爽やか学園-E君列伝 遭遇-
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「E君列伝」
皆皆様に多大な印象を残したE君についての、詳細なデータをお送りするコーナー
それが「E君列伝」であります。それでは、第1話スタート。
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「E君列伝」 (遭遇)
私がまだ爽やか学園に入ってすぐのこと。
オレは前々から興味のあったバスケ部に入ろうと日能研時代の友達と職員室に入っていった。
緊張しながら職員室に入ってみると、その雰囲気を察して話しかけてくれた先生がいた。
「おう。おまえら1年かーー。 ぐしゅ ぐしゅ チーン (ふきふき)」
「ハ、ハイ そうです。あのー バスケ部に入りたいんですけど、、、」
「おう わかった。ついてこい。 ぐしゅ ぐしゅ チーン (ふきふき)」
ぼくらは顔黒でいかにもスポーツマンというようなこの先生についていった。
( 、、、、てくてく、、、、)
「あいたー バスケ部の先生外出中だー。 しゅーしゅー ぶくぶく」
「じゃあ しょうがないから今日の3時に第2グランドに来なさい」
「は、はぁー。」
ぼくらは、きっとバスケ部の先生にあわせてくれると思い、重度の花粉症を抱えるこの先生の話しを信じてしまいました。
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話しどうりに3時に第2グランドにいくと、さっきの先生(松井先生)がハキハキ言いました。
「よーし。ラケットは貸してやるから、2人1組でポンポン始めーーー。」
オレは何か言おうとしたが松井先生(40ぐらい)の爽やかな笑顔を前にして文句を言うなんてできなかった。
(しょうがねぇなー とりあえずやるか。)
持ち前の運動神経で軽ーく基礎的な練習をやり終えようとしているオレ。
ふと右側を見ると、メガネをかけひょろひょろした奴がテニスボールではなく、軍手をポンポンしていた。
「ぐふぐふぅうー 弾まねえなー こいつはよー」
オレはここで気が付くべきだったんだ。こいつの才能に、、、。
根性無しのオレは、(この異様な奴め)と思い、目を背けてしまった。
他の1年も目を背けてしまった。彼は完璧に浮いていた。
それでも彼はやめなかった。
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みんなが彼を意識的に視界の外においてどれぐらいの時が流れただろうか?
彼はいまだ軍手と遊んでいた。(オレが目を背けず彼と向かい合うことができていれば、こんなことにはならなかっただろう。)
すべったギャグを続けるのにはいかほどの精神力が必要なのか。
オレは知っている。
そんな心が芽生えたオレは無意識の内に彼を見ていた。
彼はオレの視線に気付いたらしく、ゆっくりとこちらを見た。
目が合った瞬間、まさに一瞬の内に背中の毛が逆立ち、顔からは冷たい汗が流れ始めた。
(目を背けるなーーー迎え打つんだーーー)。
自分を奮い立たせ、オレは彼とコンタクトをとった。
「どこに軍手なんかあったのー?」
すると彼は、オレの問いに答えずこう言った。
「やる?」
「う、うん」
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パスパス
パスパス
パスパスパス
もちろん軍手は弾まない。
それでもオレはがんばった。
そして、そこには友情が芽生えた。
「あははははは」
「ぐふぐふぅうー 」
二人は笑いあっている。
奇妙な世界ができてくる。
みんながボクラを避けていく。
それでもいいさ。
こいつといれば、でっかいことができそうだから。
───バスケ部をあきらめ、オレの部活動は軟式テニスにきまった。
MASATONのコメント:
いかがでしたか?
ランス様にいただいた「爽やか学園」、お楽しみいただけましたでしょうか?
今回の作品は文学的に見ても高い水準の作品となっています。
とくに本文最後にある、正確な情景描写力にあふれ、七五調の韻を踏んだリズミカルなリリック(詩)が大変印象的です。
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コレニテドロン
初出:1999/10/27
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