同行したゴク・ジェンヌ会員による花組記録リレー。 トップバッターは一先ずワタクシ、管理人・猫丸です。 いやぁ、3公演も書けないよ〜〜、とかなり切羽詰った状態で行った大阪で、 寝不足の勢いを借りて、二方を押しきって来ました(笑)。 そのくせ、〆切破ったら罰としてハンターダンスね、と云ったのもワタシです。 ぱきらさん、志乃さん、本当にありがとうございました。 |
云わずと知れた、匠ひびきことチャー様のお披露目&サヨナラ公演の本作品は、18年ぶりの再演の本作は、フランス映画を意識した(らしい)、第1次世界大戦も終わった1920年頃のフランスを舞台に、全く異なった世界に住む男女の愛を描いた作品。
チャー様が演じるのは、温厚篤実にしてパリジャンならではのユーモアも解し、でもダンゴは苦手な退役軍人クロード・ドゥ・ベルナール公爵。大鳥れいはヒロイン、シャロン・カザティ。パリで初めてのマヌカンであり、貴族や実業家の間を渡り歩く、物憂いムードの女性。
全く違う世界の住人であるシャロンに一目で心を奪われたクロードを諌め、彼女を巡る恋の勝負に挑むのは、2番手に昇格の春野寿美礼演ずるダンサー志望のジゴロ、ルイ・バランタン。
しかしクロードには、軍隊時代の同期にして古馴染みの貴族、ミッシェル・ドゥ・プレール伯爵(瀬奈じゅん)の妹、フランソワーズ(遠野あすか)なる婚約者が…。全くタイプの異なる2人の女性の間で気持ちを揺らすクロード。
エヴァ(矢代鴻)、シャルル・ドゥ・ノアーユ伯爵(夏美よう)の束ねるクラブで、酔漢に絡まれるシャロンを助けたことから、2人の間は急速に近づき、恋をしない筈の彼女は、クロードに密かな恋心を抱く。
己の本当の気持ちが何処にあるのか分かりかねている彼の元に、その婚約者・フランソワーズが、伝言を伝えにやって来た。
「シャロンが銀行家のジョルジュ・ドゥ・ボーモン伯爵に連れられ、『青列車』(サロントレインなんですかね)に乗ってニースへ向かおうとしている。帰ってからでは遅いかもしれない」、と。
それは、シャロンの気持ちを知り、彼女を思うエヴァがクロードに託した伝言だったが、それだけの言葉で事情を察したクロードの様子にショックを受けるフランソワーズ。
しかしクロードは、婚約者の胸のうちも知らず、ルイと共に『青列車』へと乗り込み、シャロンを取り返そうと策を巡らす中、機会に恵まれて彼女と旅に出る約束を交わす。琥珀色の雨が降るという、北イタリアのマジョレ湖へ共に行こうという約束を…。
だが、そんな甘い約束は旅先に乱入して来たフランソワーズにより、叶わぬ夢となる。自分とは違い過ぎる少女・フランソワーズにシャロンは手厳しい言葉で彼女を追い返すが、クロードは妹を追ってきたミッシェルと共に滞在先のホテルから婚約者を追うべく姿を消した。シャロンに別れの言葉だけを残して。
クロードが意のままにならなかったことに、内心苦悩するシャロンに、ここぞとルイが語りかける。
「君に相応しいのは同類のオレだけだ」
そして2人はニースのホテルから姿を消し、クロードがシャロンを過去の女性として忘れかけていた1年後。
彼女とのきっかけになったクラブ『フルール』に、妻・フランソワーズ達とやって来ていたクロードは、忘れもしないシャロンの姿を見つけてしまう。これまでの生活は偽りだったことに気づかされ、色褪せかけていた思い出が急速に蘇る。
家庭も仕事も何もかもをかなぐり捨て、いつかの約束を果すべく、オリエント急行の待合室で語り合う2人。
シャロンは自分を飾りではなく、1人の女性として認めてもらえる喜びを素直に見せ、まさに列車が発車しようとしたその時、来る筈のない人、フランソワーズが待合室に現れた…。ま、そんな内容で。主人公・クロードは、一見宝塚のお芝居には珍しい、女性を大切にする紳士的な男性に見えるのですが、ずーっと観ていると分かる、その大きな勘違い。よく考えると、シャロンとフランソワーズを天秤にかけています(笑)。
オープニングですが、タンゴの群舞は、さすがに『ダンスの花組』。ダンス好きならうっとり見惚れること請け合いですが、何ゆえあんなに無意味な出入りを繰り返しているのか…。とにかく、袖から花道から、わらわらとカップルがやって来ます。
中盤、上のあらすじで云うとシャロンとクロードが再会した辺りまでは、それなりにテンポを保ってお芝居が進行しているのですが、その先がど〜〜にも冗長と云うか、ダレてると云うか。
ニースでクロードがフランソワーズを追って行くシーンか、1年後のクラブでの再会のシーンで終わらせてしまっても全然問題ないのでは?
