 個とすると1000万個。 これは、銀河内の恒星の1万分の1である。
球状星団:それ自身球状に数十万〜百万の星が分布する星団。銀河系に球状に分布する。例、ケンタウルス座のω。 "その調った形、中心から縁にむけて次第にまばらになっていく星々のありさまは、星の系がついにたどりついた静止の姿であり、 完全な平衡常態なのだという感じをおこさせる。"赤黄の巨星、超巨星はあるが、青白の巨星は少なく、青白の超巨星はまったくない。 球状星団には、変光星が多いが、散開星団にはきわめて少ない。散開星団中の変光星は、数日〜数十日、球状星団中の変光星は、一日以下 といった短周期ケフェイドである。散開星団には、大量のガスと塵があるが、球状星団には、ガスや塵が少ない。 色−光度図では、黄赤の巨星列、明るくない主系列、絶対等級 +1.0m あたりの水平列が特徴。全体の明るさは大きく、119個が見付かっている。 銀河中心を中心とし球状に分布している。1918 年シャプレーは、太陽が銀河中心でないことをこれによって見いだした。 球状星団あたり恒星100万個とすると、銀河内に1億個の星が球状星団となっている。これは、千分の1である。
銀河系における若い星々の集まり: 20〜30個の O, B0, B1, B2 などの高温巨星の集落、O-集落がある。 範囲が数10〜数100pcなので重力関係にはない。銀河対称面にあり、3.5kpc 以内、1/3は 1.5kpc 以内である。
銀河系のサブシステム: 高温の超巨星、巨星、長周期ケフェイド、塵、ガス散開星団のなす平面サブシステム、 黄、赤の準矮星、巨星、短周期ケフェイド、球状星団のなす球状サブシステム、そして、 黄、赤の矮星、巨星、くじら座ミラ型変光星のなす中間的サブシステムに分類できる。 平面サブシステムの恒星の化学組成は、金属が球状サブシステムの星にくらべて多い。
銀河系の渦状分枝:銀河系を対称面に垂直に眺めると渦状銀河になっている。渦状分枝には、高温の巨星、超巨星、塵、ガスがあり、 それを取り除くと渦状構造は消える。赤黄の星は、矮星から巨星まで、分枝と分枝の間の場所も均等に満たしている。 ファン・デ・フルスト、ミューラー、オールト、ヒンドマン、スターカーペンターらの21cmの電波による中性水素ガスの密度は、 レーダーで見るように銀河系の渦状分枝を示している。
その期間は、水素ヘリウム反応によって太陽の質量が、現在の割合で反応すると、1000 億年になる。 これは宇宙進化のスケールとしても、少々長すぎる期間である。水素が燃えつきてしまうのは恒星全体でなく、 その中心においてのみであることを考えにいれなければならないだろう。
恒星が燃えつきていくと、恒星の半径は増大し、温度は低下し、光度は多少増える。主系列を離れ、右上に向かって移動する。この移動の 速さは、温度に依存する。核反応の速度は温度の15乗に比例する。中心部の温度は、質量によって決まるから大きな質量の星ほどより早く、 右上に移動し、赤色巨星になる。赤色巨星の星の中心部は収縮し一億度になり、反応は、三つのヘリウムから炭素を作る反応を行う。 この反応によって温度が上昇し、スペクトル−光度図上で左むきの移動がおこる。
散開星団の中の星は同じ年齢と考え、スペクトルー光度図の左上の曲りを説明できる。サンデージの作成した、10個の散開星団の色−光度図 から、その曲りは、主系列から巨星への変化が起こっていると解釈すれば、主系列を0年として変化は、NGC2362 はゼロ歳、ペルセウス座のh、 χは、8x10^6 年、プレアデスは、10^8年等になる。NGC2682 は 8x10^9 年であるがすでに球状星団の形と似たものになっている。
