「V6のルール、覚えてるか?」

「もちろん。」

「ファーストコンサートの時、誓ったよな。俺等6人、楽しもうって。
今日も、それだけは忘れるな。」

「「おう」」

いつもより、気合の入った円陣と掛け声。

“俺等6人”

その中に森田が入っている。だから6人。だからV6。


幕が開ける。

みんなに見えるのは森田を除いた5人。

オープニングから、森田が居ないことに泣き出す子もたくさんいた。

でも、ステージ上に居るのは6人。

森田は憑くことを拒み、三宅にしか見えない姿でコンサートをおこなっていた。

三宅はその姿が眼に入る度、妙な胸の痛みを感じていた。

『いつも剛がダンスをきめる度に大きな声援を受けていたのに・・・』


どうしてだろう?本気になればなるほど、時間なんてあっという間。

2時間もあるのに、2時間しかなかった。

気付いたら、もうラストの曲だった。

ゆったりしたバラード。それにのせてメンバーが一言ずつ言葉をのこす。

「今回のコンサート、俺達はいつもと違った。みんなも違ったと思う。
でも、あいつは・・剛は、ずっと俺達の近くにいます。」

「俺も剛君も、今も昔も変わらず、みんなのこと愛してるで。」

「泣いてたら、俺も剛も悲しいよ。みんな笑顔でいようよ。」

「俺、みんなもV6も剛も大好きだぁー!!」

「たとえ剛が見えなくたって、剛はみんなの側にいるし、ずっとV6だよ。」



「キャー。。。。。」



なんなんだろう、この気持ち。

自分がどういう感情でいるのか分からなかった。

喜怒哀楽、どれにも当てはまらないこの気持ち。

森田は沢山の泣き声と歓声を聞きながら、メンバーの言葉を聞きながら、考えていた。

自分の今の素直な気持ち、今まで生きてきた自分の意味を。


一旦、幕は降りた。


残すはアンコールのみ。

今回のアンコールはいつもと違う。1曲のみのアンコール。


「アンコール、アンコール」

いつも以上にファンの声が重なる。


最高潮の時、あのイントロが流れる。

そう「DO YO THANG」

メンバーの必死の想いにスタッフも協力し、なんとか森田の願いを叶える事が出来た。


再び幕は開けた。最後の幕が開けた。

最後の・・・


「健、これが最後だ。」

「えっ?どうゆうこと?」

「さぁ、行くぞ」

三宅は答えを聞けぬまま、森田に体を預け、ステージに上がった。


三宅は、・・・いや、森田は歌わなかった。

ただ、ダンスだけ。気の向くままに踊るだけだった。

その姿はファンが見ても、誰が見ても、まるで森田剛だった。

何かに打たれたファンが代わりに歌い出した。

アンコールの時に近い程の重なる歌声。


それを聞きながら、三宅の目から涙があふれた。森田の涙。

そして、バックダンサーとして踊るメンバーにも熱いものが頬を伝っていた。



イントロが流れた時、誰もが森田剛が出てくれば・・・と願った。

けれど、ステージに現れたのは三宅健。

少し肩を落とした自分に気付き、自分がバカらしく思えた。

そんな夢のようのこと起こるわけない・・・と。


でも、そんな夢のようなこと、起こってしまった。

本当に夢かと思った。


「DO YO THANG」が終わりかけたその時。

「・・・・・・」

「・・・ご、剛・・・」

そう誰かがつぶやいた声に気付く・・自分の意識をもった三宅が・・・。


最初、何が起きたのかわからなかった。

さっきまでなかった意識がある・・剛が抜けたから?

誰が「剛」とつぶやいた?

曲は終わった。でも、だからってなんでつぶやき声が聞こえるくらい静かなんだ?