とにかく終盤がダレてしまって、観ているのも辛いと云うのが正直なところ。どうしてもラストのマジョレ湖のシーンを入れたいんだったら、やっぱり婚約者を追ってニースを去ったクロードが、1人約束だけは果すべく、マジョレ湖を訪れて、そこでシャロンと再会…って形でも良かったと思うのですが、どうか。
また、肝心のシャロンと云う女性が、えらく感情表現の少ない役で、一体何時恋に落ちたの〜〜ってかんじ。せめて彼女の心境を表現するダンスなり歌なりを、ソロかチャー様とのデュエットで表現して欲しかったなぁ。そのクロードに拘る理由もよくわからん。ただ、『魔性の女』の雰囲気はばっちりです。
ニースのホテルからルイに手を引かれ、『セ・ラ・ヴィ』を歌うシーンなんて、退廃の香りがぷんぷんと(笑)。
このシーンは舞台と銀橋に、クロード・ルイ・シャロン・フランソワーズが立って、次々に歌い継いで行くのですが、うーん、これはチャー様とあすかちゃんは不利と云うより、苦しいよなぁ…。
花組の観劇記録を書いている以上、免れられない話なので、仕方なく正面突破で行きますが、『ミケランジェロ』でも物議を醸したチャー様の演技&歌。
このお芝居がそもそも、クロードが回想を独白しているところから始まるんですが、ううう、これはやはり、ちと問題が…(汗)。
クロードなる男が、割合に淡々としているシーンが多いせいか、そこまで気にはならないんですが、本当に最初のクラブの女と会話を交わすシーンで、「君、可愛いね」と、女の子に触れるんですが、申し訳ない。あんまりにも気持ちがこもってなくって、まるっきりお世辞か社交辞令にしか聞こえませんでした。
一応云い訳なんぞしてみると、まあ、彼の真意では確かにどうでも良い娘なのかもしれませんが(雨でシャロンを思い出しているので)、それにしたって、あのどうでも良さは、却って可笑しいくらいで…。
その淡々さ加減が、クロードにマッチすることもあったんですが、まあ、やはりちょっと厳しかったかな。
歌に関してはもう、ノーコメントってことで勘弁して下さい(笑)。
ただ、2日間3公演をびっちり観たところ、まだ確実に上手くなっています。東京に来る頃には、それなりに抑揚もついてるんじゃないでしょうかねぇ。
みどりちゃんは、予想以上の妖艶さ。気だるい、とか、アンニュイ、とか、そんな形容詞の全てが当てはまるようなハマりっぷりでした。
まるで蝶のように気まぐれで、誰の手にも留められない女性、とでも表現しましょうか。
心情が窺い知れないのは演技力云々より、これは脚本・演出の問題ではないかな。ただ、あのドレスはボリュームがあって、なおかつメリハリのくっきりした体型じゃないと映えないんでしょうね。
ラストの待合室で、酒にでも酔ったのか突然「シャロン、可愛い。君が抱きたい」とか云い出すクロードを(笑)、余裕たっぷりにあしらうシーンは、何やら貫禄めいたものもありましたが、何しろクロードが台詞と全くかみ合わないムードなので、微妙どころか露骨に食い違っている演技(笑)。
ルイのオサは、ワタシ的に新境地のイメージ。(花組って『ルードヴィヒ〜』と『ミケ〜』しか観てないので)
あのお坊ちゃん風爽やかテイストのオサがジゴロかぁ…と思っていたのですが、もう、登場のシーンからギンギンに放たれているジゴロオーラ。
珍しく髪をオールバックにして、シャープなラインに片方だけが上がる皮肉っぽい笑い顔。