ガス説の難点は、銀河系内にガスが少ないことである。水素ガスの質量は、銀河系全体のわずか 2 % である。すでに恒星形成が完了したのではない。 銀河系には、青い超巨星、巨星が沢山あるが、それらがガスの分布とは、関係がなさそうであること。さらに、収縮過程がきわめて穏やかな ものになることであり、普通の恒星の観測を詳細に説明したかもしれないが、あらたなものを予言せず、一連の観測による激しい恒星、 銀河の爆発現象を説明できない。
恒星が超高密度物質から形成されたとする仮説:V.A. アンバルツミアンによる。宇宙では合成過程より分解過程が優勢であること。 ハイペロンによる恒星形成を考える。或る種の爆発的現象が説明されるかもしれない。安定した状態の散開星団があることは、その反論になる。
3.2 楕円小宇宙:星種II の星(赤黄の巨星〜矮星、光度の大きくない白色の星)からなり、星白色の超巨星、巨星がない。塵状物質も見えない。 その特徴は、偏平度だけである。10x(a-b)/a によって、0 から 7 までの値がある。NGC4636 は E0 , NGC4406 は、E3, NGC3115 は、E7である。 その本当の形態は、一律の偏平度の回転楕円体かもしれない。ハッブルは、偏平率の分布から、眞の偏平率の分布を知るための研究を行った。 結果は、小宇宙団に加わっている楕円銀河は規模が大きく、E4〜7であり、小宇宙団に入っていない楕円銀河は小さく、E0〜1である。
3.3 渦状小宇宙:渦状小宇宙は、動的な姿を示している。やっと渦の分枝がみえる程度の Sa 型の大熊座の NGC3898 小宇宙の核は大きく 全体の半分を占める。NGC1301 は分枝はかすかであり、NGC3368 ではかなり発達している。分枝の数は 2 である。Sb 型の小宇宙の代表は、 NGC488, NGC3521, NGC6384 である。分枝の数は多い。NGC210 では分枝の数は 2 である。Sc 型は、多くの小枝にわかれた分枝とずっと 小さい中心核をもつ。NGC 628、NGC1232、NGC157がある。3 種とも真横からみた小宇宙(Sa:NGC4594ソンブレロ銀河, Sb:NGC4565, Sc:NGC4244) では、塵の帯が見える。楕円小宇宙では、7 までであった偏平率は 7 より大きく、Sa 型では、8, Sb 型では、8.5〜9、Scでは 9 以上である。 渦巻構造ができるためには、大きな偏平率が必要である。リンドブラッドによる運動学的説明があるが、渦状分枝が高温巨星からなることを 説明しない。偏平な恒星系が偏平性をすてることとその逆もあり得ない。それらは並行の進化であろう。楕円銀河にガスや塵が見えないのは、 中心部にガスや塵が落ちたと考えられる。NGC5866 はその中間的なものである。わが銀河系は、Sb あるいは Sc である。
3.4 棒渦状小宇宙:渦状小宇宙では分枝が円形の核から伸びていたが、その核が棒状で渦状分枝が棒の両端から出ている。分枝の発達程度によって SBa, SBb, SBc に分類する。NGC4548 (SBb), NGC1073 (SBc)がある。
3.5 凸レンズ状小宇宙 S0:小宇宙団のなかには、偏平率は大きいのに渦状分枝、塵の線が見えないものがあり、S0と呼ばれる。ガスや塵がなん らかの原因で掃き出されたものとされる。真正面からの NGC524, 真横からの NGC4762 がある。
