二月はパン焼き日記と化してましたが、三月は仕事日記にしなきゃアカンですね、ホントに。
それじゃ、私は荷造り作業を再開いたします。とりあえず荷物もゴミも片っ端から段ボールに詰め込んで、整理するのはぜーんぶ引っ越してからだ!<最低
「おそかった!」 うちにいらないパン焼き機あったのに……。
実は何度やってもふっくら焼けずに、自信喪失気味。
その日の気温などにもかなり左右される、ナイーブな料理だということを実感しました。
もし上手く焼けるようになったら、コツを教えて。
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冗談だと思うでしょ?
「まさかそんな、高瀬さん、そんなネタ、べたべた過ぎて誰もひっかかりませんよ」 とか思いますよね? あははは、そうですよね、悩んだ末に買ったのに兄がいらないのを持ってたなんて。パン焼き機の普及率を考えれば、いくら離れて暮らしているからって兄弟揃ってこんな機械を買うなんてことは……そんなことは――
マジでもう遅いって、兄さん!
追記:本日の日記は、書いてて泣きたくなってしまうくらいにノンフィクションです……。
●さて、念願のパン焼き機を購入した際のことですが、私はパン焼き機と一緒に、同じメーカがパン焼き機用に売っている「パンミックス」(注:パンを作るのに必要な材料が全部調合された粉)も買ってきました。とにかく一刻も早く自宅でパンを焼きたかったので、材料を買って来て自分で分量を量る、という作業をすっ飛ばしてすぐにパンを焼きたかったんですね。で、帰宅して機械を取り出し、パンミックスを容器に入れてあとは水をそそぎ、スイッチを押して待つこと5時間。ついに念願の焼きたてパンとご対面です。ああ、これが夢にまでみた……と感涙にむせびながらパンを取り出し、そのほかほか加減に早くもウットリしちゃいながらも、とりあず試食といきましょう。さーて、どれくらい美味しいかな? 期待を込めて一口頬ばると――。
………………。
こ、これは……何と表現すればよいのやら……。一言で言うならば、ごく普通の味というところでしょうか。いえ、もちろん焼きたてでアツアツだし、中身は柔らかいし、外側はパリッとしてます。決してまずくはありません。むしろそれなりに、美味しいけど……「普通に美味しい」という感じ。それが私が自宅で初めて焼いたパンを食べた時の率直な感想でした。ハッキリ言って、ちょっと遠出しておいしいパン屋さんに行けば、多少冷めててもこれより美味しいパンが買えるでしょう。悩んだ末に高い機械を買って、5時間をかけて焼いて、出来た味が、この程度かぁ……。何だかそう考えると虚しい気分になってしまい、私は落ち込みモードに大突入。
……いや、待てよ?
やはり、手間を惜しんで市販のパンミックスなんぞを使ったのが間違いだったのではないでしょうか。もしかしたら、もっと材料を吟味して自分で分量を量って作ればちゃんと美味しいのが作れるのではないでしょうか? そうだ、そうに違いない! ていうかそう考えなきゃやりきれない! このままで終われるか!
そう考えた私はさっそくデパートの食材売場に行って牛乳、小麦粉、バター、を吟味して購入。バターはもちろんカルピス特選バターです。それから東急ハンズに直行してグラム単位で重さが量れる「デジタルお料理はかり」を購入。これで小麦粉の分量を量るのだって完璧だ! よおぉぉぉし! これで美味しいパンが焼けない筈はない! 早速家に帰ってリベンジだぜー!
そして帰宅、今度は自分で選んだ材料を、入念に分量ってからパン焼き機に投入。祈るような気持ちで焼き上がり時間を待ちます。美味しくできますように、ふっくら焼き上がりますように……。そして五時間後、焼き上がったパンを取り出すと、見た目は先に焼いたパンと大差なし。というか、まるっきり見た目は同じ。い、嫌な予感が……。そして、おそるおそるパンを切ってみると……。
かすかな湯気と共に立ち上る、芳醇な香り――。
あまりのふっくら柔らか加減にパンを切り取るのに四苦八苦しながらも、さっそく焼きたてのパンを頬ばると、ン、ン、ン、ンマーイ! 信じられないくらいに美味しい! いやこれはもうバターもジャムも塗らなくていいくらい! 食パンの味、これだけでもう充分満足できちゃう味! ああ、中はしっとりもちもちで、外側はこんがりパリパリ! た、たまらーん! やっぱ決め手は材料だったんだ! うわー、本当にめちゃめちゃ美味しいナリー!
やっぱあれですよ、時代も21世紀に突入して家庭用ロボットみたいなものまで開発されつつある昨今、自宅でパンのひとつも焼けない方が何か間違ってるんですよ。パン焼き機くらい基本ですよね。ああもう、今まで悩んで損しちゃいました。さーて、今度はフランスパンでも焼こうかなー。ピザ生地作って自家製ピザもいいかなぁ。でへへ〜。
結論:パン焼き機買わずして何の人生か!
すると、その途端に口の中で広がってゆく何とも不思議な風味。
ほのかな苦みと酸っぱさを伴った、牛乳というよりはむしろカマンベールチーズに近い味と香り。うがいをして口の中を洗っても胃の奥からこみ上げてくる濃厚なテイスト。嫌な予感を感じつつ、恐る恐る牛乳パックを確認してみると、賞味期限は三日前に過ぎている……。
………………。
………………。
………………。
でもまあ、最初からカマンベールチーズを食べた、と思えば大した問題じゃないかな。
昨年の夏に始まった実家の改築工事が終わりに近づき、二月の下旬には新しくなった我が家へとまた引っ越しするワタクシ。実家はマンションに建て代わり、私はその中のワンルームを一室使わせてもらうことになっているので、引っ越しに際して色々と家電製品を買い揃えなければなりません。洗濯機に、電気釜に、掃除機に、それからえーと、あ、そうだそうだ、焼きおむすび機、これも買わないと!