擦れててしたたかで、冷静にクロードとシャロンを観察していて、公演ポスターはまさに、この3人の関係を集約した写真だったのね、と、そんなところにまで感心してしまったくらいでした。
歌は相変わらず伸びと深みのある声。『セ・ラ・ヴィ』の諦めたような歌詞の歌など、1日でも聴いていたいくらいでした。ホントに。
ただ、シャロンの仕事(マヌカン)をクロードに告げるシーンで、「マヌカン…ってんだそうですよ?」って云い方はちょっと…。そりゃ、パリのジゴロじゃなくて、江戸っ子だっつーの(笑)。
イメージ的にはどうしても、あさこのミッシェルのような役をやってるイメージがあるのですが、仕草やちょっとした表情など、まさに女を転がすジゴロの顔。お芝居上手かったのね〜〜。
タンゴを踊るシーンでは、相手役の喉をわし掴みにして踊る不思議なダンスを、危険な男のムードで決めてくれていました。でも、回が進むごとに、掴みっぷりが控え目になってたなぁ。喉輪状態になってしまったんだろうか…。
そして、こちらはどっちかって云うとジゴロなイメージのあったミッシェル・あさこ。
後ろ髪がえらい長くて、「はて、一体何のために…」とかずーっと考えていたのですが、そうか、スカーレットに向けて伸ばしてるんだよ。とほー。
ミッシェルは『粋でさばけた貴族』だそうで、クロードとも軽妙な会話がメインでした。
当時の模範的な貴族がクロードだったとすると、やはりかなりさばけた男ではありますが、やはり貴族は貴族。最後のクロードの心情までは理解出来なかったようですが、友と妹を大切にしている、それはそれで出来た貴族のようであります。が。如何せん出番が少ないのが残念。歌は歌ってないしなー。
でも、クロードの家でタンゴについて語るクロードに、「それで興味がないのか。は、は、は、は〜〜」とからかうシーンなど、全体的に和むシーンが多かったです。
フランソワーズの遠野あすかちゃん。宙から嫁いで良い役貰えるようになりましたね〜〜。でも、カツラは変えた方が良いと思うわ。
彼女は登場するシーンによって、かなり状態の違う演技になるので、マッチする時と上滑りしている時の差があったり。一番はまっていたのは、ニースのホテルで、シャロンをシャロンと知らずに会話している朴訥な少女の姿でした。
そもそも役が幾つくらいを想定しているのか分かりませんが、印象としては10代の少女。
シャロンの対極として描かれている役なので、それで良いのかもしれませんが、クロードが大切にする理由が、これまた分かりにくかったり。婚約者じゃなくて、フランソワーズの片思いで、クロードには妹的な存在とかだったら、また違った感想だったと思いますが。
シビさん(矢代)率いるジゴロ軍団(蘭トム・ゆみこちゃん・みわっち・たまおさん等々。←おい)は、さすが花組と唸らされる濃厚さ。特にゆみこちゃんのダンス。腰つきヤバすぎ(笑)。
蘭とむくん・ゆみこちゃん・たまおさんの3人並んだセンターは、すみれコードぎりぎりのジゴロ(笑)。特に前2人ったら、若いのに巧いったら。
シビさんの歌は、今回密かに期待していたのですが、やっぱりホレボレする歌ですねぇ。喋り方も、独特にハスキィな声で魅力的。ジゴロの走りで裏の元締め・シャルル・ドゥ・ノアーユ伯爵(夏美よう)との、大人な恋のやり取りも、メインの4人とは違ったところで楽しめます。ムーディーで良いですなぁ。