3.6 不規則小宇宙:不規則な形の銀河を irregularから、I 型という。銀河が最初不規則にでき、それが規則的になると考えると、 その整列するまでの時間は、その銀河の物質密度の平方根の逆数に比例する。わが銀河系の平均物質密度 10^-24g/cm^3 では、10 億年になる。 不規則なのは、その銀河が若いか密度が低いかになる。しかし、もう1つの不規則の可能性があり、それは他の小宇宙との相互作用によると いうものである。 これは、不規則型に二種類あるのと対応している。I の I 型特徴は表面輝度が高く、入り組んだ不規則な形をしている。NGC2574, NGC5204 がある。ヴォークルールは、この種の不規則銀河に、マゼラン星雲、NGC5204 に破壊された渦巻の跡を発見した。また、I の I 型は、しばしば 2 つで組を作っている事実に注目した。大小のマゼラン雲、 NGC4027と4038, NGC4618と4625 などである。相互作用による銀河の変型がもたらす ものである。単独であるものは、すでに他が遠方にまで移動したが、形を調えるにはまだ時間がかかるのであろう。 不規則銀河の二種目は、I の II 型という(例はしし座の不規則銀河)。表面輝度が非常に低い。物質密度が低いため形を調えられないと考えられる。
3.7 針状小宇宙:3軸の回転楕円体、ラグビーボール型の存在は、例えば、棒とあまり発達していない分枝の棒渦状銀河NGC7741、 また、楕円銀河のようで長軸のまわりに暗い環がみえる葉巻型銀河 NGC2685 がある。
銀河 みかけの等級 型 距離 絶対等級 分角 大マゼラン雲 1.2 II 46 -17.4 780 小マゼラン雲 2.8 II 46 -16.0 180 224 4.3 Sb 460 -19.8 197x92 598 6.0 Sc 480 -17.6 83x53 253 7.6 Sc 55 7.8 Sc 5236 8.0 Sc 1800 -19.1 10x8 3031 8.1 Sb 1540 -18.7 16x10 4594 8.6 Sb 5000 -20.7 7x1.5 5457 8.6 Sb 1800 -18.5 22x22
E Sa+SBa Sb+SBb Sc+SBc 17% 19% 26% 38%
銀河個数(/Gpc^3) ------------------------------- 絶対等級 I,S型 E型 ------------------------------- -21.0〜-22.0 0.025 -20.0〜-21.0 0.52 0.091 -19.0〜-20.0 6.9 1.7 -18.0〜-19.0 19 5.5 -17.0〜-18.0 30 6.9 -16.0〜-17.0 35 9.1 -15.0〜-16.0 155 -------------------------------
質量−光度比 (M/L)は、恒星のスペクトルで大きく変わる。小宇宙のタイプによるM/L比の値は、バービッジ夫妻によるものでは、 II:5、I II:10、Sc:7、Sb:14、Sa:20、S0:21、E:41 というのがある。
O5 0.0001 B5 0.01 A0 0.05 F0 0.2 G0 0.8 G2 1.0 K0 3.0 K5 12.0 M0 65.0 M5 120.0
3.11 小宇宙各タイプの系列:E0-E1-E2-E3-E4-E5-E6-E7<Sa-Sb-Sc/SBa-SBb-SBc>I。
ハッブルは、E0〜E7に収縮し偏平になり、さらに渦巻又は棒渦状になる進化を考えた。これは、英国の天文学者ジーンズの考えが影響
