"ワン・ツー・ドン"って知ってる?
えっ?知らない?昔、NHK教育でやってた音楽の教育番組で、胡散臭いバックバンドと、怪しげな歌と踊りに興じる少年少女が入り乱れてたりするアレなんだけど。
思い出した?子供の頃は何の疑いもなく、歌とか踊りとかを交えた音楽の教育番組だな、って思ってたけど、やっぱりこれも"ノンタック"とおんなじくらいおかしいよね。
だって、考えてもみろ。
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まず、妙にハイテンション薄汚いサルのぬいぐるみのどん君。
「イエーイ!どん君でーす!」
という当時としてもダサさ満点のセリフを声高らかに発しながら登場!
高嶋忠夫しか使っていなかったぞ、イエーイ!は…。さらに「どん君でーす!」の「でーす!」の所で、どん君の目がギョロッ、ギョロッとロンパるのがめちゃくちゃ怖い。
運動チックか?それからメンバー紹介の時もやたらニコニコしてて胡散臭いバックバンド。
やつら、バックバンドの分際でやたらと前に出てきて喋ったり、バンブーダンスの竹を動かす係りだったり、とくにドラマーのクニ河本とか言う名前のヒゲ親父の喋り方が妙に馴れ馴れしいのでイヤ度満点。そして、歌に踊りに大活躍の少年少女達!
某ジャ○ーズ事務所のやつらよりもヘタクソな口パクとともに、「ムトゥ・踊るマハラジャ」のヒロイン(ランガナーヤキ)の歌のように甲高い声で「アイスクリームパラダイス」を歌うのである。
これはいだだけない。踊りもすごい。
"ポーレチケ"に合わせてバンブーダンスを踊りだしやがる。そんな彼らの歌の中でも特に圧巻なのは"宇宙人のテレパシー"でしょう!
ふしぎなふしぎなことば テテテテテテテテテレパシー♪
うちゅうのことばはテレパシー テテテテテテテテテレパシー♪
とおくのほしから やってきた うちゅうじんとはなそうよ♪
りょうてでしんごうテレパシー うちゅうじんもにっこりと♪
この愚にもつかない歌詞に合わせて、人差し指を空高く指差し小刻みにその場足踏みでクルクルまわりだす少年少女たち!
さらにテクノポップス風の曲がいやがうえにも気分を引き立てる!当時テクノポップスといえば、YMOによって泣く子も黙る流行を見せた後に、C-C-Bによって廃れ始めていた代物である。
しかし「ワン・ツー・ドン」は10回の放送中、7〜8回は"宇宙人のテレパシー"を流すという、ものすごいパワープレイ(※)を展開!流行おくれの物を全面におしだす"ワン・ツー・ドン"には、軽薄な流行に流されないNHK教育の真摯な姿が現われているといっても過言ではない!
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ここまで書くと"ワン・ツー・ドン"!は一見、時代に乗り遅れたただのダサダサ、マンネリ、低予算のダサイ音楽教育番組と取られがちなんだけど、これはすべて計算の上の事!
たとえばドン君の目がギョロギョロッとなるのは、マリファナのやりすぎでトリップし、目の筋肉が弛緩しているからで、そのマリファナを与えたのは他ならぬ、ドラマーのクニとかいう怪しげなおっさんなのだ。
そういわれてみると、確かにいかにもハッパ売ってそうな風貌である。彼が若いころには絶対ヒッピーをやっていたに決まってる。
ヒッピーといえば、まさしく"反体制"、"レジスタンス"のシンボル的存在。
そんな彼を起用すると言うことは、ヒッピー文化がニクソン政権を倒したように、NHK教育もまた日本政府の悪政に対し反抗していく意志の表れとも受け取れる。また、女子8人、男子2人という少年少女たちの男女比は、まさに武富士のCMそのもの。
その彼らをダサダサにすることにより、見ている児童たちに消費者金融の利用を避けるべきだと暗示するNHK教育ならではの配慮も心憎い。さらに彼らの歌は、"口パク"によってジャーニー喜○川の児童虐待を厳しく糾弾し、商業主義におぼれるなという警告を含める一方、"妙に甲高い歌声"によって北○鮮の愛国歌を連想させ、ガキのころから反社会主義の思想を深く植え付けるという、絶妙なハーモニーを奏でているのだ!
しかも、“宇宙人のテレパシー”では、アメリカ政府が頑なに否定している宇宙人の存在を言及し、彼らとテレパシーによるコミュニケーションをとることに成功した、と主張するのだから、さすがのモルダーもびっくりだ!
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以上のように、「ワン・ツー・ドン」は音楽というオブラートに包み、自分たちの主張を年端もいかない児童たちにインプリンティングするというプロパガンダフィルムだったことが分かった!
しかも、ドン君はサルじゃなくビーバーだったというのだから、驚きを隠し得ない!
すばらしいぞ!「キング・オブ・教育番組」!
やっぱり、NHK教育ってセンスあるよなー。
コレニテドロン
アイスホッケーで、反則などにより相手チームの人数が少ないときに展開する怒涛の攻めの事。
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初出:1999/05/05
修正:2000/10/01