それにしても脚本の内容は兎も角(おい)、柴田先生の演出は本当に大好きです。役の演出というよりも、世界観の演出と云いますか。盆やセリを多用して、街の空気の流れとか、世界から切り離された2人、みたいな情緒的な演出が。
ショウは藤井大介先生によるお酒のショウ『Cocktail』。
確かにカクテルの名前には、色々と面白いエピピソードが隠されていて、宝塚向きの題材だとは思ったんですが、いざ始まってみたならば、まるで強烈なスピリッツをストレートで飲んだかのような衝撃(笑)。
そもそも幕が上がって、上手と下手にバーテンダーの姿で出て来たシェーク(夏美よう)とステア(梨花ますみ)が、シェーカーを振りつつ「マティ〜ニ〜!」とか叫んだシーンだけで猫丸笑死状態。宝塚の、それもショウであんなに笑ったのは初めてでした…。
(注:所謂マティーニはシェイクしないので。しかしそれ以上にハッチさんの声が可笑しかった)
ライトがつくと、舞台には原色キラキラのお衣装に身を包んだ花組さんが、手に手にカクテルを持って勢ぞろい。賑やかで眩しく、ワイワイとお祭り騒ぎのようにダンスが繰り広げられます。
そしてワタシが今回、密かに期待していたチャー様リフト。チャー様がみどりちゃんにリフトされるのですが、その前に銀橋で口喧嘩をしている2人。
「ナルシス男!」「お転婆娘!」と、仲良く銀橋で罵り合っているのですが、みどりちゃんなどアジャーニを連想させるようなじゃじゃ馬っぷり。(まだ『カナリヤ』観てないんですが)
そんなみどりちゃんにリフトされたチャー様は、何だかとっても嬉しそう(笑)。同じ女性同士なのに、娘役が男役をリフトしているのを見ると、「重くないかなー、大丈夫かなー」と心配になってしまう理不尽さ(笑)。
フレンチカンカン風のダンスで華やかに盛り上がったあとは、DA PAMPの曲に合わせてブレイブ・ブル(春野寿美礼)が登場。『テキーラ(情熱)』です。バスケットボールを手に、サポーターまでつけた、完全バスケモードのオサの爽やかな笑顔ったら!!
「僕はハイスクールのバスケットボールプレイヤー。彼女はチームのチアガール。将来はNBAで活躍するのが夢なんだ!僕はバスケが大好きさ!!」
とか、今にも云い出しそうな爽やかっぷり。…嘘つき、ジゴロのくせに〜〜(笑)。
ところが、やにわにオッケてしまって足を怪我してしまったオサ。肝心の試合ではディアブロ(蘭寿とむ)率いるエル・ディアブロに押されっぱなしで勝負にならない。見兼ねた恋人のエバ・グリーン(遠野あすか)が、オサにテキーラを飲ませると…。
太陽は晴れやかに微笑み、パワー全開のオサ。格好良いシュートで、見事チームを勝利に導くのであった、っておい!テキーラのアルコール度数は40%前後、およそビールの10倍ですので、そんなもん飲んで、バスケなんてスポーツをしたらいけません。ほぼ間違いなく倒れます。
ハッチさんバーテンダーが、「スペシャルドリンク!」とか云って渡しているのですが、多分、エル・ディアブロの陰謀でしょう(笑)。
話は本題に戻って、このショウではJ−POPが多用されているのですが、どれも予想ほど気にはならなかったものの、この曲だけは苦しかったと…。やはり、DA PAMPの歌を娘役キィで歌うって、無理がありますね…。
ここでもラストにオサが、あすかちゃんに襲われて(?)います。全体的に、宝塚での役における倒錯が多かったんだなぁ…。と、ひとり納得した訳は、先刻までの爽やかさから一転、ヤンさんこと安寿ミラさんによる振付『リキュール(液体の宝石)』がこのあとに続くから。