しているが、ジーンズの説は楕円銀河と渦巻の中心核が恒星でなくガスであるとした。現在、楕円銀河も渦状銀河の中心核も、恒星に
分解されたため、進化説はあまり認められない。とくに渦巻は、逆に Sc から Sa への進化はありうる。高温の巨星、超巨星が豊富な
のは、I1、Sc、SBc であるからである。偏平率をこれほどに変えるメカニズムは存在しない。早期型、晩期型銀河という言葉は残っている。
名称 タイプ 等級 絶対等級 距離 分角 視線速度 銀河系 Sb又はSc -19.8 大マゼラン雲 I I 1.2 -17.4 46 780 +280 小マゼラン雲 I I 2.8 -16.0 46 180 +160 彫刻室座系 I II 8.8 -12.1 90 45 炉座系 I II 9.1 -13.4 290 50 +149 NGC6822 I I 9.1 -13.9 330 20 -34 NGC147 E3 10.5 -13.4 400 18x22 NGC185 E1 10.2 -13.7 400 14x12 -180 NGC224 Sb 4.3 -19.8 460 197x97 -267 NGC205 E5 8.9 -15.0 460 26x16 -239 NGC221 E2 9.1 -14.8 460 12x18 -220 IC1613 I I 10.0 -13.5 460 23x23 -235 NGC598 Sc 6.0 -17.6 480 83x53 -190 NGC6946 Sc 11.1 +34 IC10 Sc -343 IC342 Sc -20 しし座I系 I II 12.0 -9.7 220 38 しし座II系 I II 12.0 -9.7 220 41 りゅう座系 I II 10 -10 100 50 こぐま座系 I II 10 -9 67 130
もっとも近い小宇宙の中の最も明るい星々 恒星名 スペクトル型 M 小宇宙名 白鳥座 VI No.12 B5 -9.8 銀河系 サソリ座 ζ B1 -9.4 銀河系 オリオン座 β B8 -8.8 銀河系 HDE 26970 B2 -9.8 大マゼラン雲 HDE 269781 B9 -9.5 大マゼラン雲 HD 33579 A2 -10.1 大マゼラン雲 HD 7583 A0 -8.8 小マゼラン雲 HD 6884 B9 -8.5 小マゼラン雲 各小宇宙中もっとも明 -8.6 NGC224 るい数個の恒星の絶対 -8.9 NGC598 等級を平均した値 -8.3 NGC6822
M 個数 M 個数 -6.5 〜 -6.01 3 -4.0 〜 -3.51 34 -6.0 〜 -5.51 6 -3.5 〜 -3.01 44 -5.5 〜 -5.01 5 -3.0 〜 -2.51 80 -5.0 〜 -4.51 12 -2.5 〜 -2.01 143 -4.5 〜 -4.01 12 -2.0 〜 -1.51 258
マゼラン雲の中には星団が非常に多い。1833 〜1838 年ジョン・ハーシェルは、大マゼラン雲中に 919 個、小マゼラン雲中に214個の 星団と拡散物質の雲を数えた。現在、大マゼラン雲に約1100個と小マゼラン雲に100個以上の散開星団のカタログができている。 銀河系内と同じような球状星団は 35 個と 5 個がある。しかし、銀河系には見られない青白色の巨星をふくんだ球状星団がある。 これは、通常の黄赤の球状星団の年齢の古さと違って若い球状星団かもしれない。変光星も多い。長周期、短周期のケフェイドの両方 を観測できるのは銀河系外ではマゼラン雲だけである。