俺SFメカコンテスト


動く戦車オフ会毎年恒例の俺SFメカコンテスト、2024年のテーマは…
宇宙戦隊パートⅢの
磁力戦車」だ!

★「俺磁力戦車」コンテスト 参加要領

 ・東京マルイのSFメカ「磁力戦車」をオマージュして、参加者自身が製作したSFメカである事。
 ・垂直なスチール壁面を自在に走り回る磁力戦車をカッコよく創作して下さい。
 ・市販キットからの部品流用は自由。
 ・屋内での安全なデモンストレーションが可能であれば、サイズや動力等に関する制約なし。
 ・オリジナル版の「磁力戦車」による景気付け参加も受け付けています。
  注1:俺SFメカコンテストの投票対象はスクラッチ作品のみです。オリジナルキットの参加作品は一般の
      ビジュアル、テクニック、ヒストリカル用の投票用紙で評価して下さい。
  注2:殿堂入りモデラーの作品の得票は、俺SFメカコンテストではなくテクニック票に加算されます。

 さて、それではここでテーマの元となった磁力戦車に関して、作品制作の参考のために若干説明を致しましょう。

 
マルイJOSFギミックの最終形 マグネットパワーの威力を見よ!
 
  いつもこの企画ページの最初を飾るのは、他ならぬテーマとなったキットそのもののパッケージ画像ですが、今回はテーマキット本体の画像ではなく、まずこのキットの紹介から始めましょう。


マルイSFシリーズNo.7のスーパースペースタンク「スパイダー」のパッケージ。
 1958年に最初の日本製プラモデルが発売されてからおよそ10年間は、プラモデルという新しい商品が飛ぶように売れ「プラモデルと言えば何でも売れた」と言われる時代でした。東京マルイ玩具はそんな中の1966年にメーカーとしてプラモデル業界に参入します。その頃の同社のラインナップは以下のようなものでした。
発売年 発売月 キット名 SFキット
1966年 11月 宇宙(スペース)カー
歩く恐竜  
対宇宙船攻撃機 バトル3
対宇宙船攻撃機 ビーム9
1967年 2月 対宇宙船重攻撃機スペースバード
6月 トヨタ2000GT  
水陸両用戦闘艇 マリンコマンド
8月 歩く手首  
歩く生首  
11月 ニュー スペースバード
宇宙戦車 スパイダー
ニュー バトル3
ニュー ビーム9
参考:昭和プラモデル50年史データベース
シリーズNo.等を勘案して一部記載順を調整

マルイは2年間で13種類のキットをリリースしていますが、日本のメーカーオリジナルSF(JOSF)プラモデル全盛期に模型メーカーとして産声を上げた同社は、時代を反映して、そのうち9種類がSFキットというSFプラモメーカーでした。上記のうち「ニュー」とついているキットは旧作のパッケージ替えですが、それでも新規商品10種類のうち6種類がJOSFプラモデルというのは突出しています。
この頃SFプラモ以外でも戦闘機、戦艦、自動車がプラモデルの定番商品でしたが、この時期マルイが発売したスケールキットは1967年に国産スポーツカーとしてセンセーショナルにデビューしたトヨタ2000GTだけで、他の全てが想像力にインスパイアされたユニークなノンスケールキットである点が突出しています。
そんな中でマルイSFシリーズNO.7としてリリースされたのがこの宇宙戦車スパイダーーでした。奇しくも昨年(2023年)1月の動く戦車オフ会の俺SFメカコンテストのテーマが緑商会の8輪宇宙探検車「スパイダー」でしたがこちらは1968年の発売ですから、SFビークルとしての「スパイダー」はマルイのキットが1年先輩という事になります。

同社のSFキットのデザイン上の特徴は、まず流麗で破綻の無い楔形流線形の車体です。これが宇宙戦闘艇というカテゴリーだけでなく、宇宙戦車というジャンルに迄適用されている所に同社のデザインセンスが如実に表れています。
SF戦車といえば緑商会も今井科学も大滝製作所やその他のメーカーも多くのキットをリリースしていますが、キャタピラ付きのキットでこのような「宇宙艇そのものにキャタピラを付けたようなデザイン」のメカは他社にはなく、今見ても”有りそうで無い”斬新なデザインと言えます。
その車体のスパルタンな魅力を余すところなく活写した梶田画伯の素晴らしいパッケージ!これが今から半世紀以上前の商品とは思えない新鮮さ!敵のものと思しき宇宙円盤が飛び回る戦場で怯むことなく応戦するスパイダーの勇姿!これこそがJOSFの真骨頂とも言える素晴らしいパッケージイラストです。これがタミヤのミリタリー・ミニチュアシリーズの前年に生まれたキットである所にも驚きを禁じえません。
ここで一度皆さんもページを繰り上げ、スパイダーの箱絵をしばし堪能してみて下さい。