うっかりしてました、これからワンルームに住むというのに、こんな大事な機械を買い忘れてはお話になりません。もしこの機械を買い忘れたときに、ご飯をちょっぴり炊きすぎてしまったら――ああ、想像しただけでも余ったご飯をラップにくるんで冷凍庫で保管してしまいそうです!<問題ないのでは?
そんな お米も凍るような恐ろしい事態を未然に防ぐために、私は大急ぎで自転車を漕いで近所の家電屋さんへ直行。店内を捜索して、目的の商品を発見すると、コンマ数秒も迷わずそれを買い物カゴへと入れました。我ながら、こうした衝動的な買い物に際しては自分でも嫌になるくらい迅速で迷いがありません。
しかし、問題はここからです。ここからが、私の辿る苦悩の日々の始まりでした。
当初の目的であった焼きおむすび機を無事に確保したものの、せっかく家電屋さんにやってきたのですから、私は少し店内を冷やかしてから帰ろうと思いました。引っ越しの直前になれば、先に述べたように洗濯機なども購入しなきゃいけない訳で、そうした商品の値段なんかをチェックしつつ、ふらふらと店内を歩いていたわけです。すると、
などというシールの貼られた商品が目に留まりました。……一応、補足しておきますと、私は焼きおむすび機なんかを購入した事からもお分りのように、根っからのご飯党でして、パンはあまり好きじゃありません。特に、時間が経ってパサパサになったパンの食感などは嫌悪しているといっても過言ではないでしょう。
「あー、そういやパン焼き機って何年か前にちょっとだけ流行したよなー。何だか、大昔の餅つき機みたいだ――」などと思いながら何となく商品を観察していると、「餅つき機にも使えます」という但し書きが。うわ、「餅つき機みたい」どころか、これは餅つき機そのものでもあるわけか! なるほど、パン焼きと餅つき機、共に機能が限定され過ぎているが故に一過性のブームで終わってしまった商品、その両者を一体化させることによって生き残りに賭けたのか……奥深い、電化製品開発史。どことなくモビルスーツの裏設定にも通じるような、ガンダム世代の琴線に触れる設定です。違う特製を併せ持つひとつの機械――そ、そうか! これは家電の中のZガンダムなんだ! ああ、何だかそんな風に考えるとめちゃめちゃ欲しい! それに私、時間が経ったパサパサのパンは嫌いでも、焼きたてふっくらのパンはめちゃめちゃ好きなんですよ……。
急激に高まる私の購買意欲。しかしながら、それに反して私の財布の中身は実にお寒い状況。仮に衝動にまかせてパン焼き機を買うとしても、そのためには焼きおむすび機の購入を見送らなければならない上に、一度銀行に行ってお金を下ろしてこなければなりません。悩んだ末に、「……ま、何だかんだ言っても、結局はパンと餅しか作れないんだな。毎日そればっか食べるわけにもいかないし……やっぱり駄目じゃん」と無理矢理に考え直してその場を離れ、当初の予定通り焼きおむすび機を購入し、鼻歌交じりで家路につきました。店を出て、寒空の下で自転車を漕いでいると、ヒートアップしていた精神状態も次第に落ち着いてきます。何はともあれ、焼きおむすび機は買えたわけです。この機械を使えば、ただのご飯に醤油を塗るだけで、こんがり&パリパリに焼き上がったおむすびを好きなだけ食べられる訳です。いや、何も醤油だけなんていう貧乏くさい食べ方をしなくてもいいんです、刻んだやゴマとかちりめんじゃこ等を混ぜちゃったりしたら……ああもう、想像しただけでもたまりません! やっぱりパン焼き機なんかより焼きおむすび機だよ! あんなパンと餅しか作れない機械を買わないでよかった! 俺の選択、大正解! さーて、家に帰ったら早速この機械を使ってお料理し放題だ! うふふふ、沢山作るぞー、焼きおむすびとか、焼きおむすびとか、焼きおむすびとか!
――って、ちょっと待て、よく考えたらこの機械、「パンと餅」どころか焼きおむすびしか作れないじゃん、ダメじゃん!
……いや別に焼きおむすび機がダメという訳ではないんです。それどころか、焼きおむすび機は購入以来、すっかり我が家の人気者。我ながら良く飽きないな、というくらい毎日おむすびを焼いてますとも。ええ、それはもう、焼きおむすび機バンザイ! な日々が続いています。
でも……。
そんな満たされた日々の中で、ふっと思う時があるんです……。
「もしも、あの日、あの時、あの場所で、パン焼き機を購入していたら――」と。歴史にifは禁物ですが、妄想にifは必需品。うあああ、ふっくら焼きたて天然酵母のパンが好きな時に焼けたらぁぁぁ……! タイマーで朝食時に焼き上がるようにセットして起きたらすぐにふっくらパンをトースターで(以下略、激しく妄想中)
と、そんな感じで、歯止めの利かない妄想の中でのたうち回りつつ日々を過ごしている今日この頃の私なんですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?