1958年に最初の日本製プラモデルが発売されてからおよそ10年間は、プラモデルという新しい商品が飛ぶように売れ「プラモデルと言えば何でも売れた」と言われる時代でした。東京マルイ玩具はそんな中の1966年にメーカーとしてプラモデル業界に参入します。その頃の同社のラインナップは以下のようなものでした。
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発売年 |
発売月 |
キット名 |
SFキット |
1966年 |
11月 |
宇宙(スペース)カー |
〇 |
歩く恐竜 |
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対宇宙船攻撃機 バトル3 |
〇 |
対宇宙船攻撃機 ビーム9 |
〇 |
1967年 |
2月 |
対宇宙船重攻撃機スペースバード |
〇 |
6月 |
トヨタ2000GT |
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水陸両用戦闘艇 マリンコマンド |
〇 |
8月 |
歩く手首 |
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歩く生首 |
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11月 |
ニュー スペースバード |
〇 |
宇宙戦車 スパイダー |
〇 |
ニュー バトル3 |
〇 |
ニュー ビーム9 |
〇 |
参考:昭和プラモデル50年史データベース
シリーズNo.等を勘案して一部記載順を調整
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マルイは2年間で13種類のキットをリリースしていますが、日本のメーカーオリジナルSF(JOSF)プラモデル全盛期に模型メーカーとして産声を上げた同社は、時代を反映して、そのうち9種類がSFキットというSFプラモメーカーでした。上記のうち「ニュー」とついているキットは旧作のパッケージ替えですが、それでも新規商品10種類のうち6種類がJOSFプラモデルというのは突出しています。
この頃SFプラモ以外でも戦闘機、戦艦、自動車がプラモデルの定番商品でしたが、この時期マルイが発売したスケールキットは1967年に国産スポーツカーとしてセンセーショナルにデビューしたトヨタ2000GTだけで、他の全てが想像力にインスパイアされたユニークなノンスケールキットである点が突出しています。
そんな中でマルイSFシリーズNO.7としてリリースされたのがこの宇宙戦車スパイダーーでした。奇しくも昨年(2023年)1月の動く戦車オフ会の俺SFメカコンテストのテーマが緑商会の8輪宇宙探検車「スパイダー」でしたがこちらは1968年の発売ですから、SFビークルとしての「スパイダー」はマルイのキットが1年先輩という事になります。
同社のSFキットのデザイン上の特徴は、まず流麗で破綻の無い楔形流線形の車体です。これが宇宙戦闘艇というカテゴリーだけでなく、宇宙戦車というジャンルに迄適用されている所に同社のデザインセンスが如実に表れています。
SF戦車といえば緑商会も今井科学も大滝製作所やその他のメーカーも多くのキットをリリースしていますが、キャタピラ付きのキットでこのような「宇宙艇そのものにキャタピラを付けたようなデザイン」のメカは他社にはなく、今見ても”有りそうで無い”斬新なデザインと言えます。
その車体のスパルタンな魅力を余すところなく活写した梶田画伯の素晴らしいパッケージ!これが今から半世紀以上前の商品とは思えない新鮮さ!敵のものと思しき宇宙円盤が飛び回る戦場で怯むことなく応戦するスパイダーの勇姿!これこそがJOSFの真骨頂とも言える素晴らしいパッケージイラストです。これがタミヤのミリタリー・ミニチュアシリーズの前年に生まれたキットである所にも驚きを禁じえません。
ここで一度皆さんもページを繰り上げ、スパイダーの箱絵をしばし堪能してみて下さい。
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スパイダーのフォルム |
左はスパイダーのおおよその形を掴んで頂く為に仮組したもの。キットの元のオーナーさんがパーツ袋を開けていた為に小ランナーパーツと透明パーツも取り出せたので、雰囲気が良く分かります。
キャノピー以外にも車体前方のライトカバーが透明パーツで準備されています。
単なる「流星号戦車」のように思われがちなスパイダーですが、二段階に盛り上がった胴体中央部、キャノピーから車体後部につながる絞り込んだ構造とその両側のスリット等、マルイSFメカ独特のテイストに溢れていますね。
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白色成型パーツ |
右はもう一つの小ランナーの白色成型パーツ。先のメタリックブルーのパーツと一緒に撮影すると露出過多になってしまうので別撮影としました。
左上のギザ付き穴無し車輪が最前部の起動輪と最後部の誘導輪(計4つ)で、その下の穴あき車輪が転輪(計4つ)です。真ん中にあるこれもホイールのように見える二つの丸いものは車体後部のロケット噴射口。
また当時のマルイのSFキットで特徴的なのは上半身が一体成型された操縦者のフィギュアです。これはスライド金型などを使わずにヘルメットのフェイスカバーや操縦桿、背中の生命維持装置までモールドされた見所の多いものです。左右の腕の角度が変えてあって操縦者の動きまで再現しています。このフィギュアは同じ意匠でキット別に金型が作られていて細部の違った大小幾つかのものが確認されています。これを見ると「ああ、マルイだなぁ!」と思える不思議なパーツです。
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スパイダーはその後1972年にウルトラ科学シリーズ「ウルトラサターン(初代)」、1973年に科学シリーズ「ウルトラサターン(二代目)」、1974年に0(ゼロ)ファイターシリーズ「0ファイター3号」と再版を重ね、遂に1978年にその最終形である宇宙アニメ―ションシリーズ、宇宙戦隊パートⅢの「磁力戦車」としてリニューアルされます。
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