2001年 11月の有意義な日々

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11月22日(木)    

 風邪は週明け頃に回復。ご心配をおかけしました。

●デビュー当時のお話。
 もう何年も前の話ではありますが、デビューが決まったばかりの頃、私は浮かれまくってました。それはもう、自分の書いた本の単行本が出版されるという、人生最大の夢が叶ったということでこれ以上は浮かれることが出来ないというくらいに浮かれまくっておりました。自分の本が店頭に並ぶんだなー、売れるといいなー、女子高生からファンレターとかくるといいなー(注)、アニメ化するといいなー……という感じの比較的ありがちなドリーム炸裂から、さらには(注:具体的に書くと俗世と一切の関わりを立ち出家せねばならなくなるので割愛)というイタイ妄想まで、自分でも思い出すと壁に頭を叩きつけたくなるような「夢や希望」で脳内を満たしておりました。(注)
 そして、そんな妄想の中でも、比較的ささやかで、ごくごくありふれた願望のひとつに「あとがきを書く」というものがありました。あとがき、それは作家が読者に向けて語りかける魅惑のフリートークコーナー(注)。何しろ私は本を買うと真っ先に後ろのページをめくる「あとがきから読む派」の人間ですから、作家さんの書くあとがきが大好きでしたし、ようするに「やっぱしー、俺も本を出版するってことは作家の仲間入りだしー(注)、作家らしいことしたいかなー(注)、みたいな?」などと考えた訳です。デビューを目前に控え夢と希望に溢れていた私は、自分の作品に賭ける意気込みや抱負や執筆時の裏話や、その他作品の内容に関する細々したなどを熱く熱く語りたいと(注)思っていたのですね。

 あ、いえ、まあ、さすがにそんな思惑までは口にしませんでしたが、口にしないだけで内心では思っていたので(注)、私は当然のごとく担当氏に「あとがきを書きたいです」と言いました。ですが、「あー、高瀬さん。あとがきというのはね、書かなくていいんですよ。むしろ書かない方がいいです」とあっさり却下されてしまったんですね。しかも、その時には「なぜ書かない方がいいのか」という具体的な理由を教えてもらえず。私は担当氏の言うことだからとりあえず聞き入れたものの、何だか釈然としない気分だったのを覚えています。
 で、その時には釈然としなかったその理由を、担当氏はのちに語ってくれたんですが、それはこういうものでした。


※ ※ ※

「作家がね、物語の本文以外の場所で自分の小説について語ろうと思っちゃ駄目なんですよ。あくまでも物語だけで勝負しなきゃいけない。物語以外の部分で語ろうとするよりも、まずはそんなことを必要としない物語を書くことを心がけるように。安易な方法で自作を語ることを覚えちゃ駄目です、それよりも物語の完成度を高めることを覚えないと」

※ ※ ※

 ……私は、ライトノベル的な作風に反して講談社ノベルスという、やや大人向けのレーベルで、しかも新本格ブーム華やかなりし頃にデビュー致しました。そのせいか、普通にライトノベルしか読んでなかった読者の目にはなかなか止まらなかったようで、文庫で「カラミティナイト」を出すまで私の存在を知らなかった人も多いのではないかと思います。講談社ノベルスのコーナーをチェックする人はミステリを求めている訳ですし、ライトノベルを求めている読者は文庫のコーナーを主にチェックする訳で、まあ目に付かないのも当然の事と言えばそれまで何ですが。ですから、単純に、自身の作風だけを鑑みれば厳しい状況でデビューした訳なのですが、それでも自分が講談社ノベルスでデビュー出来たことは幸運だったな、と思うのはそうした言葉を思い返すときです。上記の言葉はいまも私の執筆活動の指針であり、あとがきを書かなかったり日記で自作の内容に言及することを極力避けているのもそんな理由からだったりします。 ていうかデビュー当時の私、めちゃイタイ。

 プロアマ問わず、自分の書いた小説は誰だって深い思い入れがあるわけですが、その思い入れとどう向き合って何に転化させていくかっていうバランスの取り方は、本当に難しいものだなぁと思ったりする今日この頃。






 (注):……書きながら、当時を思い返して、恥ずかしさのあまり頭を掻きむしった箇所。悶絶。




11月16日(金)    

 月初めに引いた風邪が直った頃に、私的な事情で慌ただしい出来事が重なりばたばたしていたら、直ったと思った風邪がぶり返し、現在の熱は39.7分。いろんな事が滞ってますが、とりあえず明日以降にすることにして今日は薬飲んで寝ます。

 おやすみなさい。


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