新星の閃光は、大マゼラン雲中で1926,1935,1936,1937,1951年に、小マゼラン雲 中には 1897,1927,1951,1952年にあった。最大光輝の絶対等級は、-7.m0〜-8.m5 等級であり、銀河系内の新星と大差ない。 マゼラン雲には、拡散物質も多い。個々のガス星雲以外に小宇宙全体にも広がっている。銀河系では、ガスは全体の 1〜2%だが、 マゼラン星雲では 6% と見積もられる。シャプレーの考え出した方法によって、塵は、その外の区域と比べ大マゼラン雲を透かして 見るときの遠方の小宇宙の個数が 1/10 になることから、約 1.m7 等弱めるとされる。銀河系の場合、対称面に垂直に透かせると平均 0.m7 等しか下がらない。小マゼラン雲でも光の吸収が確認される。
マゼラン雲の研究は、様々な小宇宙の間に統一性、共通性があることを教える。あらゆる天体がマゼラン雲の中にも見られる。 恒星、星団形成の諸法則は同じである。
極めて多様な星構成をしている。渦状分枝には星種 I の天体が多く、青白色の巨星、超巨星が集中し、種々の変光星もある。 米国の天文学者アープは、一年半を費し290晩の1000枚の写真を撮影し、30個の新星爆発を見出した。年間平均26個の新星は、 Sb型(Sc型)の年平均爆発回数であろう。銀河系では、主平面近くであるため遠くの新星の光は、強い吸収で見えない。
アンドロメダ銀河の距離はマゼラン星雲の10倍遠いため、散開星団の観測は、困難だが、より明るい球状星団は 140 個発見されている。 これは、銀河系よりも 21 個多い。その中には短周期ケフェイド変光星もあるはずだが 5m 鏡でも捉えられない。電波観測は、 主平面近くに集中し全体にも広がる星間水素ガスを観測する。2.5 x 10^9 太陽質量は系全体の2%。
2つの矮楕円小宇宙、境界にあるNGC221(E2,M32)と少し離れた NGC205(E5,M110)を伴う。それらは実際に近い3重系である。 NGC147とNGC185もその近くにある矮小宇宙である。5重系であるともいえる。超巨大な小宇宙は、伴小宇宙を伴うのは普通の現象と考えられる。 超巨大小宇宙の重力が、周りに幾つかの小宇宙を引きとどめることを可能にする。
アンドロメダの伴小宇宙 NGC185:楕円銀河で星像に分解でき、中央近くに暗い塵状物質のフィラメントが写る。
しし座II系: 不規則 II 系の小宇宙。距離、220kpc にある。表面輝度の低さ、中心への集中の弱さが特徴。絶対等級 0 等より明るい恒星 が数えられるように見えるが、この他に数百万のよりあわい恒星がある。明るい恒星のなかに短周期ケフェイド変光星も発見された。 O、B型の巨星、超巨星はない。これは、しし座II系が星種 II の天体からなることを示す。
ろくぶんぎ座系:不規則 II 型の距離 500kpc の小宇宙。しし座II系より表面輝度は強い。 絶対等級-2mより明るいものが見える。星種 I 系の天体でできている。O、B型の恒星の集落が見える。
三角座の小宇宙 NGC598(M33)Pinwheel Triangulum Galaxy:アンドロメダ星雲に次いで近い渦状(Sc)小宇宙。 渦状分枝は高度に発達し、中心核は小さく、星種 I の天体に富む。この小宇宙等で、渦状分枝は発達しすぎてちぎれたように見える(逆にまだ渦に巻き込 まれていない部分かもしれない?)ため、Sd 型というタイプも提案された。個々の恒星に分解され、絶対等級 -1m.5 より明るい恒星は個別に研究できる。