修道士姿のプリメーラ(瀬奈じゅん)が銀橋を渡っていると、壁画の前で妖しい気配に見を震わせる。立ち止まるとそこには、カクテルを手した謎めいたステアの姿。カクテルを飲むよう迫ってくるステアから、プリメーラは必死で逃れるものの、敢え無くシャルトリューズ(彩吹真央)によって飲まされてしまって、注目の壁画@グラッド・アイ(匠)との官能のダンスが始まる訳ですが、ここで再びカクテルマメ知識。ゆみこちゃん演ずるところの『シャルトリューズ』とは、カクテルでなく、薬草系リキュールの名前。18世紀にフランスの山中にある修道院で、まさに生まれたお酒なのでした。確か、今でもその修道院しかレシピが残っていなかったんじゃなかったか…。別に、飲んでも媚薬に酔ったあさこみたいにはなりませんので(笑)。
さて、カクテルに酔わされたか、プリメーラが壁画に口付けると、その中から宝石に飾られた愛の化身・グラッド・アイ(中性)が姿を現し、魔性の魅力でプリメーラを翻弄します。まるでオットーを彷彿をさせるお衣装で、yター様に襲いかかられる(失礼な)あさこ。ヤンさんすごいよ、大胆な振付です。仰向けに倒れたプリメーラに上にグラッド・アイがのしかかり、首を振って逃れようとするところに口付けようとしたり、シャツの襟を留める紐を解いて、襟ごとがばっと開いたり。(インナーも一緒に掴んでいるらしい。大胆だなぁ…)
最初は抵抗の色を見せていたプリメーラも、最後にはグラッド・アイに引き寄せられ、至福の表情で宝石箱の中に沈んで行き、静まり返った修道院の中を、再び修道士たちが歩んで行き、カルア(蘭寿)もまた、絵の中からの妖しい歌声を聞いて、ステアの進めるカクテルを口にしてしまい…。
んが、カルアには愛の化身(中性)の食指が動かなかったのか、突然ラテンな腰つきで踊り出すカルア。
ここから舞台は一気に色彩溢れる場面、『ラム(興奮)』へ。ドびらびらのサンバ風お衣装を着たジャマイカ・ジョー(匠)の歌う『クンバンチェロ』。スペイン語だかポルトガル語だか知りませんが、あれなら多少歌詞を間違えても、気がつく人はそういないでしょうねぇ。そして極彩色がわさわさと揺れる中、バカルディ(蘭寿)、クリスタル・ブルー(彩吹)、グリーン・アイズ(瀬奈)、ミリオネラ(春野)と、ソロの歌い継ぎ。兎に角深く考えない、ただただサンバだカルナバル〜という、宝塚お得意の怒涛の展開。
やがて舞台には既に出来あがってご機嫌のオーロラ(大鳥)が、カクテル片手に歌っては笑い転げ、終いには横抱きに抱えられながら歌を歌って登場。とても真に迫った酔っ払いぶりで(笑)、最後には男役4人に、横向きに抱え上げられながらも、普通に歌いつづけくれます。すごい、すごいよみどりちゃん…。
ところがお祭り騒ぎの真っ最中、突然の雷鳴が鳴り響き、男たちはオーロラを放り出して一目散に退場。オロオロしながら、最後まで酔っ払ってオーロラも姿を消すと、黒い衣装のブラック・トルネード(匠)が娘役との濃厚に妖しいダンス。歌がとても良かったなぁ、と思っていたら絵莉千晶。…うーん、これからはチェックしておこう。
そして舞台は再びラテンナンバーの中詰。とにかくスパンだラインストーンだで光まくりのサンバな衣装。しかも羽根つき。銀橋ぎゅうぎゅうってかんじです(笑)。
