居酒屋かもめ唄(小学館発行 2000年12月発売 1400円税別 )

表紙がいいです。居酒屋カウンターで一人、酒を飲む男の後姿。太田さんの好きそうな酒の肴が書かれた壁の品書きとその下にある酒瓶。男の後姿は隠居風で一見さびしそうな印象もあるが、何か酒を長年愛してきた貫禄または余裕のようなものも感じる。太田さんが考える居酒屋にたたずむ男のひとつの理想の姿なのだろうか。
 本書は2、3泊の時間を全国各地で居酒屋やバーで酒を飲むことに費やした男の熱き?記録である。
 275ページと若干厚めの本書だが、とても読みやすくあっという間に(と言っても2、3日かかりました)読める。旅行記と言うわけでもなく、居酒屋のメニューやその評論でもなく、その地に根付く人の姿を居酒屋に求め、またその店を作る客に求め、自然に書かれた文章はとても面白い。面白いという印象と同時に何かマニュアル社会に対しての警句のようにも読める。各種の居酒屋チェーンが我が物顔で横行する中、太田さんはその地に根付いたひとつの文化ともいえる店を探り、話しを引き出していく。
 太田さんのキャラクターなくしてはおそらく実現できない本なのだと思う。他のグルメ本とは一線を画す人間紀行ともいえる本だと思う。


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