濃密な闇が辺りを支配し、宙空に絡め捉えた獲物を包む。
しゅるしゅると鱗を摺り合せる黒き蛇達がその優美な麗身に纏わりつき、白い絹肌の上で血のように紅い眼を光らせた。
「・・・良い眺めだ。」
男が低く呟いた。
未だ衰えぬ強大な力を持つ闇の司祭は、感嘆の溜息と執着に濁った視線を投げかける。
それは念願の獲物を手にした者の歪んだ喜悦。
だが、囚われた男の方は抵抗一つなく、感情の欠落した瞳を静かに伏せるのみであった。
「・・・無駄なこと。」
澄んだ風を運ぶ美声を、闇の中に囁き落として。
「もはや大勢は決した。・・・光の巫女と魔道書は我等の手に。」
「成程。あの時、貴様の魂を取り逃したのが我が過ちという訳か。・・・よもや、その抜け殻のように力無き身に命を繋ぎ止めて、この世界を流浪するとは思わなんだ。・・・らしからぬ執着よ、風王。」
「・・・・・・」
「確かに敗北は認めよう。・・・だが貴様も遂に我が手中に落ちた。」
口端を歪めて、男は勝者の如く余裕の表情で宣告する。
「力持たぬ肉体の檻に魂を封じられたまま、儂に飼われ続けるが良い。」
鱗を逆立てて身を這う不快な生物の動きに僅かに眉を寄せながらも、諦観の相で風の王は絡みつく視線を受け流した。
死も。苦痛も。そして虜囚の屈辱も。心を失った神の空虚な感情の琴線を動かすものではなかった。
・・・役目は終えた。
漠として広がるのは灰色の虚脱感。使命を果たし動きを止めた、人形のような。
何か、とても大切な何かを、護ろうとしていた。
だが、それが何であったのか。
・・・今では、もう思い出せない。
・・・蛇と熟女(違)のエロティシズム。
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