「剛?・・・剛??」
「あっ?わりぃ、ぼーっとしてた。。。何?」
「だからぁ、次のコンサートどうゆう感じにしたい?」
「・・・もうコンサートの季節か。そうだなぁ・・・わかんねぇ。」
「もう、剛も出るんだからちゃんと考えてよ。」
「・・・出る?」
「ああ、坂本君に許可もらったんだ。コンサートの時、少しなら剛に体を貸してもいいって。」
「えっ?坂本君が?・・・そう・・・。」
「・・・剛、嬉しくない?」
「いや、そうじゃないけど・・・」
「けど、なに?」
「俺の曲はやらないで欲しい。」
「なんで?歌いたくないの?」
「歌いたい。でも、俺の曲は俺の姿で歌いたい。そうじゃなきゃ意味がない。」
「剛・・・分かった。」
コンサート。
森田が何よりも大好きだった仕事。
一番最高な自分を感じて、すぐに返ってくるファンの反応が気持ち良くて、あの胸に響くBIGな音がたまらなくて。
俺はこれをやる為に生まれてきたんじゃないかと思うくらいだったコンサート。
けど、もう俺の姿であの胸の鼓動を聞くことはない。
もっと、感じていたかった。
今年も、来年も、再来年も、これからずっと先も・・・。
こうなると、思うことはただひとつ。
・・・まだ生きていたかった・・・
もし、神様というものがいるのなら、願いを聞いて欲しい。
俺を生き返らせてくれ。と・・・。
「そうか、剛がそんなことを・・・」
三宅はさっきした会話を坂本に報告した。
「うん。・・確かに、剛のソロって剛じゃなきゃ通じない。剛だから歌えるんだ。」
「ああ・・・分かった。今回のコンサート、ソロはもちろん、剛の好きだった曲も全部カットしよう。」
「そうだね。」
新曲発売、それによる音楽番組出演が多くなっていた。
「剛、本当に憑かなくてもいいの?」
《「ああ、いい。」》
「剛なんだって?」
「憑かなくていいんだって。」
三宅は同時通訳係り。
「剛、お前踊りたいんだろ?ちょっと踊ってなかったなかっただけでもうずうずしてたじゃねぇか。」
《「ホントにいいんだ。」》
「ホントにいいって。」
「そんなに言うなら無理にとは言わないけど、遠慮だけはするなよ。」
《「遠慮なんかしてない。それに、憑くのは井ノ原くんじゃないし。」》
「・・・これは伝えるのやめとく。」
「健、なんだよ、剛なんて言ったか言えよぉ。」
こんなコミュニケーション、久しぶり。
でも、森田に昔の元気はない。
それは当たり前と言えば当たり前なことだけれど・・・。
「最近ずっとああなの。いつも一人で何か考えてる。俺が何聞いても「大丈夫」としか言わない。」
「俺、ホンマのところ、何してあげたらいいのかわからへん。」
「ああ、下手に傷つけちゃいそうで・・・」
これらの言葉、はっきり聞いた訳じゃない。
けど、森田はみんながこう思っていること、態度で感じて分かっていた。
どんなに森田が悩もうとも、時は過ぎていった。
季節は真夏。
コンサートのリハーサルも大詰め迎え、本番も1週間後に迫っていた。
この頃には、魂だけであるけれど、森田がいることに不自然さを感じなくなっていた。
でも、それは事の全てを知っているメンバーだけ。
周りには、ただ、怪しい行動が多いグループにしか映っていなかった。
これが、V6にとって、森田にとって、大きな事件をうむことになってしまった。
<V6、宗教狂い?!>
週刊誌のTOP記事。
V6の行動が変になったという情報を入手した記者は、毎日周りをはっていた。
それに気付いてなかったメンバーは、死んだはずの森田と会話しているのを聴かれてしまったのだった。
これを記者は「宗教思想」にはしっているのだと解釈した。
「はぁ・・・」
出てくるのはため息だけ。
「・・・剛は?」
「わかんない、そこらへん散歩してくるって言ってた。」
「・・・どうしたらいいんだろう。」
「宗教関係はほっとけばファンの子が絡んできて大変な事になるよな。」
「無視は出来ない、誤解とかなきゃいけないよな・・・」
「問題は、なんて言うか。」
「それだよな・・・真っ向から否定したら剛が傷つく、剛は死んだと言うみたいなもんだもんな。」
「かといって、魂がここにあるって言っても大騒ぎになるし。」
「信じてもらえんで、結局宗教になってしまうかもしれへんし。」
「「・・・はぁ・・・」」
これを少し離れた場所から全て見ていた人がいた。
「俺のせい。全部俺が引き起こした。俺がみんなを苦しめている。」
・・・こんなことを思っているのは森田しかいない。
なす術がなく、メンバーはノーコメントで通すしかなかった。
コンサート前日になってもそんな日が続いた。
「健・・・頼み聞いてもらいたい。」
「改まっちゃって、何?」
「明日のコンサート、やりたい曲がある。」
「えっ?だって、もう全部編集されてるんだから今更変えるなんて無理だよ。」
「頼む、どうしてもやりたいんだ。」
「剛・・・そんなにやりたいって何を?」
「・・・DO YO THANG」
「だって、剛ソロはやりたくないって・・・どうして?」
「やりたいんだ・・・」
「剛・・・何かヘンなこと考えてるんじゃ?」
「違う、ただやりたくなっただけ。・・・頼む、やらせてくれ。」
「剛・・・分かった。そんなに言うならちょっと相談してくる。」
三宅はすぐにメンバーのもとへ向かった。
「ねぇ、今更コンサートの曲変えることできる?」
「曲?まあ、アンコールは何通りか変更できる曲は用意してあるけど。」
「そうじゃない、全然考えてなかったやつ・・・」
「それは無理だろ。コンサート用にアレンジしなきゃいけないんだから。」
「でも、なんでそんな急にやりたいなんて、何を?」
「・・・DO YO THANG」
「はっ?DO YO THANGって剛の?」
「うん。」
「それは剛が嫌だって、そう言ったの健だろ?」
「剛が、さっき、自分でやりたいって言い出したんだ。」
「えっ?剛が?」
「うん、やりたいって。でも、どうしてやりたいのか聞いてもはっきり答えてくれない。」
「・・・今からじゃどうやっても無理・・だろうけど。」
「けど、あの剛が、俺に「頼む」って頭下げるんだ。本気の眼だった。俺・・・」
「やらせてあげたい。か?」
「うん・・・どうしてもやらせてあげたい。」
「ホント、間に合わないかもしれない。そして、たくさんの人に迷惑をかけることになる。
頭をたくさんさげなきゃならない、それでも健はいいのか?」
「うん、大丈夫。」
即答だった。森田の願いを叶えてあげたいという決意は固かった。
「分かった。じゃあ、健は剛と一緒にダンス考えてこい。」
「えっ?先に頼みに行かなきゃ。」
「それは俺が行ってくる。」
「坂本君・・・」
「剛は命の恩人だからな。俺だって剛の為に出来る事、やってやるよ。」
「ありがとう、坂本君。。。」
「まだ、出来るって決まってないぞ。けど、絶対やらせてやる。だから、最高のダンス考えろって剛に伝えとけ。」
「うん、分かった。」
坂本はすぐに部屋を足早に出て行った。
そして、暗黙の了解のごとく、他のメンバーも“頭を下げに”坂本の後をついていった。
−コンサート当日−
それぞれがたくさんの想いを抱えたまま、この日がやってきた。
今日が
“運命の日”
*****************第7話 終わり*******************
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