電車内にて・後編
◆おいおい!
女子小学生3人組の無差別テロにより、車両内が阿鼻叫喚の地獄絵図、ってトコから。
車内の大半の人間は、すでに氷付けになっていた。まともに動けそうなのは、もはや僕だけだ。
や、やばい!マジでどうにかしないと!僕の頭に、3つの選択肢が浮かんでいた。
1.走って逃げる。(敵前逃亡)
2.拳で黙らせる。(実力行使)
3.つり革で懸垂。(錯乱)
ああ!僕の中の悪魔さんが「3だよ、3を選べ!楽になっちまおーぜ!」と語りかけくる!その誘惑に思わず負けて、目の前にぶら下がるつり革に「ワーイ!」と手を伸ばしかけた、その時だった!
「○○先生って、“美人”だよねー!」
美人!?
「うん、すっごく“美人”だよー!」
「大きくなったら、○○先生見たいになりたいなぁ!」
お、女か! 先生って、女性だったのか!
それが分かった途端、氷付けだった人々はみるみる解凍されはじめた。「おいおい!それならそうと早く言ってくれよぅ」という声無き声が車内にあふれる。人々は、なぜか互いにアイコンタクトを交し合い、そしてなぜか互いに微笑みあった。目を見るだけで分かり合える。言葉など要らない。そう我々は、極寒の戦場を共に生き抜いた戦友なのだから。
車内は再び、おだやかでまったりとした空気に支配された。乗客も再び、困ったような微笑ましいような様子で悪戯好きの天使達を見守っていた。そんな我々の視線には意も介さず、彼女達はまだおしゃべりに興じている。
「でも、○○先生って、××先生にセクハラされて困ってるんだって!」
「えー!あの中年親父、奥さんも子供もいるんじゃなかったっけ!?」
「私、××先生にも無理矢理チューされた事あるよ!」
再び凍りつく車内。
コレニテドロン
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