大熊座の小宇宙 NGC3031(M81):局部小宇宙から遠くない2つの小宇宙グループがあり、 両方共大熊座数千kpcにある。Sb型アンドロメダ銀河に似る。大きな中心核と二本の長い渦状分枝をもつ。ひと巻は、ぴったり核にくっつくが、 その後は核から遠ざかる。視線方向が35度、アンドロメダ銀河は15度。渦状分枝は星に分解できる。暗黒物質は帯、繊維フィラメント状で渦状分枝にそうが、 渦巻き構造を横切る繊維状の暗黒物質もみつかる。25個の新星、多くの変光星、ケフェイドも。アンドロメダの1/2.5 の光度。超巨大小宇宙でないが、 巨大小宇宙のなかで明るい。伴小宇宙がないが、2渦状と6不規則のグループ中で支配的。
大熊座の小宇宙 NGC5457(M101) :前述2グループ中の2番目のグループ中に目立つSc型巨大小宇宙。 繊細さ、優美さ。小さく眩しく輝く核から渦状分枝の数が多い。中心核近くは2つ。巨大な恒星の集落は、超集落という。塵状物質のフィラメント。 白ないし青白の星種Iにとむ。このグループは他に4渦状、1不規則。
猟犬座の小宇宙 NGC5194(M51)i:渦状Sc。力強く明るいこわばったように渦巻く分枝。 ダイナミックな形。暗黒物質の帯が多く密。渦状分枝にそう。暗黒帯は側芽、枝分かれがあり、主な暗黒帯に垂直もある。繊維状暗黒物質が中心核にまで延びる。 距離は1300kpc。NGC5195を伴い、渦状分枝が繋がり相互作用。
乙女座の小宇宙 NGC5364:リングをもち、その内外に枝分かれのない渦巻きをもつ。1本は450度、他は540度。厚さ700pc。星像分解はできないが、 渦状分枝中の連なりは見える。
うみへび座の小宇宙 NGC5236:南天、Sc型明るい。数本の渦状分枝は、急速に極めて小さな明るい核から遠ざかっていく。暗黒物質の帯は渦状分枝とともにのび 場所によっては暗い空間に溶け込む。
エリダヌス座の小宇宙NGC1300:棒渦状小宇宙のすばらしい古典的典型。小さな中心核から両側に 真っ直ぐな棒が伸びている。ある距離まで行くと棒の端が急激に鋭角をさえなしてまがり、渦状分枝をつくりだす。その渦状分枝は、大きく核のまわりを巻いて、 その角度は、200〜220°にも達する。この小宇宙でもっとも明るい部分は、中心核と、棒から渦状分枝が出る部分である。暗黒物質は、2本の帯となってみえ、 棒が核から出てくるあたりに端を発し、棒にそってのび、折れ曲がり、渦状分枝に沿う。渦状分枝が棒から出るあたり、渦状分枝の先端に明るい物質のかたまり もよくみえる。枝分かれは、全く見られない。
アンドロメダ座のもうひとつの小宇宙 NGC891 : :正確に真横から見える渦状小宇宙で最も近いもの。Sb型。チリ状物質が多く、暗黒帯が外縁部を隠し、中心核だけが 見える。暗黒帯から垂直にセンイ状暗黒物質が30pcも延びる。距離は2.5Mpc。
乙女座の小宇宙 NGC4594(M104 ソンブレロ銀河) :滑らかな強い暗黒帯をもつSa型。はるかに厚み もあり、輝く領域のうち、チリ状物質で隠されているのはほんの1部分。平面状と球状に分かれている。平面状成分は暗黒帯に縁取られた円盤のなかに収まり、 その円盤から球状部分が霧か雲にように両側にひろがる。球状成分にひたされた幾十もの光点が見られる球状星団がある。5Mpc。
ケンタウルス座の小宇宙 Centaurus A NGC5128 :驚くべき外観。背景はほとんど扁平さのない楕円小宇宙。それを横切る強力な、同時に奇妙なかたちをした暗黒帯が走っている。 暗黒帯は真ん中のあたりで千切れたようになっている。この暗黒帯は普通の横からみた渦状の暗黒帯より厚みがあり、混沌としている。かなり強力な 電波の輻射源。暗黒物質あたりと、視直径2度ほど広い範囲から。 ..