静か・・なんか違う。静かなんてもんじゃない。

ここにいいる全ての息が止まってしまったような静寂さ。

息もできないほどのことが起こってしまったから。。。


「・・剛が・・剛が・いる・・・見える・・・」

「・・・坂本君・・?・・・」

メンバーの方を見ようと振り返ると、すぐ後ろには森田がいた。

森田は次から次へと溢れるほどの涙を流していた。

こんなことになってからというもの、泣いている森田を見ることが何度かあった。

でも、今、泣いている森田はいつもと違った。

「みんな、今日はありがとう。。。」

「・・剛・・・。」

「・・・坂本君・・みんなも、俺が見えんの?」

「・・ぁ、ああ。声までちゃんと聞こえる。。。」

「えっ?・・なんで?みんな、剛が見えるの?」

「俺にも、俺にも見えてんねん。」

「・・・剛・・よかったね。やっと、みんな剛のこと見えるって。。。」

「ああ・・よかった。。最後くらいちゃんとお礼言っときたいし。」

「・・剛?最後って・・・最後ってどういうこと?」

「健・・・俺、お前がいなかったらずっとさ迷ってた。お前がいたから、
コンサートも終えることができた。もう、悔いは残ってない。。ありがとう。」

「ちょっと、まっ・・」

「坂本君、長野君、井ノ原君、岡田・・・迷惑かけた。ホントに。。。
でも、みんなが必死に俺を探してくれたこと、願いを聞いてくれたこと、すっげー嬉しかった。」

「・・・俺さ、ホントは死ぬ前はソロコンサートやりたいって思ってた。
けど、V6のコンサートで、まあよかったかな。」

くしゃ、っとなった必死の笑顔には、いつもの八重歯が輝いていた。

「・・剛・・・俺等、迷惑なんて思ったことない。」

「・・ありがとう・・・俺、生まれ変わっても森田剛がいい。
・・・そんでもって、また、この6人でV6やりてぇな・・・。」

「なんでだよ、やっとみんな剛のことみえるようになったんだぜ?」

「・・・じゃ。。。」

「「剛!!」」


「ごうっ」


「ダメだよ。V7でもV5でもイヤなんだよ。俺等、V6じゃなきゃきゃダメなんだって。」

「6人でV6なんだよ・・・6人じゃなきゃ意味ねぇんだよっ!!」



「ごおおおぉぉぉ・・・・・・・・・」


































ピーーーーーーーーーー

静かな病院の一室に、一定の音が響き渡る。

「残念ですが・・・」

「ご・・ごう、剛?帰ってこい、剛!!」









『『剛ーーーーー』』










ゆっくりと目を開けた。

最初に見えたのは天井だった。

ここはどこ?

俺は、コンサートを終えて、この命も終わらせたはず。

でも、なんか必死でここにたどり着いた気がする。

ここに来なくちゃいけないって、そして、どうしても来たくて・・・。

俺は今、どこにいるんだろう。。。


「ご・・・ごう?」


誰が俺を呼んでいる?

俺は視線を変えた。

俺の眼に映ったもの。

それは俺のかけがえのない、大切な人達だった。


「剛、お前なんて奴だ。」

「こんなに俺等泣かせといて、生きかえるなんて・・・」


・・・生きかえる・・・


「俺・・生きかえったのか?」

「そうだよ、剛が食中毒で死ぬなんてって思ったけど、さっき、ピーって心臓止まって、
お医者さんも「残念ですが」なんて言うから、もう剛が死んじゃったってみんな泣いてたのに。。。
なんだよぉ、生きかえってるじゃぁん。」

「健〜、お前、言ってることよく分からないよ。」

「だって。。。」

「よしよし、嬉しいんだよな。剛が生きかえって。」

三宅が少し照れを感じながらも、大きくうなずいた。

「ほんま、よっかったわぁ・・・もう流す涙もあらへん。。」

みんな、真っ赤になった目のまま、ホンモノの笑顔を森田に見せていた。


「お、俺・・本当に生きかえったのか?ここ、どこの世界?俺、みんなに見えるの?」

「剛?大丈夫か?混乱する気持ちは分かるけど、ここは、正真正銘“生”の世界。」

「そう、それは俺達が保証する。」

「どこの世界って・・・もしかして、例のやつ体験しちゃったの?」

「なんや?例のやつって?」

「ほら、“生と死”をさ迷うやつ。“三途の川”とか渡りそうになってたりした訳??」

「・・・・・・・」

「・・剛?・・・」


「俺、死んだはずなんだ。死んだのに、それに納得できなくて、霊となってこの世に生きることを決めた。
でも、俺の体は健にしか見えなくて、それでみんなに迷惑かけて、それで、やっぱり逝こうって決めたんだ。
最後のコンサートで、逝こうと、もう悔いなく逝けると思った。
だけど、みんなが呼ぶんだよ。「いくな」って。「かえってこい」って叫ぶんだよ。」

「あれは、生と死をさ迷っていたのかもしれない。。。」

「俺が見ていた夢の中の5人と、ここにいる5人の声が重なった時、戻らなきゃって・・・」


「そうか・・そんなことってあるんだな。。。」

「夢の中の剛だけでも、もしも、逝っていたら・・・」

「・・・きっと、死んでた。いや、絶対に死んでた。。。俺、どっちの俺もみんなに助けられたんだな。」

「まあな、俺らグループじゃん。6人でV6なんだよ・・・6人じゃなきゃ意味ないんだ。」

「あ・・・」

「何?」

「今の言葉、夢の中の健も言ってた・・・。」

「俺、剛の夢の中でもいいこと言ってんじゃん。」

「お前、調子に乗りすぎ。。。」

「えぇ、なんでぇ?いい発言したのに。。。」



懐かしかった・・・この空気、この笑い声、この笑顔、この6人。


俺の居場所はここだとはっきり分かった。

一番居心地のいい“V6”という、この場所。



生きること。死ぬこと。

この2つはいつも背中合わせなのかもしれない。

けど、もう俺は恐くない。

悔いの残らない今日を生きればいいだけだから。

そんなことは簡単。

この5人がいれば、V6があれば、俺はなんでもやっていける。

 

*************** ALIVE and DIE 完 ***************

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