2006.6.3 
WBC組の不調とプロ球界



                                                                               島 健二


プロ野球が開幕して約一ヵ月半が立ち、好調に立ち上がったチームもあれば、不振にあえぐチームもある

ように見受けます。

一昨年から昨年にかけてプロ野球界には再編騒ぎが持ち上がるかと思わせるように風が吹き荒れました。


オーナー筋に異変が相次ぎ、オリックスによる近鉄チームの吸収合併に始まった球界騒動は1リーグ制を

指向するオーナー側と2リーグ制存続を主張する選手会側との対立から、近鉄買収を申し出たホリエモン

旋風もからんで、結局はホリエモン氏と争った三木谷氏の楽天が新チームとして参入することになり、

更にはダイエーが球団経営を放棄して、孫氏の率いるソフトバンクに譲渡され、2リーグ制は当面維持さ

れましたが、その後も三木谷氏のTBSテレビに対してのM&Aによる経営統合申し入れ等があり、それ

が実現した場合には、既に楽天球団を持つ三木谷氏としては、横浜球団を手放す意向を表明したことから、

usen社が名乗り出たりした経緯もありましたが、結局は、楽天とTBS社の経営統合はウヤムヤにな

りました。広島球団にもオーナー交代が噂されたりしました。



こうした騒ぎの中で、昨年度はロッテが素晴らしい強さを見せて日本一となり、更にアジア地区でも制覇し、

その強さが本年春に行なわれた「野球の国、地域別対抗戦(WBC)」でもロッテ勢は大活躍をして遂に

日本を奇跡的な優勝へと導いたのです。

このような大変化を経験したプロ野球界は、今後どのように変貌して行くのでしょうか?



例年なら開幕前の季節に、WBC出場をするために、ピークをこの時期に合わせて調整した出場選手達は、

見事に優勝を勝ち得て大きな名誉を手にしましたが、その代償としてなのか、国内シーズンが開幕して、

若干異変が生じたようです。WBCで活躍した選手達は多かれ少なかれ不調に陥っているように見えます。

この一両年のゴタゴタやら名誉やら、また、今後に対する不安感等が入り混じって作用しているのでしょ

うが気の毒です。


ソフトバンクの川崎選手はWBC決勝戦での捕手のブロックを掻い潜っての「神の手」と呼ばれた右手に

よるホームベースへの見事なタッチで手を傷めて約1カ月休場をやむなくされました。

幸いに、現在は元気に復帰して活躍していますが…。

同じくソフトバンクの和田投手も好不調の波が激しいようです。


シーズン開幕当初、不調のどん底にあえいでいたのはロッテ組です。

昨秋の好調ぶりからWBCに6名も選ばれたロッテ投手陣は、清水、渡辺俊の両エースを始め、小林(宏)、

薮田、藤田等がシーズンに入ってからはいずれも冴えませんでした。

里崎捕手も不調ですし、野手ではあれほど見事な活躍を見せた西岡選手、今江選手等の調子が一向に上がら

ず、その影響からかチームも下位を低迷していましたが、五月も後半になってから、ちょっとしたきっかけ

から調子が上がり、アレヨアレヨと云う間に9連勝をして、首位に躍り出ました。

阪神に連勝を止められて連敗、オヤと思わせましたが、その後巨人に連勝して、いよいよ不調から脱して、

本調子の強さに戻ったようです。


こうした不調の原因は、ピークを春先に持って来た調整のせいでしょうか? 

それもあるでしょうが、

一番の原因はプロ野球界が置かれた極めて落ち着かない環境が影響しているのではないかと思います。


選手たちは刹那的になって、あらゆる場面で目立ちたがっているように見えます。

それはそれでいいのですが、人間はいつも張り詰めた状態ではいられません。

あせりはミスをも生みますし、それをキッカケに不調に陥ることもあるでしょう。

プロ球界を何とか落ち着いた環境に立て直して、

選手たちに足が地に着いた活躍をしてもらいたいと思うのは私だけでしょうか?

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