V= ω・R ....(13)
公転周期:最短はS0型NGC411の中心核は280万年、次にSc型のNGC2683で640万年、E7のNGC3115は880万年、最長は、SBc型のNGC7640, Sc型の4559の核で、4億年を超える。
速度、扁平度、密度のうち、2つから他の1つを推定できる。扁平度、速度から密度を求めることができ、中心核の密度は、10^-20〜 10^-22 g/cm^3 である。太陽付近の密度は、2 x 10^-24 g/cm^3 である。数100倍から数千倍である。
NGC5055は、数10もの明るい塊の視線速度を測定できる。E.M.バービッジ、G.R.バービッジ、K.H. ブレンダーガストによって、NGC5055 の速度曲線が視線速度によって測定された。中心部の視線速度を引いた速度をグラフにして、右側では全てプラス、遠ざかる。左側は 全てマイナスで、我々に近づいている。滑らかな曲線に乗らないのは塊が平面上にない固有運動をもつから又は測定誤差。
中心付近は剛体回転で、その先、速度は増加が減少し始め、角速度は減少し始める。ある点を越すと速度ω・Rが減少し始める。 主平面と視線のなす角度i によってその速度は cos i を掛けたものになる。実際の速度は、 cos i で割る必要がある。 NGC5055 では i= 31°であった。
不規則II型は極端に質量が小さい。ひとつは太陽の200万倍、他は2000万倍に過ぎない。アンドロメダ星雲の楕円伴小宇宙NGC221も極めて小さい。
I I 型からS0 型へ、Sb, Sa と進むに従って小宇宙の質量が増える傾向にある。最大の質量の銀河は、E0 型の NGC 4486 で、数兆太陽質量もある。 球状星団を多く400ももつ。アンドロメダ星雲や我が銀河系でさえ、球状星団数は140, 119 に過ぎない。M/L 比は、60 もある。
M/L 比という太陽を基準にした質量/光度比は、I I, Scでは比較的小さく、Sb、Eでは大きい。I I 型Sc型では星種Iが多いから。星種IではM/Lは小さい。 Sb、Eでは星種IIが多く、星種IIが星種Iをしのぐ。NGC4486では著しく、アンドロメダの3倍の質量で光量は劣る。
E 型は質量が大きいが体積は小さい。密度ははるかに高い。星種I がみられないことを G. R. バービッジは、ガス状物質から恒星が生まれた説を支持し、 宇宙進化論的説明をする:E型の密度が高いのは、恒星形成前にはもっと密度が高かったとする。恒星形成の速度は密度の2乗に比例する。ガス状物質は なくなり、恒星は星種IIに変化した。渦状銀河は、形成がゆっくりで恒星形成は完結していない。ガス状物質や、高温の巨星、超巨星の若い星もある。 しかし、我が銀河系のガス状物質が2%しかないことは、激しい恒星形成と一致しない。 下の表の殆どの値は米国の天文学者のバービッジ夫妻による。
名称 タイプ 質量(10億太陽) M/L比 NGC 3556 I I 14 1.4 LMC I I 13 4 NGC 55 I I 40 6 NGC 3034 I I 15 7.4 NGC 2146 Sc 18 3 NGC 598 Sc 18 11 NGC 5457 Sc 14 13 NGC 157 Sc 60 1.9 NGC 5248 Sc 50 3 NGC 5055 Sc 55 2.8 NGC 2903 Sb 49 4 NGC 3646 Sb 250 3.2 NGC 253 Sb 300 10 NGC 5005 Sb 90 6 NGC 3031 Sb 150 20 NGC 224 Sb 340 16 NGC 3623 Sa 250 15 彫刻座系 I II 0.002 3 炉座系 I II 0.02 3 NGC 221 E2 1.8 13 NGC 4111 S0 12 13 NGC 3379 E0 100 12 NGC 3115 E7 110 19 NGC 4486 E0 1000 60
銀河系のガスと塵:銀河系の対称面に太陽系は在り、その銀河の対称面に存在するガス、塵の影響は、銀河の対称面との角度依存性から 対称面に垂直な方向でも、0.25等級増加している。つまり、銀河の我々の部分を透かすと 0.5等級、63% が覆われるのである。 遠方小宇宙は、銀極では、1°四方に13個を超えるが、銀河面に近づくと減少し、銀河面から約20度の範囲に外の銀河は、全く見えない。