チャー様、オサ、あさこの3人が銀橋に残り、「3人汀夏子状態(c)藤井大介」になると、「オラ〜〜〜〜」と巻き舌でキメるチャー様とオサ。あさこは「オラ!!」と単発で、巻き舌出来ないのでは疑惑俄かに浮上(笑)。
3人が勢いある男役の魅力なら、続くブルースのナンバ『ジン(気品)』は、たまおさんととしこさんのダンスに、チハルアニキのセクシィな歌。アダルトなシーンです。
もう、アニキの歌が絶品!低ーい響きのある声で、これぞまさに男を超えた男役の魅力の見せ場。多分、見るべきところは2人のダンスなのでしょうが、元祖定点観測の鬼・猫丸のオペラは、アニキ追尾モード(笑)。ううう、ディナーショウとかやったら行ってしまいそうだわ。お芝居でもダンディな銀行家役で大人の魅力が素敵〜でしたが、このシーンでゴク・ジェンヌ一同止めを刺されて参りました。必見必聞のシーン。ありがとう、藤井先生っ。
再び、というか更に若さ溢れる男役、ゆみこちゃん、蘭とむ、みわっちが既に濃厚なフェロモンを振りまきつつ、『チャーリーズ・バー』なるお店の中に入って行くと、『ウィスキー(刺激』に。オーネー兼シンガーのチャーリー(と云う役名)が『エロティカセブン』を熱唱する中、左右のお立ち台で悩殺ダンスの男役たち。彼らのこの、その名も「ハンター」。そのまんまだ(笑)。ここでもセンタで歌うチャー様、ではなく、お立ち台のハンターあさこをじ〜〜〜っと観ているワタシ。いやぁ、すごいなぁ花組は。
宙組の爽やかで健康的な舞台を観慣れている身には、少々刺激が強いかも。
それにしても、チャーリーは何故シンガーなのか。ダンサーではいけないのか。これも試練というものかしら…。
バーにはカップルで訪れたらしい、オサとみどりちゃんの姿もあり、オサは下手のカウンターでみどりちゃんやチャー様を眺めながらグラスを傾けている。1人ホールに立つみどりちゃんとチャー様の目が合い、2人でダンスを踊りはじめるけれど、みどりちゃんは結局、恋人であるオサの元へ戻ってしまう。何処と無く『琥珀色〜』を彷彿とさせる演出だけれど、みどりちゃんには、これで退団になるチャー様と、手に手を取って下がって欲しかったような。いや、演出の話ですよ。何だか寂しいかんじがとてもするので。
1人残されたチャー様は、店の隅にあるカウンターで、煙草をふかしながら、この店での思い出を回想し始める。ここからが『ウオッカ(生命の水)』
「ねぇ、マスター。おれ、この店に来て何年になるだろう。この店にはおれの青春が詰まってるんだ。…色んなことがあったなぁ」
そう独り呟くチャー様に、バーテンダー・シェークが差し出すのはカクテル『ミッドナイト・サン』。滅多に見れない真夜中の太陽が揺れるカクテルグラスは…デカい。とてもとても。多少後ろから見えにくくても、演技や仕草でカクテルだった分かるだろうから、是非普通のグラスで出して頂きたい(涙)。あれじゃあ、折角のシーンが急にギャグになっちゃう〜〜。
そしてお店という演出を借りて宝塚時代を語るようなチャー様の口調があんなに淡白でそっけないのは…。これもきっと、千秋楽が近づくにつれて情感がこもって行くんですよね、と苦しい云い訳。
まあ兎に角、チャー様がそのカクテルを飲み干すと、何処からともなく聞こえるチャーリーコール。いよいよ舞台はサヨナラっぽい演出になだれこんで行くのですが、このコールは好みの別れるところだろうなぁ。バラバラと皆がチャー様を呼ぶ声が高まって…っていうのでも良かったような、どっちにしてもあざといような。