スパイダーのフォルム

左はスパイダーのおおよその形を掴んで頂く為に仮組したもの。キットの元のオーナーさんがパーツ袋を開けていた為に小ランナーパーツと透明パーツも取り出せたので、雰囲気が良く分かります。
キャノピー以外にも車体前方のライトカバーが透明パーツで準備されています。
単なる「流星号戦車」のように思われがちなスパイダーですが、二段階に盛り上がった胴体中央部、キャノピーから車体後部につながる絞り込んだ構造とその両側のスリット等、マルイSFメカ独特のテイストに溢れていますね。


白色成型パーツ

右はもう一つの小ランナーの白色成型パーツ。先のメタリックブルーのパーツと一緒に撮影すると露出過多になってしまうので別撮影としました。
左上のギザ付き穴無し車輪が最前部の起動輪と最後部の誘導輪(計4つ)で、その下の穴あき車輪が転輪(計4つ)です。真ん中にあるこれもホイールのように見える二つの丸いものは車体後部のロケット噴射口。
また当時のマルイのSFキットで特徴的なのは上半身が一体成型された操縦者のフィギュアです。これはスライド金型などを使わずにヘルメットのフェイスカバーや操縦桿、背中の生命維持装置までモールドされた見所の多いものです。左右の腕の角度が変えてあって操縦者の動きまで再現しています。このフィギュアは同じ意匠でキット別に金型が作られていて細部の違った大小幾つかのものが確認されています。これを見ると「ああ、マルイだなぁ!」と思える不思議なパーツです。

スパイダーはその後1972年にウルトラ科学シリーズ「ウルトラサターン(初代)」、1973年に科学シリーズ「ウルトラサターン(二代目)」、1974年に0(ゼロ)ファイターシリーズ「0ファイター3号」と再版を重ね、遂に1978年にその最終形である宇宙アニメ―ションシリーズ、宇宙戦隊パートⅢの「磁力戦車」としてリニューアルされます。

資料協力:ニューヨーカーさん

スパイダーを含めて5度目の登場となったこのキットですが、時代に敏感なマルイはその時々の純粋SFブーム、怪獣ブーム、スターウォーズブーム、タツノコSFブーム等の時代をキャッチアップした色付けで再版しており、このシリーズもひと目で宇宙戦艦ヤマトブームにあやかったものと分かるパッケージデザインとなっています。
一見「ヤマトか?」と思うもののすぐに「コレジャナイヨ商品ね~」と分かってしまいますが(笑)、 でもよく見るとキャタピラがコイルのようになっていて、何かビチビチと火花のようなものが出ていますね。シャーシ全体にも意味深なオーラのようなものが描かれています。「何だコレは?」
実はこのキット、それまでの4種がシンプルな地上走行キットだったのに比べ、この5版目で驚異の進化を遂げます。それは何と、車体下部にフェライト磁石を装備して、鉄板の壁に吸い付いて垂直に登る!というものでした。
パッケージはそのバーチカル(垂直)登坂能力を一目瞭然で表現した表現と、何よりも珍しい「縦長ボックス」となっています。

資料協力:ニューヨーカーさん

右は磁力戦車とスパイダーのインストの比較です。
ヘッダーデザイン以外は一見全く一緒のように見えますが、よく見ると車体下部に磁石を接着する3と、スチール製の壁に垂直に登攀させる8のイラストが差し替えられています。
つまり「凄いギミックの追加」というのも、実は非常にシンプルな仕掛けの追加だった事が分かります。
小さな改良で大きな成果!単なるパッケージ替えではない素晴らしい改良です。
とはいえ気になるのは「本当にこんな小手先の改修で壁を上ったのか?」という疑問です。
実は20年程前の動く戦車オフ会に、らふろいぐさんがこの磁力戦車を有線リモコン戦車に改造して参加。その作品は見事にスチール製ホワイトボードの垂直面に張り付いて前後進、右折左折を見せてくれました。
ラフロイグさんが言うには、前の晩冷蔵庫の前に落下対応の座布団を敷いて、徹夜で磁石と壁面のクリアランスを調整し、やっと安定して垂直走行が出来たとの事。
そう聞くと、単にキットの裏側にポンと磁石をくっ付けてサクサク走るようなものではないのかもしれませんが、確かにこの機構はマユツバではない事が実証されたわけです。
今なら当時より更に強力なネオジム磁石が100円ショップで気軽に買える時代ですから、今回の企画も結構ハードルが高くはないかもしれません。
 
 さあ、皆さんも想像力とテクニックに溢れた磁力戦車を作ってみようではありませんか。
 


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