ハッブル定数は、遠方ほど精度が上がる。銀河の固有運動(単独の銀河で 200 km/sec程度。銀河団中の銀河では 400〜600km/sec) の比率 が下がるからである。しかし、ハッブル定数を定めるには、別の方法で距離を測定できなければならない。
ケフェイド変光星は、銀河系内にもあるが、大小マゼラン星雲中では、ほぼ距離一定のため変動の周期と絶対等級の間との関係が見付かり、 絶対等級を推定する道具として使われる。長周期ケファイドがアンドロメダ銀河に見付かったことから、ハッブルはその距離を推定した。 アンドロメダ銀河は、銀河系に向かっている、(これを視線速度が負という。)そのため青方偏位しているので、これからハッブル定数を 定めることはできない。それよりも遠い銀河には、ケファイド変光星も見付からず使えないので、銀河の最も明るい恒星がほぼ同じ絶対光度 をもつと仮定する距離推定を用いる。これに乙女座銀河団の中の最も明るい銀河 NGC 4321 が使われた。
1954 年バーデは、アンドロメダ星雲中に 22.4 等の短周期ケフェイドを探そうとした。 5m 望遠鏡(23.0 等級が限界)を使って、 (2.5m 望遠鏡では限界が、21.5等であった) しかし、それは見付からず、代わりにくじら座ミラ型変光星を見付けた。 このタイプの変光星は、短周期ケフェイドより1.5 等明るいことが、銀河系の球状星団の観測から分かっていた。20.9 等のはずが、 22.4 等であった。これらの事態は、推定距離のすべてを 2 倍にしないといけないことを示唆していた。他の銀河までの距離が一挙に2倍に 拡大した。なぜ距離推定を間違ったのかというと、ケフェイドが短周期型と長周期型に分かれていて、周期と光度の関係が、長周期ケフェイド は、短周期ケフェイドと違っていたのである。アンドロメダ銀河の中の球状星団と超巨星が、銀河系のそれらよりなぜか小さいこともなくなり、 アンドロメダ銀河自体の大きさも銀河系とほぼ同等以上になった。
1958 年サンデージは、小宇宙の中の複数の最大光度の恒星の平均がほぼ同じ光度という推定方法で、ハッブルの用いた NGC4321 の中の恒星を 5m 望遠鏡で再度調べると、恒星20.8と電離したガス19.0に分離できた。これによって1.8 等級、距離にして 2.3 倍になった。
サンデージは、さらに近傍の小宇宙の距離をケフェイドだけでなく新星をも用いて調べた。これによってバーデの 2倍という数字は、2.75 倍にすべきことが分かった。ハッブルの 540 km/sec/Mpc というハッブル定数は、近傍の小宇宙は、2.75 倍の距離になり、赤方偏移を利用 するその他の小宇宙の距離は、6〜7 倍に増やすことになった。現在(1968年)では普通、ハッブル定数は、75 km/sec/Mpc という値が使われる。 研究者の中には、100 km/sec/Mpsという値も使用される。
ハッブル定数のその後の歴史は、キティー・ファーガソンの"宇宙を計る"(1999)(講談社)によると、1970年代半ばにサンデージは 55(誤差10%)、 1970年代終〜1980年代始には、約50という値を出し、このとき、ジュラル・ド・ヴォークルールは、強く異を唱えた。 1994年、ロバート・カーシュナーのチームは、超新星から宇宙年齢、90〜140億年を出した。ウエンディ・フリードマンのチームが、1993年12月に 光学系を修正したハッブル宇宙望遠鏡を使い乙女座銀河団中のM100に20個のケフェイドからハッブル定数 80 という値を出した。 サンデージは、白色矮星に物質が落ち込んで爆発する Ia 型超新星を使って、50という値を得ていた。 マーク・M・フィリップのIa 型超新星が同じ光度にはならないという発表をうけ、カーシュナーは値を修正し、55から67に上げた。 1995 年フィリップスとその同僚マリオ・ウマイは、60〜70を出した。同年、ナイアル・タンバーは、HSTのケフェイド測定で、M96の距離から、 かみのけ座銀河団の距離を推定し、宇宙年齢 95 億年(誤差10億年)とした。 1996年、サンデージは、NGC4639 の Ia 型超新星とケフェイドの 測定で 57 にし、フリードマンは、種々の測定から綜合して73とした。