その声につられて舞台中央まで戻ったチャー様、立った1人立つ舞台には眩しいばかりのスポットライトが当たり、チャー様の歌の盛りあがりに合わせて、組子の皆が笑顔でそれを取り囲む。歌っているのは『みんなの歌』だったかしら…。歌詞は切ないけれど、見送る皆も、見送られるチャー様も笑顔で、それが却って切ないけれど、銀橋の階段に足をかけて、走ってやって来る組子たちを見守るチャー様は、本当に良い顔をなさっていました。最初で最後の舞台を悲しむよりも、今のステージで皆といられることが嬉しくてたまらないんだとでも云うようなすっきりした笑顔。
そしてステージに戻ったチャー様をリフトし、回りを囲んで晴れやかな門出を祝うように笑顔で歌って。もう、この辺りからは、チャー様ファンは涙なしでは観れないのではないでしょうか。かく云うワタクシも、思わずじーんとしてしまいました。
コートを羽織り、1人舞台から階段を上って去っていくチャー様が歌っていたのは『逢いたくなった時に君はここにいない』かな。大階段にすうっと1本、ライトの道が出来、そこをゆっくり昇っていく姿が何とも切なくて、途中で立ち止まって舞台を見下ろすチャー様の歌を引き継ぎ、みどりちゃんが花を1輪手にして、歌い継いで銀橋を。その姿に満足そうに微笑んで、チャー様は階段の彼方へと姿を消します。
そして『ワイン(祝典)』は再びヤンさんの振付。『乾杯』をボレロアレンジした曲と共に、大階段の上から黒燕尾で現れたチャー様。僅か幅24cmの階段の上でも全く危なげなく、びしっと線の美しい男役の立ち姿、身体使いを見せ、そこにオサあさ達、男役下級生が加わり、ダンスの花組の名に相応しい、一子乱れぬ男役黒燕尾の群舞。
さすがに元男役だったヤンさんの振付は、宝塚ならではの男役たちの美しさを際立たせる振りで、かつ、チャー様への敬意、惜別、憧憬などが伝わってくる秀逸な群舞でした。特にぱきらさんも書かれていた、銀橋一杯に並んだ男役と、舞台の端から胸に手を当てて並ぶ男役の前をチャー様が踊って行くシーンは、は、美しくも壮観な眺めでありました。
その銀橋で、チャー様とオサ2人が残ると、オサの伸びのある声でチャー様のソロダンス。やがてそのオサも、一礼を残して立ち去ってしまうと、音楽もなく、歌もなく、ただ1人でのダンス。鬼気迫る、万感の想いがこもったダンスで『ワイン(祝典)』は幕を下ろします。
まだその余韻が冷めないうちに、フィナーレ『シャンパンカクテル』は、それをイメージした白とピンクのお衣装。手にはカクテルグラスのシャンシャンを持ち、皆お辞儀をすると、そのカクテルを飲んで見せるのが可愛らしい(笑)。
銀橋に並んで、みどりちゃんやオサと乾杯の素振りを見せた後、チャー様は大きな羽根の後ろが見える程、客席へ深くお辞儀をしていたのが、とても印象的でした。
前例のない、1作きりのトップのただ1度の本拠地宝塚での公演で、チャー様の胸にも思うところは色々あるのでしょうが、ショウの後半は、悔いのないよう、今を咲き誇れるよう、と前を向いているチャー様の気持ちが、悲しいのではなく弾けるように伝わってきて、この謎の多いトップ就任の中で、それだけが救いでした。
大劇場も間も無く千秋楽を迎え、いよいよ最後を飾る東京公演。皆様、どうぞ1度は足を運んでみて下さいませ。
(ところで、阪急ホテルでやってたチャーリーカクテル、東京でもどこかでやってくれませんかねぇ)